見出し画像

坂元達裕との共通点は経歴のみならず。モンテディオ山形内定・横山塁が持つ魅力

※本記事に利用させていただいてる写真はクラブからご提供いただきました。モンテディオ山形様、ありがとうございます。

※本文の無断転載、スクショによるSNS等への投稿はいかなる理由であろうと禁じます。
※単発での購入も可能ですが、月刊で「国内サッカーの現場より。竹中玲央奈のここだけの話」を定期購読していただくほうがお得です。
※本記事は無料公開です。


山形サポーターにとって、東洋大から入団する選手への期待は他と比べ物にならない。

理由は言うまでもない。

1年しかいなかったがチームに多大なる貢献をし、このクラブでデビューした選手として初のA代表まで上り詰めたレフティーを、全てのサポーターが誇りに思っている。

同時に、同じ道をなぞる選手が現れることを心待ちにしているのだが、この度内定が発表された横山塁はその思いに足る選手である。


ポテンシャルの塊

選手について語る際に「夢がある」というフレーズはしばしば使われる。

高身長で足元の技術があったり、圧倒的なスピードがあったり……といわゆる身体能力の高さがあるが、守備の強度や連続性など“なにか欠けている”選手を形容する際に用いられる印象がある。“粗さがある”ことをポジティブに言うときの表現というか。

横山もその類だが、欠点への懸念よりも才能への期待が上回る選手だと個人的には感じている。

初めて彼を見たのは1年生のときの関東選抜の選考会だったのだが、そのときのインパクトは忘れられない。

180cmの長身ながら臆することなく縦へ積極的に仕掛けてゴールへ迫る姿が非常に印象的だった。ちなみにそのときに目を引いた選手として町田内定の法政大・佐藤大樹や鳥栖内定の国士舘大・梶谷政仁も挙げられる。

強い印象を持った以後は彼をチェックする機会は訪れなかったのだが、凄みを再認識したのが去年である。龍ケ崎における土日での1部&2部の一斉開催により2部を視察する機会が増えた。

そこで3年生となった横山を見たのだが、期待通りの成長を果たしていた。右SHのレギュラーを掴み、縦への突破力は鋭さと力強さを増している。そして、スピードに乗って深い位置まで行ってからのロスの精度も高さにも目を奪われた。加えてもうひとつ「これは面白い」と思ったのが、逆足のキックの質である。

縦に来ると予測して守る相手の裏をとって切り返し、左足でクロスやシュートも打てる。180cmの長身でストライドが長く、切り返しにも深さがあるので決まったときは完全にDFが置いていかれる画が見られる。この相手が完全に置き去りになる切り返しは、タイプが違えど先輩である坂元達裕を彷彿させる。

スピードがあるが、縦一辺倒ではないのだ。直線の速さがあるドリブラーにこの武器があるのは強い。

「サイドの仕掛け、左右どっちも蹴れるのも武器だと思うので。サイドは自分の領域というか、絶対に誰にも負けてはいけないと思っている」

本人もこの点には強く自信を持っているが、今年の大学サッカーを見てもドリブル突破だけに留まらない武器を持つ選手はぱっと思い浮かばない。希少な存在だ。


FC東京で育った12年間

東京出身の横山はFC東京のスクールからU-15深川、U-18まで小中高の12年間を青赤のユニフォームを来て育った。もともとサイズも大きくなく、足も速くなったようで「スピードで振り切られるタイプだった」とFC東京のスカウトを務める小池知己氏は振り返る。彼は指導者時代に横山を見ており、成長過程を知る人物でもある。身体も大きくなりスピードも備わって、今のようなサイドアタッカーの地位を確立したのは高校になってからとのことだ。

18歳までの横山はいわゆる“やんちゃさ”が目立つ選手だったようで、ピッチ内外の指導に手を焼いたとも小池氏は振り返る。


こういうのも何だが、プレースタイルと顔つきからなんとなく想像できて納得した自分もいた。

個人的には優しくおとなしいだけの選手では上に上り詰めることが出来ないとも思っているので、そんな荒い時代があっても良い。

横山自身、長く在籍したFC東京への愛着は大きいのは言うまでもない。

「サッカーだけではなく心も体も大きくしてもらったのでそこが一番戻りたい場所ではある」

今年の春先にはこう語っていた。もちろんFC東京も彼のことを見てはいたが、上述したところでいうと“足りない部分”が目についたようでオファーまでには至らなかった。そこで手を上げたのが山形だった。


練習参加でインパクトを残す


4年生の進路決定が年々早まる中、横山に関しては上述の通り魅力ある選手と自分の目には映っていったので「なぜまだ決まってないのだろう」と不思議に思っていた。

全てのスカウトに話を聞いたわけではないが、攻撃に関しては特筆すべきものがあった一方、守備の面で懸念があったのだと思う。ただ、本人もこの点についてはしっかりと自覚し試合で示そうとしていた。

「チームの代表として出ている以上、点をとってもアシストをしようが最後のところはディフェンスをしなければいけない」

リーグ戦のとある試合で、終盤に自陣に戻って相手にタックルをするもファールとなってしまう場面があった。苦しい時間帯でしっかり戻る姿に自身の弱みと向き合い克服しようとする気概を感じたものだ。上のコメントはその試合後に彼が発していたものだ。

そして、そこは内定先となった山形の練習参加でも示すことができた。練習参加をした中、持ち前の攻撃力はしっかりと示し1,2日目でクラモフスキー監督の目に止まり、高評価を得た。守備のところも意識的にこなそうとする姿勢を示し、合格ラインを通過し正式オファーをもらう運びになる。

そして、そのオファーに対し横山はすぐさま返事をし、山形の一員となってプロ生活の一歩を踏み出すことに決めた。

「あのサイズがあってドリブルで前に行けて、これで守備もできるようになったらと……考えると、相当夢がある」

関係者はこう口にしていたが、同意見である。これだけスケール感があり、成長した未来を創造してワクワクする選手はそうそういない。過度な評価とも思われるかもしれないが、個人的にはそれだけ期待をかけたいし、魅力にあふれる選手なのだ。

そして、冒頭に書いたように山形サポーターにとっては「東洋大出身」というだけで大きな期待感が生じる。

大きな期待とプレッシャーを背に、横山塁は山形の地から一歩を踏み出す。

画像1

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 110

読んでいただきありがとうございます。頂いたサポート資金は、より面白いコンテンツを届けるための遠征費や制作費に充てさせていただきます!