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パッシブソーラー

 阿部さんたちが、屋根の上に屋根をかけていた。パッシブソーラーというう、太陽のほぼ無尽蔵なエネルギーを有効に活用するための建物の設計手法で、特別な装置を使わず太陽光を建物内に取り込み、主に暖房の熱源として利用する方法のことだと阿部さんは説明してくれたが、ちんぷんかんぷん。
良く分からなかったが、電気を使わず家の空調をするシステムらしい。改めて自分が世間知らずなことを思い知らされる。いいや阿部さんたちが凄すぎるだけなんだ、きっと。だって、高校や大学で教えて貰ったことないし・・
 阿部さん家には普通の家にはない見たことのない装置が、次々と増えていく。薪ストーブは調理だけでなく電気も作れるんだそう。給湯は薪ボイラー。庭の散水には雨水タンク!もう、説明されても覚えきれない。一体、どれほどの知識と技術を持っているんだろう、ふ~"(-""-)"

 廃屋がどんどん生まれ変わり、どこかのカフェのようにおしゃれな建物になっている。そのうえ、パッと見た目では分からないキャットウォークやタワーなど猫が喜びそうな仕掛けも施している。今は家猫が推奨され、肩身の狭い思いをしている猫たちを思いっきり遊ばせられる、ドッグランならぬキャットランにする予定らしい。レオや三毛猫が聞いたら喜ぶだろうな。今週一杯で、あらかたの工事は終わり来週には、猫も連れてくると話していた。今後、庭や外回りはワークショップとして色々な人に参加してやってもらう計画を立てているのだそう。わざわざお金を出して、作業に来てくれるのか?と思っていたら、今の時代だからこそやってみたい人は沢山いるのだと阿部さんは言う。ネットだけでは感じることが出来ない人と人との触れ合い、人の顔色を窺い、息を潜め孤独の海の中で溺れかけ藻掻いている人。そんな人には、大地や太陽の温もり、木々が持つエネルギーが力を与えてくれると思う。僕にもそんな時があったからね、阿部さんの言葉にハッとする。

 私もそうだった。親に言われるまま就職してみたものの馴染めず、行き詰まっていた時、この集落にきて楽に呼吸ができたこと。人見知りで他人と交わるのが苦手だった私が、セイばあちゃんに出会い、自分から進んで阿部さん家の手伝いを申しでることが出来るまでになった。私は気づかなかったけど、私のような人が世の中にはたくさんいるのかも知れない。改めて、集落を見渡してみる。4匹の猫たちは今日も桜の木の下で、こちらを眺めている。頭上の桜がちらほらと咲きかけている。穏やかな日差しの中、桃源郷を思わせるように菜の花が咲き誇っていた。

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