【詩】香り【過去作再稿】
玄関を開けるといつもコーヒーの香りがする
僕の飲まないブラックの方
ただいまなんか言わなくても、君がいることがわかるんだ
両手でマグカップを包み込む彼女は、お帰りと笑う。
なれた手つきでミルクを入れて、
僕のためにいれたカフェオレが出来上がる
コーヒーとミルクの混ざり合った香りが
君と過ごした空間にしみついて、
いやでも、消えない
ねぇ、君は次いつ僕にカフェオレを入れてくれるの?
毎日ブラックコーヒーを用意して待っているよ
覚めてしまうから、最後はいつも僕が飲み干すんだ
おかげで飲めるようになってしまった。
君と過ごした空間に、もうミルクは存在しない。
ねぇ、そんな簡単にさよならなんて言わないで?
昨日のことのように、寂しさがのこっているんだよ。
さめてしまう前に、ただいまの声が聴きたいんだ。
ミルクがきえたこの空間で
僕はいつまでも君を待つ
二人分のマグカップを置いて、
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