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初期衝動

予定の時間が少し過ぎてBGMの音量が大きくなり、フロアが暗くなってSEが流れる。ライブは、その瞬間のわくわくする気持ちが大好きだ。

今日は何が聞けるのか、どんな楽しさが待っているのか。それを想像してどきどきする。痛かったり苦しかったり、ときには記憶が飛んだり。始まると一瞬で終わってしまう。どこか儚い感じもまた、悪くない。

そろそろ遠征本数のトータルも100を超えただろう。100を超えてなお、一度も「行かなければよかった」と後悔したことはない。何となく不完全燃焼で自分が情けなくなって泣いて帰った日もあるけれど、それはライブに行ったことへの後悔とは違う。

『初期衝動』という言葉がある。私が行くライブでは、それをダイブやモッシュであらわす人も多い。危険ではあるものの、あの気持ちも少しわかる。私自身はほとんどやらないけれど、ぶん投げられたり巻き込まれたりで経験はある。あれも楽しい。しかし、私にとっては「書くこと」が初期衝動のあらわれなのだろうなと思っているところ。

以前はライブが終わると、その勢いでブログを書いてから眠ったものだった。あちこち身体が痛くても、それすら楽しみながら。最近それができなくなったのは、体力的な問題だ。普段動かず眠れない反動で、ライブの日はよく眠るようになった。しかし、今日久々にライブ日記を書いてみたら、とても楽しい。相変わらずライブ日記は「楽しい」「うれしい」「幸せ」ばかり。最近たまにセトリはメモ代わりに書いてるかな。でもそのくらいで、毎回ただ「幸せ」な気持ちをぎゅうぎゅうに詰め込んでいるだけ。

不思議と、日記を書いていない日の記憶は曖昧になってしまうことが多い。それほど事細かに書かないけれど、思い出すきっかけとして役立っているのだろう。のんびり再開したいものだ。

地元のライブには2本ほど行ったが、ここ半年遠征は1本のみだった。そういう時期を経て現場に戻ってみて、ああやっぱり楽しいなと痛感している。ライブに行かなかった半年間、いろんなことを模索していた。課題はまだ多いけれど、少しずつ解決していく。

書いていてふと思い出したのだけれど、確かここ2~3年で「遠征」についての話題がSNSで盛り上がっていた。どこのバンドか忘れてしまったが、「関東勢ずるい、地方にも来てほしい」とファンが投稿して、それに対して「嫌なら関東に住めばいい、東京は税金や物価や家賃が高いんだから」といったような話。メンバーが言ってたんだったかな。忘れてしまった。

その書いた子の意見もわかるけど、バンドの時間やお金も有限で、全国をずっと回り続けられるわけではないし、難しいだろうな。全員の「うちの地元に来て」には応えられない。

好きが高じて自分も楽器を始めてから数年が経つ。初期よりは良いかもしれないが、年齢もあって思うように上達しない。そんななか、縁があってふわふわとバンドを始めた。ライブすらしてない段階で「大変だ」と思っている。そもそもスタジオに入るのすら大変だ。働きながらバンドやってスタジオ入ってツアーまわってライブ後に打ち上げして朝まで飲んでる人たちのすごさを思い知らされている。たまに来てもらえるだけですごいことだ。

もちろん、都会にいると恩恵は多い。シークレットゲスト、インストアライブ。いろいろ、地方にはないからうらやましくなる。私もまた、どこに行くにも高くて遠い、ちょっと不便な地域に住んでいる。そんな私も、よく「地元に来て」と言う。いつもしつこくごめんね!多いときは毎月言ってるもんね!本心だよ!たくさん来てくれてると思ってるし、来てくれた年をすごくありがたいと思ってるよ!

ただ、関東がずるいから、遠征はお金がかかるから、という理由ばかりで言ってるわけではない。お金や時間以上に、いろんな理由で「地元で見たい」との気持ちがある。私は自分で行くから全然いいのだ。しかし、いろんな理由で、言わずにはいられない。ほどほどにしたいとは思ってるけど、今週末も言っちゃうだろうし、来てくれても次回には「また来てね」と言うだろう。人間とは欲深い。それもまた愛情表現だと思ってほしいところ。

久々の遠征が楽しかったので気が向くままだらだらと書いている。普段は、ライブが終わると次までは少しだけ寂しい気持ちだ。早く次が見たいなーと思う。しかし今回は2週間連続なので、寂しがるよりも仕事を終わらせなくてはならない。それなのに深夜だらだらと文章を書いている。

これぞ初期衝動である。


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