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【随想】DIYギター調整の憂鬱

自分が演奏する楽器が最良の状態であって欲しいのは初心者でもプロでも同じ。その為に楽器屋さんは様々な調整や修理、改造を引き受けてくれますし、また楽器調整や修理、改造を専門に行われているお店も沢山あります。

一方、少し調べれば楽器の調整・修理方法に関する情報は文献やネットに溢れてる。なのでプロに依頼せず自分でやってみようと思う人は少なからず居ると思います。機械いじりが好きな人ならやってみようと思うのは自然な流れ、ぼくもそうだったので良くわかる。

例えばこんなきっかけじゃないかと思います。

  • 簡単そうだし自分でも出来そ

  • 費用高いから節約したい

  • すぐ状態変わるから店に出すのが煩雑

  • 楽器のことをもっと知りたい

掃除もバラしたくなっちゃうよね

また依頼したり、自分でする理由と言えば

  • もっと弾きやすくしたい

  • もっと音をよくしたい

  • 傷んできたので調子を取り戻したい

  • パーツ替えてグレードアップしたい

一般的にはこんな感じかと思います。ジャンクで手に入れたギターを自分の手でハイエンド機みたいに凄いギターに仕立て直す!なんて浪漫溢れてて熱いッスよね。

でも、ね

挑もうとしてるなら、まず自問自答して欲しいんです。

問1)
自分のやった事で楽器が不可逆なダメージを受けてもいい

問2)
自分自身の知識とスキルが十分に信頼出来、また十分な工具と測定器を有している

問3)
行おうとしている作業の「目指す姿」が見えている

問4)
信頼出来、相談出来るリペアマンがいる

問5)
本やネット上の情報の行間が読める

どうでしょう、全数「はい」だった人は是非とも挑んで欲しいしきっと上手く行きます。

だけど沢山のジャンクギターを見てきた中では

  • ネジ頭舐めちゃってる

  • ネジ折れちゃってる

  • ネジがバカになってる

  • 緩めようとしてドライバーでボディに傷

ネジ折っても直せばいいけどね

なんてのは序の口で

  • 弦緩めずに弦高やオクターブ調整してる

  • ポケットに厚いシム挟んで角度滅茶苦茶

  • 何でも爪楊枝で埋めちゃう

  • 指板にあれやこれや塗りたくってる

弦張ったままオクターブ調整した跡

みたいに下手に触って楽器傷めてる例や

  • 適当なフレットすり合わせでトドメ刺す

  • 季節毎に反り直してる内にS字反り

  • トラスロッド回し過ぎて指板剥がれ

  • キャビティを適当に彫刻刀で彫る

  • 雑なハンダ付けでハンダを導通に使う
    (空間を埋めるハンダ付け)

  • 適当に塗装されたあまりに○○なボディ

なんて酷い事になって手放された楽器、ジャンクコーナーで目にした事ありませんか!?

全部作業の不可逆性からくるリスクです。

問1ではいと答えてた人ならそれでも色んな事学べたと思うしイイと思う。ぼくもそうだったしね。だけどそうじゃない人にとっては大事な愛機を失う結果になってる訳です。

ね、ゾッとするでしょ。

多くの問題は問2や問3を充足していない事から起きちゃうんだけど、自分を客観視出来てないからやっちゃうんですよね。勿論ぼくもそうでした。

でもぼくがどうにかなったのは信頼出来、相談出来るリペアマンと知り合っていたからなんです。そういう人は自分でやってみたい!と相談したら相手の技量や知識を見た上で「やってみる?」か「やめといた方がいいよ」と言ってくれる筈。そしてコレがとても大事な事なんですが、

「本やネット上の情報の行間の情報」を教えてくれるんです。もちろん飯の種となる情報だから一見さんには教えてくれないとは思いますが、楽器が酷いことになるのを喜んで見てる人なんていません。いつもお世話になってる楽器屋さんだったら気をつけなきゃイケナイ事はきっと教えてくれるはず。

あとね、自分で調整してると思い込みでコレが一番って思っちゃう。触ると「変化」するから「変化」したことで満足しちゃうんだけど、本当に上手くいってるか見てもらうとプロの目で見て冷静なコメントをしてくれます。そのフィードバックで気付く事も一杯あるんですよね。

色々と気後れしちゃう様な事を書いてますけど、ぼくはDIY派なのでやってみる事には賛成です。

ただし全てのリスクを背負う覚悟じゃなきゃ、全部自分ひとりでやろうとするとなかなかにハイリスク。そんな状況を楽しめる人じゃなきゃ、素直にお店にやって貰うのがイイと思います。

最後に。
プロの技術も知識も経験もその人の飯のタネ。そして作業費はその対価です。
やってみるとわかるのですが、その金額は意外と高くなかったりします。自力でやるなら掛かる時間や道具代もよく考えてから挑むことをおすすめします。

そしてぼく、メイン機のベースは信頼出来る人にお任せしています。つまりはそういう事かと。

※对となる記事がコチラ↓↓↓

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