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博物館へ行こう#9「茅ヶ崎市博物館」

レンタル学芸員のはくらくです。夏が終わって秋が来るのかと思いきや、早足に、というより縮地か瞬間移動かという勢いで冬が迫ってきているのを感じます。今回は神奈川県茅ヶ崎市にある博物館に行ってきました。


今回来訪した館

名称:茅ヶ崎市博物館
区別:公立・総合
住所:〒253-0006 神奈川県茅ヶ崎市堤3786-1
アクセス:JR相模線 香川駅より徒歩約25分
ウェブサイト:https://chigamu.jp/

茅ヶ崎市博物館は、昨年(令和4年)7月に開館した新しい博物館です。それ以前には、茅ヶ崎市文化資料館という博物館がありました。文化資料館は「中海岸」という海岸沿いの地域にありましたが、博物館は「堤」という丘陵部に位置しています。わたしは資料館時代にも何度か来館したことがあり、市民運動により設置された博物館で、年季の入った建物でした。「これぞ湘南」という海に近い立地であり、交通の便とロケーションにはすぐれた場所でした。近くには海沿いですと、当然フィルタを用意するとはいえ、潮風の影響を受けますから、保存環境や建物の耐用年数を考えれば、こちらの方が環境は良いと思います。また、近年は大雨による災害が多く発生しています。令和元年(2019)の川崎市民ミュージアムの被災が有名でしょうが、それ以外にも台風等による水損を経験している館は、わたしが知っている限りでも複数あります。

茅ヶ崎市の場合は、文脈でいえば、台風災害よりも東日本大震災の方だとは思います。本当に海に近い場所でしたから、おそらく津波がくればひとたまりもないでしょう。茅ヶ崎市の移転計画を丹念に追いかけたわけではありませんが、そこまで外れてはいないと思います。また、お役所的な観点からいえば、土地を取得するための価格も廉価なのではないでしょうか。

図書館分室

さて、施設のお話に。建屋は平屋で収蔵スペースも1階部分にあるようです。入り口入ってすぐのところには、本が並んでいます。利用者のための閲覧室だと思いましたが、図書館の分室だそうです。つまり、この博物館は博物館と図書館分室との複合施設ということになります。茅ヶ崎市は、南部の方が交通の便がよく、(おそらく)住民も多いようで、公共施設や文化施設も南部に集中している傾向にあります。以前資料館があった場所の近くには、茅ヶ崎市美術館や開高健記念館があります。移転計画の際には、そのあたりの事情も踏まえたものと思われます。

基本展示室

展示室は「基本展示室」と「企画展示室」とに別れていますが、別個の部屋ではなく隣り合ってつながっている構造です。移動式の壁を採用しているため、展示の内容によって動かすことができる仕組みになっています。正直、広い企画展示室だと展示をするのが大変なこともあるので、わたしはこの館のような可変式の展示室が好きです(ちなみに勤務館の企画展示室はやたらと広い方形の空間です……)。

館の方におうかがいしたところ、「基本展示室」も展示替えを前提にしているそうです。ウェブサイトにも定期的に展示替えをしていると書かれていました。よく見るとパネル類も換装できるような仕組みになっています。

キャプションは換装可能

茅ヶ崎といえば海浜部の自然や文化のイメージがありますが、実際には相模湾に接するのは南部地域であり、北部地域はむしろ丘陵地帯です。地形地質の上では、相模野台地の一部とされる高座台地と呼ばれています。茅ヶ崎を地理的な特徴から、「海」「砂丘」「川」「低地」「丘陵」に分けて展示を構成しています。展示室自体はコンパクトですが、自然史も含めた総合博物館です。

個人的に自然史資料もある方が楽しいです

それぞれのテーマの展示替えを四季の流れにあわせて行っているようです。四半期ごとに展示替えがあると、再訪する楽しみも増えますよね。

見かけだけでなく常設展示の方法論として非常に新しい博物館だな、と思いました。駅からは若干距離がありますが、バスも出ているようですので、みなさんもぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。