52ヘルツのクジラたち 感想

読んだきっかけは「公務員、中田忍の悪徳」 の最終巻にこの作品が登場したからかな。モチーフとしている52ヘルツで鳴くクジラが実在するかはかなり怪しいと思うが、作品に一貫するテーマとして大変に分かりやすく良い概念だと思った。個人的な感想としては予想外なストーリーや緩急で読者を引き込む作品ではなく、登場人物の解像度の高さや舞台設定、背景などの土台がしっかりしているという誠実さで読ませる作品だと思った。主人公側の登場人物が善人すぎる所はあるが、置かれた状況を考えればそれもさもありなんといった所だろう。落ち込んでいる時にまた何度でも読みたいなと思わせる、六花亭の洋菓子みたいな本でした(つまり苦みもあるけど、全体的に甘い雰囲気で包まれており読後感がさっぱりしているという意味)

そんなに長い作品でもないので、寂しいとか心のエネルギーが枯渇した時に読むと良いんじゃないでしょうか。そうじゃなくても読んで♡

※以降、ネタバレあり

さて、本題に入ろうか。この作品、正直話自体は目新しくない。
訳アリで大分の田舎に逃げてきた若い女性と虐待されている美少年が出会う。その少年の境遇に近しいものを感じ、保護することを決めた女性と少年の交流を描く。徐々に明らかになる女性の秘められた悲しい過去。二人は現実に発生する様々な困難に対して、周囲の助けを借りつつ一歩ずつ進んでいく。そして最後には保護対象だと思っていた少年の成長に涙する…。

こんなところだろう、かなり要約できていると思う。というかこんなエロゲをやったことがある。

ただ、むしろこの展開でちゃんと面白いのだからこの作品はすごいのである。あとまぁ目新しいポイントという程ではないが、主人公が女性側というのは個人的に注目に値する。なんというか主人公が少年だった場合は、ヒロインが「突然田舎に引っ越してきた、訳アリっぽいお姉さん」になるわけで、そりゃもう自信たっぷりに"少年"呼びしておいて、実は深夜に啜り泣いてて欲しい。更にそれを少年に見られて(この人も一人の社会不適合お姉さんなんだな)って気付かれて欲しい。
…その点この作品では当然主人公(女性)側の内情が多く描写されるので、ファンタジー感があまりないのだ。残念でもあり読みやすくもある。

う〜ん、後はキナコ(主人公・女性)の過去編に出てくるアンさんと主税くんの話はしたいかな。
あ、ちなみに名古屋市には主税町と書いて(ちからまち)と読む地名があるのだ!!
ヤバい集中力切れてきた!

俺はこの作品の中では圧倒的にアンさんタイプの人間だと思う。大体考えてること分かったし、最初からそんな綺麗な人間じゃないだろと思っていた。ただキナコに男性として見られないって言われてるとことか美晴にキショい(意訳)と言われてる所はさすがに可哀想で泣いちゃった。結果的に聖人扱いで良かったけど、普通にストーカー気質はあると思う! 遺書は綺麗事しか書いてなかったけど、死んだのも(爪痕残してぇ〜)が多分にあると思う。知らんけど!

主税くんはテストステロンの権現にしてはかなりクレバーで確かにめちゃモテそう! 社会人Level.100って感じ。主税くんサイドの普通の人から見たら主人公は悪女っぽいよな。まぁこの話あたりのキナコは流されまくりで言い訳しまくりで大嫌いな"女性"像を的確に描写しててすごかった。めっちゃ嫌な感じ。主税くんもさっさと損切りして次いこう次! って言いたくなる。

っていうか過去編通して思ったけど、キナコさん顔がいいのね! めちゃモテやん! 影があって儚げだけど、口調と態度は意外とさっぱりしてる美人…う〜む、ファムファタ

まぁ境遇との釣り合いを取ろうとするとこうなるよね、義父の介護のとことか辛すぎるし

あとは田舎の排他的な感じもリアルで嫌だった。
最終的な助っ人ポジの美晴ちゃんが有能すぎるくらいで丁度いいバランスだったな。

こんなもんすかね!!
以上、終わり


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