アギラールさんから見えたもの (盛大なネタバレ&想像に近い考察)

Twitterでスペースを開く勇気もなく。

そして皆々様、もう既にアギラールさんについての思いのたけを語っていることと存じますが。

やっぱり、書き残しておこうとおきまして。

場面毎に感じたことを書きながら、進めていきたいと思います。

長文、そして稚拙な文章ではございますが、お時間頂戴いたします…

ところで、当方、未だNOW ON STAGEを確認しておりません…その点ご了承ください。


1幕:開会式リハーサル~反乱軍蜂起の知らせ

エレンとマタドール達の写真を撮るジョルジュ。そこに、忌々しげな表情を浮かべながら現れたアギラールさん。

その姿は、官僚然としている(実際PSUCの幹部である)。

しかし、何故情報を検閲するか、訳を話すその眼には、祖国愛、ファシズムからスペインを守りたい想いが揺らめいている。その眼の先に、あの舞台上にはいない、ファシスト達の姿が映っていた。

ジョルジュの写真を「退廃的だ。社会に害毒を流す。」と執拗に攻撃するアギラールさん。何故そこまで言わないといけないのか、しかし、PSUCの情報部委員長として、情報戦の重要性を理解しているアギラールさんだからこそ、国家に不利益をもたらす情報は全て排除したい筈。そう考えると、そこまで攻撃的な言葉をジョルジュに使ってでも、情報部委員長として、オリンピアーダの宣伝にふさわしくない写真は排除せねばならない。

あの場で権力を振りかざすアギラールさんは、悪人なんかではなく、国家の戦略的に正しい行いをしている、至って「普通」の権力者なのではないか。

しかし、ジョルジュはアギラールさんに屈しようとしない。アギラールさんとしても、ジョルジュは言いくるめにくい相手だ。PSUCとしての彼は、自分の与えられた役割を全うするため、公権力を行使しジョルジュからカメラを没収する。

その後、コマロフに連れられ、キャサリンとピーターが現れる。そのキャサリンを見つめる、アギラールさんの眼差し。キャサリンの特別な魅力に惹かれるような、そんな想いを少しにじませるアギラールさん。

キャサリンに事の事情を話したところ、何故かキャサリンはジョルジュをとても擁護している。結果的に、キャサリンやコマロフの働き掛けによって、ジョルジュにカメラは返されるが、PSUC幹部の役職の全うを邪魔するジョルジュがキャサリンに擁護されたことは、実は痛手であったのではないか。この時点で、PSUCとしての彼ではなく、一人の人間としてのアギラールさんの中に、ジョルジュに対する一種のコンプレックスが生まれてしまったのではないか…

そこに、市長が反乱軍の蜂起を知らせに来る。

国内が2つに分かれて戦う、そして、フランコ将軍の後ろ盾はナチス・ドイツとイタリア。オリンピアーダは中止せざるを得なくなる…

市民達の間に走る動揺。そして、知らせを受けたアギラールさんの目の中にも、市民達と同じ動揺が走る。

動揺を隠しきれないアギラールさんが救いを求めるかのようにコマロフを見ると、コマロフが市民達を指し示して何事かアギラールさんに伝える。

コマロフの言葉を受けて、野心と闘志を帯びた輝きを放つアギラールさんの瞳。果たして彼が、この反乱をチャンスに共産主義を広めようと考えたのか、あるいは彼がファシスト達に対抗する英雄になれると考えたのか、彼自身にしかわからないけれど。

「我らの故郷、バルセロナ守ろう」

「今こそ立ち上がろう。市民よ、武器を手に!」

そう呼びかけるアギラールさん。果たして彼が野心で動いたのか、愛国心から動いたのか、本当のところはアギラールさんしかわからない。しかし、市民達を励まし、煽動するその姿は、偽りの姿ではなく、まさしく英雄だった。オリンピアーダの旗を持つその姿は、まるでドラクロワの「民衆を導く自由の女神」を連想させる。

アギラールさんが市民達を鼓舞する姿をジョルジュは撮影する。それは、アギラールさんが、PSUCの幹部としてではなく、ファシスト達と戦う一人の「英雄」として映っていたのではないだろうか。彼は、祖国を愛する人達の、まさに中心にいた…

1幕:ファシスト達との戦いの場

戦いの場には、今まで武器を持ったことのない市民達や、オリンピアーダに参加するはずだった選手たちが、武器を手に、バリケードを築いていた。

キャサリンはその戦いに自分も参加しようとするがジョルジュに引き留められる。その時、大きな爆発が起き、さらにファシスト達からの銃撃も起き、一人の市民(マリオ)が銃撃される。

この惨状に駆け付けたアギラールさんが目撃したのは、銃撃されたマリオを助けようとするジョルジュ達の姿だった。この惨状に心痛めながら、ジョルジュへの何とも言えない感情も抱きながら、アギラールさんは市民を鼓舞する。

戦いに自ら身を投じながら、アギラールさんは確かに感じたんだろう。見知らぬ人々が、バルセロナをファシスト達の手から守ろうとする、団結したその力を。何事か確信したように去っていくアギラールさん。

1幕:訓練~ONE HEART

市民達はファシスト達から祖国を守るために訓練している。市民だけでなく、センチュリア・オリンピアーダの面々も訓練に参加している。

世界にバルセロナの今を伝えるため、パオロに頼まれラジオでバルセロナの様子を伝えるキャサリン。市民達の様子を映してくれ、とヴィセントに頼まれ写真を撮るジョルジュ。

そこに、警察を引き連れ、アギラールさんとコマロフが乗り込み、放送を中止するよう命じた。

彼らの目的は、ファシスト達への勝利を収めるため、民兵を一つにまとめること。彼らPSUCの後ろ盾はソビエト。

しかしそこに、PSUCを支持しないようPOUMの党員たちが割り込んでくる。

激怒するアギラールさん。

しかし市民達は、PSUCにもPOUMにも、「お前たちの主義主張の争いなんかに巻き込まれたくない!帰れ!!」と叫ぶ。

ヴィセントを取り押さえようとするアギラールさん。そこにジョルジュが、その様子をカメラに収めようとする。撮らせまいとするアギラールさんに、ジョルジュは、彼ら市民達の言う通りだ、と諭し、市民達も自分達は縛られない、と声を揃える。

ジョルジュの写真を共和国政府直々に買い取ろうと持ち掛けるも、政治に利用されたくないと断るジョルジュに、「こいつらの仲間になったのか」と問いかけるアギラールさん。

共和国内部で分裂している場合ではないとジョルジュに諭されるも、アギラールさんは「勝つためには一つの軍隊を作らねばならない!」、と。

彼は確信していた、市民達が一つにまとまり、ファシスト達を退却させた、あの力を。

その力に、ソビエトのバックアップがあれば、確実にスペインを救うことが出来る。彼はそう確信していたのではないだろうか。

勝つために一つの軍隊を作る。民兵を組織する。それは政治戦略的に「正しい」手法である。

しかし市民達は自由を選んだ。その思いはあまりにも強かった。それはきっと、アギラールさんとしては予想だにしていなかったのであろう。警官たちに早く収拾させようと命令している姿は、もう市民達の「英雄」としての面影を失っていた。

根本は同じなのであろう、ファシスト達に対する勝利。祖国をファシズムから守ること。

しかし、道は分かたれた。市民は自由を選び、アギラールさんは民兵の組織化を選んだ。

そして、民兵を組織するために、PSUCを支持するよう呼びかけるアギラールさんの姿は、共産主義を広めようとする共産主義者としての姿をも兼ね備えていた。彼は、自らの主義をも選んでしまった(ように見えた)。

しかし、ジョルジュに諭されていることを、実は痛い程理解しているのは、紛れもないアギラールさん自身なのではないのか。

彼らの言うとおりだ、と諭された時に見せた、アギラールさんの眼差しは、幹部としての彼ではなく、やはり一人の市民としての彼であった。しかし、彼には彼の職務がある。市民としての彼を抑え込もうとした。

しかし、ジョルジュの言葉を受けて、市民達は声をあげた。俺たちは自由なカマラーダなのだ、と。

勝つために民兵の組織化が必要なことは、ジョルジュもわかっていた。しかし、市民の戦う姿の中に、一つの真実を見いだしたジョルジュは、PSUCへの支持を、つまりアギラールさんへの同調を、真っ向から否定した。

PSUCの幹部としてのアギラールさん。情報部委員長を務めるほどの高官であるからには、彼に与えられた職務としてだけではなく、彼自身の信念もあって、彼は行動しているのではないか。それが、ジョルジュや市民に否定された。それはつまり、彼自身を否定されたにも等しい出来事なのではないか。

PSUCの支持を市民達が拒否したがために、市民と警官たちとの一触即発の状態に陥ってしまう。しかし、ジョルジュは一つの心を説いて、市民や警官の心を揺れ動かしていく。

もちろん、彼の訴えを受けて、アギラールさんの目にも動揺が広がる。キャサリンも、ジョルジュと共に、一つの心を訴えている。二人の真っすぐな想いを真正面から受け、PSUCに彼自身を見いだしているアギラールさんと、一人の人間であるアギラールさんとが揺れ動き、目の中から色が褪せ始めた(ように見えた)。

どこまでも打ち負かせないジョルジュへの苦い思いと、PSUC幹部としての信念と、一人の人としての彼自身の思いが錯綜して、ジョルジュを睨みつけるように、アギラールさんは去っていった…

彼の近くには、何故か「理解者」が描かれていない。1幕を見ただけでも、彼の孤独さが胸に刺さる。あの時、彼についていこうとした市民達とは、道が分かれてしまった。市民を煽動していた時にいた、彼を心から支持する人はいない。(警官やPSUC支持者は理解者になるまでの距離を得ていない。)

2幕:サグラダファミリア接収

サン・ジョルディの祭りのさなか、アギラールさん達PSUCは教会を制圧してしまう。更に、POUMのメンバー(フリオ)をスパイだとして、法律を無視して銃殺してしまう。PSUCに従わない者は全て粛清する、と制圧していく。

そこに、ラジオ放送を終えたキャサリンとパオロがやって来る。何が起こったのか、キャサリンに直接伝えようとした時に、ジョルジュが粛清を伝えた。少し嫌な顔をするアギラールさん。

そしてパオロの職を強引に解き、キャサリンにラジオ放送を続けるよう持ち掛ける。反対するジョルジュだったが、アギラールさんはキャサリンに、ジョルジュは彼女に嫉妬しているのだと、説得力大で伝える。激高するジョルジュに、この街の真実を自分なりに伝えたい、と、キャサリン自身が書くラジオ原稿での放送を条件に、キャサリンはラジオを続けることに。

満足げに握手を求めるアギラールさんだったが、キャサリンに握手を拒否されてしまう。

ジョルジュがキャサリンに対して嫉妬しているんだ、と伝える言い回し。

初日からしばらくは、アギラールさんがジョルジュを見下すように言っていたけれど、千秋楽に近づくにつれて、アギラールさんの言っていることは本当なのではないか、と思わせるような説得力が増していて、どちらの言い回しも大好きです。

握手を拒否されたアギラールさん。意味深な笑みを残して立ち去っていく。のをかなりの頻度で観ていた一方、前楽とか千秋楽は苦々しそうに去っていく姿が、アギラールさんの中での揺れ動きが感じられて、どちらも好き。

2幕:放送室

ゲルニカの悲劇を伝えようとしたキャサリンの報道は、アギラールさんによって中断された。人民の思想を導くために、情報規制は必要なことだ、とコマロフもアギラールさんも主張する。

まるでナチスと同じ行為だと責めるキャサリンに、偉大な目的の為ならば全ての手段は許される、とアギラールさん。

実際、ナチスだけでなく、情報規制は戦時下の日本でも行われ、民衆を政府の思う方向に導いていった。許されるかどうか、で言えば、キャサリンの言う通りファシストと同じ行為であり、現代の感覚からしても許されるものではない。

しかしアギラールさんの中には、ファシストへの勝利によるスペインの支配が、捻じれた信念の先に生まれてしまっていた。

いや、信念は捻じれてはいなかった。だが、市民達はPSUCの支配を拒否した。ファシストに勝つためには一つにまとまらねばならない。しかし市民はPSUCを支持しようとしない。

ならば、市民を支配すればいい。つまりスペインを支配すれば良い。

ファシズムへの勝利の為にスペインを支配しなければならない。

だからこそ、海外に大きな反響を与えている「バルセロナ便り」を担当するキャサリンを、自分の目的の為に取り込もうと、アギラールさんの言う通りにするようキャサリンに迫る。だが、キャサリンはそれを拒否し、ジョルジュの訴えを話題に出した。

ジョルジュに対して、苦い思いが蓄積しているアギラールさんにとって、自分の目的の為に必要なキャサリンが、打ち負かせないジョルジュについていることが許せないだろうし、ジョルジュをキャサリンの中から消し去りたいのは、ジョルジュに打ち勝ちたい想いもあっただろうし。

だからアギラールさんは強硬手段に出た。コマロフの持っている鎮静剤を利用し、キャサリンをモノにしようとした。一度は拒否したコマロフだが、武器輸入の裏金を暴露すると脅され、コマロフはキャサリンに鎮静剤を打つ。

鎮静剤を打たれたキャサリンにキスを迫りながら(!!!!!!!!!それも口開けキッス迫りですよ…心臓が…)PSUCのチャリティーにゲストとして招待することを告げるアギラールさん。しかし最後の最後までキャサリンに拒否されてしまうのであった…

2幕:チャリティー

意識朦朧としたキャサリンを連れてチャリティーに登場するアギラールさん。(正確には少し違いますが…)

サン・ジョルディの祭りを(PSUCの都合の良いように)正しく解釈したお芝居が繰り広げられ、ヴィセントが、ナチスを倒すのはPSUCだ、と称賛する。それを受けて、今まで自分達に従わなかったヴィセントが、自分(PSUC)を称えたことに、心からの喜びを表すアギラールさん。

ああ、彼の周りには、彼を本当に讃えてくれる人がいなかったのではないか、だからこそ、ヴィセントの、PSUCを称える歌が、彼に喜びを与えたのではないか、その瞬間、そう感じてしまうほど、アギラールさんの周りには、支持者はいても彼を愛してくれる人はいない。

ナチスのドラゴンが、美しい娘をさらった、という歌詞のところで、意味深にキャサリンに視線を向けるアギラールさん。彼としては、ジョルジュというドラゴンに心囚われたキャサリンを、ようやく自分のものに出来た、という思いもあったのだろうか…

しかし、チャリティー公演メンバーは、突然アギラールさんを舞台中央に呼び出し、この剣でドラゴンを倒してくれ、と剣を渡し、困惑するアギラールさんに、コマロフも促し。やれやれ、という感じではあるが、案外ノリノリでドラゴンを倒すアギラールさん。一方そのすきをついて、ジョルジュがキャサリンを救い出す。出演者達からたくさん称賛され、観客からも多大な拍手を受け、PSUC幹部の姿ではあるけど喜びを表すアギラールさん。しかしキャサリンが姿をくらましたことに気づき、警官たちに行方を追わせる。

鎮静剤の効き目はもって3日。間もなく意識を取り戻すとコマロフから伝えられ、憤るアギラールさん。ジョルジュへの殺意を燃やし、コマロフに自分の言うことを聞くように迫る。そこへ、中央電話局での市民戦が起きたことが伝えられる…

この辺りから、アギラールさんのやっていることは私としては一切擁護できなくて。それでも、彼が何故ジョルジュに固執しているか、キャサリンに執着しているか、彼があまりにも人間的で、官僚的というより血の通った人間が、歯車が狂って狂気に走っているように見えて。

2幕:中央電話局での市民戦

センチュリアの中で仲間割れしたタリックが、混乱のさ中を逃げているところに、アギラールさんと出くわしてしまう。タリックを連行するアギラールさん。そして、最後は警官達にPSUCの民兵やPOUMのメンバー、誰彼構わず銃撃させ(ているように見えた)、市民戦を収拾する。

彼が去り際に見せた狂気じみた笑みは、タリックを捕まえたことによる、ジョルジュを追い詰められるという自信なのだろうか…

2幕:ヴィセントの実家

タリックに自白剤を飲ませ、ジョルジュ達の潜伏先、ヴィセントの実家を訪れたアギラールさん。ヴィセントの恋人テレサを人質にとり、キャサリンを返すようにジョルジュ達に迫る。しかし、ジョルジュはPSUCがPOUMを粛清している現場写真を撮っていると、取引を持ち掛けた。ジョルジュの写真によって自分が破滅することを恐れたアギラールさんはジョルジュを殺そうとするが…背後からコマロフに銃殺されてしまう。

この場面まで来てしまったら、アギラールさんの狂気っぷりに、例え彼のやっていることの根本が理解できたとしても、共感も擁護も出来ないけれど、彼の周りに、ジョルジュやヴィセントが得たような、(恋愛感情のみならず)愛してくれる人間はいなかったことが、彼を大きく狂わせてしまったのではないか、とか考えてしまって。

ずんさんの演じるアギラールさんは、黒く冷たいだけではない、血の通った人間らしさが感じられる。それこそもとは「普通」の、PSUCの幹部とかの地位はあったけれどそれでも、「普通」の人間らしさが。「普通」の人間が、権力を持ち、私情をまぜこぜにしていった末路、とでも言うべきか…そんな風にも感じられて、ネバセイが発する警告の一つを、ずんさんはこの上なく描き出したのではないかな、と。

終わりに

ここまで読んでくださった方、本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。

本当はあらすじ入れずにずんさんのアギラーずんから感じられた色んなことを書こうと思っていたのですが、文章構成がへたっぴなので、本当に、長くなって申し訳ないです。

改めまして、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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