歌舞伎との出会いと沼

小学生の頃、なぜかテレビで歌舞伎に出会うことの多かった生活を送っていました。深夜のEテレの歌舞伎の演目の放送、祖父母宅のBS放送で流れていた演目。ほとんど記憶にないけれど、いつか観てみたいなぁとぼんやり思っていました。

そんな私が初めて歌舞伎を観に行ったのは、2013年のこと。母に連れられて当時小学5年生だった私が観に行ったのは、松竹座での七月大歌舞伎。『柳影澤螢火』と『保名』の二本立てでした。
幸い、小学生の私でもギリギリ話についていける内容だった『柳影澤螢火』。小学校での社会の授業で習った内容を頑張って思い出しながら話についていくのに必死で、それでも、花道を通る役者の皆様、花道の揚げ幕が開くシャランという音、主役のドロドロとした感情、人間の怖さ、そういったものはなんとなく覚えています。
今になって配役を見返していたら、当時、綱吉を演じられていたのが、今の鴈治郎さん(まだ翫雀さんだった)だと知って少し驚いています。綱吉さんはやたら印象に残っていました。

続く『保名』との出会いが、私を歌舞伎ファン人生に進むきっかけとなりました。
どんな演目なんだろう、とぼんやり考えているところに現れた美丈夫は、お化粧やライトで演出されている以上に輝いていて、舞台のそこにいるのに、そこにはいない、という、よくわからないが不思議な感覚になりました。とにかく美しい青年。足をトンと鳴らす振りのところは、いつ足を上げていたんだ!?となって、この人すごい…と思いながら見ていました。
それが、十五代目片岡仁左衛門さんのお姿を拝見した最初の公演。
『保名』素敵だったなぁ…また行きたいなぁ…そうやってプログラムを毎日のように見返していました。

その翌年、宝塚の沼に唐突にダイブして以降、なかなか歌舞伎を観にいくことが出来ずにいました。そんな中でも歌舞伎に、というより、中村壱太郎さんに間接的に触れることはありました。
壱太郎さんのラジオ『邦楽ジョッキー』に私の宝塚出身の贔屓が出演した時(ラジオの録画ができなかったから、深夜に頑張って起き出して、ウトウトしながら紅さん・壱太郎さんのトークを聴いていました)、『徹子の部屋』にさゆみさん(紅ゆずるさん)と壱太郎さんがゲストに出られた時…
贔屓の影響で、中村壱太郎さんという人がどんどん気になっていきました。

そんな私が久しぶりに歌舞伎を観に行ったのは、2021年南座での三月花形歌舞伎。
ちょうど高校も卒業し、4月には大学に入学するというタイミングでの観劇でした。
私が観に行ったのは、壱太郎さんが義経をされている回でした。壱太郎さん・右近さんによる楽しい解説、橋之助さんの可愛い源九郎狐、米吉さんの美しすぎる静御前、めちゃくちゃ美丈夫な壱太郎さんの義経…あっという間の公演時間、目の前で繰り広げられる煌びやかな世界。本当に素敵でした。

そこから歌舞伎観劇ライフが少しずつ始まっていきました。同年顔見世での『晒三番叟』『曽根崎心中』から始まり、松竹座、南座での歌舞伎は観に行けるものは絶対見にいくというスケジュールが自然と出来上がっていました。極めつけは、2022年の『Jホラー歌舞伎』と2023年三月花形歌舞伎。歌舞伎で同じ演目をリピートすることは今までなかったのですが、2022年から何度も壱太郎さんの出演されてる演目を色々観ていたら、どんどん壱太郎さんのお芝居が好きになり、ついに同演目リピートに走るようになりました。

そんなこんなで、1つ前の記事で書いた明治座遠征までするようになり、まだチケットこそ取れていないものの6月にも今度は歌舞伎座に遠征しようとしていて、ここまで歌舞伎を好きになることがあるんだなぁ、としみじみしています。先日は春の南座体験ツアーにも参加させていただき、南座の舞台機構の見学や、盆やチョンパや花道の体験をささていただけて、楽しかったですし、舞台ってこんな風に出来ているんだ…と色々知れました。

今は、片岡仁左衛門さん、中村壱太郎さんが特に好きで、昨年のJホラー歌舞伎と今年の三月花形歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』で中村莟玉さんのことも特に好きになりました。
隼人さんや米吉さん、玉三郎さん、鴈治郎さんのことも好きでつい追いかけてしまいます。

ファンになったのは10年前とはいえ、しっかり歌舞伎の沼に浸かるようになったのは2021年からですから、まだ歌舞伎のルールとか、大向こうのこととか、よくわかっていません。それでも、こんなに歌舞伎のことを好きになるなんて。歌舞伎に出会えて良かった。今まで大阪・京都だけで歌舞伎を観てきた私にとっては、この前の明治座遠征は新たに色んな役者さんに出会える素敵な機会になりましたし、これからも観に行ける範囲で歌舞伎を楽しもうと思います。

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