見出し画像

Disc誌1974年3月2日号 ツアーリハーサル中のクイーン


初の大規模ツアー前夜、Disc誌「74年のヒント」のクイーン

新しい衣装をもとめて


 ロンドン中心部からは離れたイーリングに一軒の古い映画館があります。歩き回れば満員の観客に大作が上映されていた過去の輝かしい日々が想像できます。悲しいかな今では老朽化し、内部はおおかた取り払われています。そして現在、そこではクイーンが新しいライブのリハーサルをしています。

 モット・ザ・フープルとのツアーの成功以来、クイーンは今一番優れた新人バンドのひとつで、最も成功しそうなグループだと広く絶賛されています。その評判とファーストアルバムの驚異的な売り上げのおかげで、彼らは初のヘッドライナーとして自分たちのツアーに出ようとしているのです。

 並外れてエネルギッシュなフレディ・マーキュリーは、ようやく自分たちのしたいようにできるのをとても喜んでいます。

 「サポートバンドとしてもう一本ツアーをしていたら命取りだったと思う。一緒なのが誰であれ、ちゃんとしたサウンドチェックや希望どおりの機材のチャンスはないからね。そして何かカットする必要があればそれはサポートアクトになる。ハマースミスオデオンでは(※1973年12月14日、モット・ザ・フープルのサポート。1日2公演)、1回目の公演が長引いて僕たちは25分ぐらいしかできなかったんだ」

光のショー

 今回は完全版の曲目になりますし、新しい機材も多いです。クイーンは3種類のPAを試してから好みのものを選び、照明システム一式も入手しました。

 「ステージをぐるりと囲むスクエア型の足場構造物があって、スポットライトなど照明は全てそこに固定するか吊るしている。今は補強や作り直しの最中。最初に試したものは僕たちの周りで崩れ始めてしまって! 照明は新しい演出の重要な一部になるので、きちんとするよう長い時間をかけて確認してきたよ」。その役割はバンドのギタリスト(※原文ママ)兼電気関係の達人であるジョンが担当したようです。

 可能な限り最高の照明、音響とともに、彼らにはツアーの準備中に考えるべき要素がほかに2つあります。どの曲をやるか、そして何を着るかです。

 「当然だけど ”Queen II” アルバムからの新しい曲はたくさん使う予定。レコード会社はできるだけ早く出してくれるって  —  今のところ3月8日が発売日。ツアー開始が3月1日なので早ければ早いほどいい」

シングル

 ステージのクイーンを見る楽しみを経験した人たちは ”Queen II” からの新曲をいくらか先取りできたことでしょう  —  定期的に演奏されてきた “Father to Son” は特に。シングルに選ばれたのは「輝ける7つの海」で、この曲への彼らのアクションは既にすごいです。「トップ・オブ・ザ・ポップス」にさえ出ました。労働問題で他の出演者たちがみな以前の映像の再使用で我慢しなければならなかった週でした。

 クイーンは「トップ・オブ・ザ・ポップス」出演に少し不安を感じていました  —  単なるポップバンドとレッテルを貼られるという絶えずつきまとう懸念があり、完璧なサウンドを得られない可能性も気にかけていました。クイーンをよく知るにつれどんどんはっきりすることがひとつあります :  彼らは完璧主義者なのです。アルバムの発売を切望しているにも関わらず、彼らは先週そのカッティングをやり直しました。

 「だってちゃんとしていないといけないから」。フレディはシンプルに言います。2度目のカットにはずっと満足していますが、彼らにとって「これで十分」というものは決してありません。

 「輝ける7つの海」はもちろんツアーで演奏されます。”Keep Yourself Alive”  などファーストアルバムからの曲もいくつか使うでしょう。それから、とても愉快なクイーン流の  ”Big Spender“ のような人目を引くためのナンバーも1曲か2曲。でも彼らはいわくありげに微笑むだけでその秘密を打ち明けてはくれませんでした。待ってみるしかないですね。

 ほかに私たちが目にすることになるのは、クイーンのステージ衣装全てを手がけるザンドラ・ローズのデザイン、製作による新しい衣装です。「彼女にはクイーンズウェイからすぐのところに素晴らしい場所があるんだ」とブライアン・メイは私に言いました。「そこはちょっとした産業になっていて、生地のプリントまでやっている。そして彼女は最高。思い浮かべているものを僕たちが伝えるとすぐにスケッチしてくれる。今回は僕たちを『あらいらっしゃい。新しい衣装のために寄ったの?』と迎えてくれたよ」

 出来上がった衣装はいつもどおり黒と白になります。フレディ分は布の「翼」がついた鷲のようなもの。「足にだって翼をつけるかもしれないよ」と彼。そして「すごくマーキュリーっぽい!」と苦笑いで付け加えるのです(※翼の生えたサンダルを履いているギリシャ神話の神ヘルメスの英語名がマーキュリー。自分の姓とかけている)。

拘束衣

 自分の衣装はフェルトの拘束衣のようなものだとロジャーは言います。見るのが楽しみですね。細部にまでこだわり抜いた努力は大変なものなので、必ずやすごいショーになるでしょう。そしてきわめて重要なレインボー劇場でのギグには「一つか二つの超特別なこと」がある予定ですが、その秘密もまたきちんと守られています。

 比較的新しいバンドがこれほど大きく権威ある会場に挑むのは大きな一歩です。

 「僕たち自身ではこれはまだ考えつかなかったと思うけど、実はプロモーターのメル・ブッシュに依頼されて。本当に鋭い人だから、彼が僕たちにそれほどの自信を持っているならそれは正しいはずだ」

 クイーンはとても重要なこのツアーをロンドンのレインボーで3月31日に終えます。売れ行きは既に好調、私自身も彼らのハードワークとアイデアの成果を見に行きます。その夜そこで演奏するのは、この国で最も人気のバンドのひとつになると運命づけられたグループだと私は確信しています。現在の進歩の度合いなら、そのポジションまで数週間とは言わずとも、数か月なのは間違いないでしょう。

(Rosemary Horide)

-----

※インスタグラムなどに和訳を転載する場合はクレジットをお願いします


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?