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ロジャーヴィンテージインタビュー  Disc誌1975年2月15日号

「クイーン」のブティック - ロジャーがフレッドとのファッション業界時代を語る

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イメージはどんなバンドにとっても重要です。そしてクイーンのイメージは業界トップクラスとみなされています。彼らは他のミュージシャン達から尊敬され、ファン層もベイシティローラーズのファンからピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンを崇拝するマニアまで幅広いもの。

一番大事なのは音楽だ、とロジャー・テイラーはまず言うでしょう。しかしクイーンはイメージにもとても気を使い、それには彼らが着るものまでが含まれます。

「ジーンズは6本ぐらい持っている。着心地がいいので家では着る。でもそれでギグに現れるのは間違いと感じるだろうし、もちろんステージで着るなんて論外だ。ギグの後、誰かが自分たちに会おうとステージドアで待っていたら、その時に着ているのも違う。すべてイメージに関係しているんだ。ファンは俺らに、自分の地元の商店街では買えないようなものを着て欲しいと思う。こちらもファンをがっかりさせたくはない」

このやや並外れた着るものへのこだわりは、ロジャーと残りのバンドメンバー、特にフレディに共通のものです。実はバンドの初期、ロジャーとフレディはケンジントンマーケットで変わった服を売るストール(※小さなショップ)を一緒に経営していました。

「最初は」とロジャーは教えてくれました。「俺が金を出した。すごいことみたいだろ? ストールの使用料などで30ポンド。フレッドは商品を提供した。アート作品を売ることではじめたんだけど、2、3週間後にはそれでは売り上げが足りないということになった。その頃には友達やコネがいろいろできていたので、古着 ー ヴィクトリア時代とかのすごく古いヤツだ ー を仕入れはじめたんだ」

「そういう古着を半トンぐらい買ってより分け、ましなものを選んで洗い、アイロンを掛けて、売り始めた・・・」

「最終的には俺らの商品用に服を作る人たちもできて、徐々に稼げるようになった。手元に金があったわけじゃない。すぐ使ってしまったから。手が届くはずもないような、すごく高い食事をしによく出かけたよ!」

「フレッドが習慣にしたライフスタイルにちょうど足りるぐらい稼げる、そんな感じが18か月ぐらい続いた。俺はサザンカンフォートとたばこを切らさずにすんだ・・・・」

その間ずっと、彼とフレディはそれ自体がフルタイムの仕事だったバンド活動にも没頭していました。

「週3〜4回フル機材で練習していた。当時ブライアンはインペリアルカレッジの大学院生で。クイーンズゲートのフラットのすぐ近くだ。それがすごくラッキーだった。講堂を練習に使わせてもらえたから。階段状のミニ劇場みたい感じで、自分たちの目的にぴったりだった」

「相当練習したけど、ギグの数はそれほど多くなかったな。パブとかそういう場所では断固やらなかったから、会場が限られていたんだ。最終的にはその講堂で150人ぐらいの友人を前にしてのライブを2、3回やった」

「そういう無料ライブではポップコーンとアップルジュースを客にサービスした。ポップコーンは自分たちで作った。当時フレッドのフラットはポップコーンで破裂しそうだったよ! これで本当は金がどこに消えたのかわかっただろう」

「実際は無駄遣いばかりしていた。多額の金が俺らの手を経由して、かなり貯められたはずだけど、そうはしなかった。俺らはバンドに関しては常にとても真剣で、結局すべての時間を充てることにした。でもストール経営は本当にすごく楽しかった」

その頃の彼らは多くの服に触れる機会、また時間もあったので、自分に似合う個性的なものを見つけるのに苦労はありませんでした。しかし最近はそれほど簡単ではありません。

「実際今はすごく難しい。好みのものを探して店を回っている時間がないから」

ではロジャーの最近の服はどんなところのものなのでしょうか?

「卸売りをやってる友達がいて、普段着はほとんど彼からだ。それからキングスロードのEssencesというショップ。めちゃくちゃいい服が揃っている。中にはすごく古くてレアなものもある。あとはもちろん昔からのお気に入り、Granny Takes A Trip。ずっと自分たちの救世主だよ、特にジョンと俺の。多分俺らは50%ぐらいの服をあそこで買っていると思う。いつ行っても何か好きなものが見つかる。ジャケット1着とパンツ2、3本とかそんな感じで」

「あそこの服はちょっとチャラいとは思うけど、俺もちょっとチャラいから! 値段が高いことについては、俺はそういう考え方はしなくて、気にするのは自分に合っているかどうかだけ。本当に気に入るものを見つけたら値段は関係ない」

でもみんながGrannyの服を買えるわけではありません。手に入れやすい、チェーン店の洋服の一般的なレベルについてロジャーはどう思っているのでしょう?

「5年前よりはましになったと思うけどまだいまいち。でもだからって素敵に見せられないわけじゃない。手頃な価格の服でもある程度のレベルまではいけると思う。着こなし次第だよ」

「俺もチャリティバザーで買った服をまだ持っているし。今もよく着る2着のジャケットは昔の3ペンスで買ったものだよ。短めの丈のダブルで本当に気に入っている。めっちゃいい。バザーではとてもいいセーターも買えるし・・」

ロジャーの洋服のセレクションを見ると、ベルベットとサテンが多いのが印象的です。偶然?それとも彼の好み?

「肌触りのいい素材が好きなんだと思う。白状すると、ベルベットは特別に好きだ。上質なコットンベルベットがね。最高に見栄えがする。最初に流行った時、ベルベットの服には何か革新的なものがあった。フレッドと俺も作ってもらっていた。キツネの毛皮の襟をそういう服に付けたりして - イケてたね」

「ただ、ナイロンベルベットは大嫌いだ。あれはひどいし、すごくチープに見える。自分たちはジャケット用に払える範囲で最高のベルベットを手に入れていた。俺はとにかくチープに見えるものが嫌なんだ。あと、いわゆる ”メンズショップ” で売っている25ポンドのひどいスーツも好きじゃない」

幸いかなり多くの服を買える余裕がある最近の彼、お気に入りはどれなのか知りたいものです。

「気に入っているものはあるけど、大体毎週違う。6週間ほど前にベージュのコーデュロイのスーツを買って、なぜだか最高に気に入った。着心地がとてもよくて見た目も大好きだった。だからそれがお気に入りだったね。2週間の間だけど!」

でもそれ、まさか今は捨てられたってことはないですよね?

「それはないよ! 今はしまってあるけどまた登場するさ。ほかも全部そうだけど、6か月ごとぐらいにね」

「最近の服の問題はだめになるのが早すぎること。音楽に専念してからは、俺はいつもしゃれたものを着ていたいと思ってる。ファンは別にしても、顔を合わせるジャーナリストやテレビ関係の人たちもそれを期待しているみたいだ」

「ただ、古着や変わった服は普通の服よりもろいことが多いね」

彼自身の服装はしばらく忘れておくとして、ロジャーは女の子にどんな服を着てほしいのでしょう?

「一番大事なのはどう着こなされているかだ。着こなしにスタイルがあれば大きな差がつくよ。型にはまったありふれた服は好きじゃない。友達が着ているからと同じものを着る子も。服はとても個人的なものだから、それを着ようとする人に合っていなきゃ。何をどう着ているかでその人がよくわかる」

「個人的には、自分がカジュアル・ブッチ(casual butch)(※メンズっぽいカジュアル、ぐらいの意味? )と呼んでいるファッションの女性が好きだ。例えば、上質で体によく合ったリーバイスは最高。丈の長いふわふわワンピースの女性は全くタイプじゃない。それから、セクシーな服は好きだ。ただし適度にだよ。やりすぎはだめ」

つまり、ロジャー・テイラーにとって着るものは重要です。”俺の新しいパープルの靴は隣人を驚かせる” という歌詞を書いた男だけあって、彼は注目されるのが好きで、そういう時の自分がかっこいいことを否定しないはず。

かつてのクイーンにとって、ステージやアルバムQueen Ⅱで着ていた黒と白が、イメージとファッションの融合の表現でした。

現在の彼らは常にかっこよく見えることに満足しています。そう期待されているし、”Keep Yourself Alive” より前から着るものにはいつも気を配ってきましたから。その音楽とミュージシャンとしての技量に加え、イメージこそが、彼らをジーンズとTシャツ姿のバンドより優位に立たせてきたのかもしれません。クイーンは口うるさい人たちから最後のグラムロックバンドなどと呼ばれていました。しかし彼らはグラムロックなどというものが生まれる前から見た目がよく、独特の個性があったのです。

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