見出し画像

クイーンインタビュー (Record Mirror紙1974年3月30日号)

Sophisticratic rock

ジェネヴィーヴ・ホール、クイーンから叱責される


地獄の責め苦やあらゆる怒り、歯ぎしりも、クイーンの激怒ぶりとは比較になりません。
 クイーンの新アルバム "Queen II" がほとんどの音楽紙で容赦なくこき下ろされてから彼らが最初に会ったジャーナリストが私でした。さらに、ある専門紙がクイーンとマーリン(注: バンド名。英語表記はMerlin )を代表例に、「ハイプ」(注: 誇大広告、過剰宣伝された人、大げさな売り込み、などの意味)の深部を分析的に掘り下げたという事実がありました。

 ですから、彼らの激怒し傷つき苛立った辛い気持ちが噴火した火山の熱い溶岩のようにあふれ出したのも当然ではないでしょうか?

 リードギタリストのブライアン・メイがその新聞をつまみ上げて私の鼻先でひらひらさせ、「この記事は僕がこれまで読んだ中で最低最悪のゴミだ」と復讐心を燃やして断言します。

 「いいかい、これからこの記事を読む人たちがいる。マーリンについて聞いたことのない人がいれば、僕たちを知らない人もいるだろう。この見出しは『商業ポップ』を声高に叫んでいる。彼らの載せたクイーンの写真はすごく古くて、ポップすぎるので僕たちが大嫌いなものだ。そしてその下に『ハイプ』の文字。記事全体でクイーンはハイプだと示唆的に言っている」

ハイプ

 「はっきり言って僕たちにはやらせに見える。彼らはクイーンをやらせだと言う。それがやらせなんだよと僕は言ってやる。なぜって、この新聞は僕たちがツアーに出てファンを増やしている間ずっと、こちらを完全に無視していたからだ。過去何か月もの間僕たちはひと晩に最低でも千人のお客を集めていたし、彼らはみなその状況を知っているんだ」

 「この新聞は僕たちを完全無視した。そして僕たちは今、レコードが売れはじめ世間の注目を浴びている。音楽紙の協力なしでこの位置まで来たけど、彼らは僕たちの良さを認められないからハイプだ何だと示唆しなければならないんだよ」

 本当にそう思っていますか?と私は尋ねました。

 「全くそのとおりだと思っている」とドラマーのロジャー・テイラーが話に加わりました。「やつらが聞いたこともない全くの新人バンドとクイーンを比較している事実がそれを裏付けている。悪く言いたくはないけど、向こうは単なるストレートなポップバンドみたいだ。こっちはここまで何年も頑張ってきた。俺は24、ブライアンは25、フレディが27、ジョンはちょっと下だけど23だぜ。それに俺らは全員、そんな売り出し方を望まないだけの知性を持ち合わせている。まず音楽を出したいんだよ」

 音楽は最優先されていますか?と私は尋ねました。私たちがまず受け取っているのは超特大サイズのイメージで、音楽は僅差でその次に付けているように思えますが。

 「それは俺らが自分たちの音楽を一番目立つ面白いやり方で伝えたいから。インパクトを与えたい。肝心なのはそこだろう - 楽しませるってこと」

 「そしてそれが別の問題で」とロジャーは続けます。「やつらはまるで、誰かが俺らに『君たち、ここに金がたくさんあるからカーナビ―ストリートに行って服を買いな』と言ったみたいな印象を与えている」

 「フレディと俺は昔いっしょに古着を売っていてね。実はフレディは俺らの衣装デザインと製作だってやっていた。俺らは常に、自分たちの装いがぴったりハマったかっこいいものであるよう気を使ってきた。やつらはクイーンが汚れたジーンズでやっていくのを好むかしれないけど、そんなの世間は見たがらないと思う。それより何か見栄えのするものを見たいんだと思うよ」

 リードボーカルのフレディ・マーキュリー(貴族みたいな人)が、憤りながらハイプなリードシンガーのパロディを読み上げ、「ハイプバンドたちは即売れシングルを書くためライターを雇っている」という部分まで進みました。

 「一体なぜ僕たちがそのカテゴリーに入ると思うんだよ? 彼らは全然ちゃんと調べていない。うちのベーシストのジョンをドラマーだと言ってさえいるんだから。本当の僕たちを知ろうともしなかったんだ」

 「本格的だと思っているものをプレイするとみんな反感を持つようで、若者がそれを買うのが理解できないみたいだ」

 「うちのバックにはチン&チャップマン(注:1970年代にヒット曲を量産したソングライターコンビ)なんていなかった」とロジャーが声を荒げます。「俺らがやってきた曲は全部自分たちで企画したものだよ、アルバムジャケットも含めて」(有名なクイーンのクレストはフレディがデザインしたことにご留意ください)

管理されない

 「どの曲を発表するかのコントロール権だってある。あらゆるバンドの中で一番管理されていないのがうちだと思うね」

 「そのとおり」とフレディ。「この記事が全くの茶番で真実からかけ離れている理由はそこだよ」

 OK、では彼らはなぜこの制限なしの自由を手にできるのでしょうか?

 答えたのはブライアンでした。「最初の頃にレコード会社が僕たちを喉から手が出るほど欲しがっていたから。自慢みたいに聞こえるのはわかっているけど本当だ。僕たちの作ったデモテープは誰からも好評で、みな僕たちを欲しがった。彼らは互いに競争していることに気付いていた。それで結局、僕たちは少しばかり指示もできるような契約を結べたんだ」

 同じぐらい良い他のバンドよりあなたたちが優遇されているのは否定できませんよねと、特別提供のデラックスなバンを見ながら私は言いました。全英ツアーが始まる時に彼らに与えられたものです。

 「ちょっと待った」とロジャー。「待遇が良くなったのは俺らが成功しつつあるとレコード会社が気づいてからだ。EMIはファーストアルバムをまず5,000枚プレスしたけど、意外なことにその数をさらに5回再プレスしなきゃならなかった。だから俺らがセカンドアルバムを作った時にその裏で多くの労力を注ぐのは当然だと彼らは感じたんだ。だからこそ1週目にチャートインできるだけの十分な枚数が店頭に並んだ」

 「そうだね、でも少しでも真っ当な感覚があるレコード会社ならどこもそうするさ」と言うフレディ。「僕たちは周りにきちんと仕事をする適切な人材がいるからって叩かれるみたいだ」

 彼らの成功に大きく関係しているのはそれでしょうか ー きちんと仕事をする適切な人たちがいること?

 「違う」と答えたのはロジャーでした。「それは後からついてきたもの。成功したのは俺らがめちゃくちゃいいバンドでものごとをきちんと管理する常識があるから。めちゃくちゃいいだけのバンドならたくさんいるからな。それでも、まず最初に信じてもらえなければサポートは得られなかっだろう」

 次はフレディの番です。「あるバンドに多額の金がつぎ込まれてその成功が普通より早いように見えれば、世間は彼らをハイプだと考える。でも僕たちはいくつかのハードルを越えるため頑張ってきてその恩恵があったんだ」。彼は自分の写真に目を落とします。

 「え、マジ」とあきれて叫ぶフレディ。「この新聞は全然だめ ― この写真を3回続けて使うって・・・それに僕の腕を見てよ!」。彼はゾッとしていました。「どれだけ太く写ってるんだよ。僕の腕は全然そうじゃない - どう思う?」

 フレディは私がチェックできるよう袖をまくり上げます。そして私は今ここに、この気の毒な彼の腕はとてもとてもスレンダーだと述べさせていただきます!

盗難

 ふう! それでもあなたがクイーンは批判に過敏で批評家に敵意を燃やしていると思うなら、ロジャーに正してもらいましょう。「いや、恨みなんてないよ。ただそういうやつらの腕をねじり、足をもぎ取ってまわるだけだ。それか濡れたセメント入りの袋を送りつける。何も暴力的なことはないよ!」

 この頃までにジョン・ディーコン(『アリス』のヤマネ/眠りネズミを思い出す人でした)が起きてきました(夜更かしと早起きが多すぎたのです)。彼は前日に服を盗まれたにしてはまずまず元気でした(注:1974年3月20日のマンチェスター公演中にジョンのかばんが盗まれる事件があった)。

 「平均の法則によれば」と彼は言っていました。「今日は誰かほかの人が盗まれる番だね」

 アルバム “Queen II” の成功について話すと、彼は「全部僕らのママたちとハイプのおかげさ」と言います。他の3人よりずっと無口な人ですが、 全く気取りがないので好感を抱かずにはいられません。

 フレディはかなりダイナミックなキャラクターで、時に傲慢だと勘違いされたりもする自信に満ちた雰囲気があります。髪は真夜中色、輝く茶色の瞳を巧みなメークで邪悪に見せています。話し方はとても優しくて(そうだよね、ディア?)、過剰なまでの手振りつき。そして注目を求めるというよりはそうされるように仕向けるのです。

 ブライアンは一番背が高く、ダークなもじゃもじゃカールが薄いグレーの瞳の中のグリーンの斑点を引き立てています。思慮深く思いやりのある人で、彼とロジャーが議論しているのを聞くのは楽しいものです。

 そしてロジャー。そうですね、彼はかわいい人で遊び心があります。ドラムセットで頑張れるようには見えませんが、ひとたびアドレナリンが出ると - 暴れまくるのです。

大好き

 音楽的にはクイーンはヘビーなエレクトリックロックバンドです。しかし耳障りではありません。彼らの作品には、複雑なハーモニーを含んだかなりのメロディ構造が組み込まれています。精密に磨き上げられていなければ乱雑になりかねないものです。彼らは聴いても見てもエキサイティングで、感覚を切り裂くというよりはそれを捉える良いセンスがあります。その音楽的手腕を表現する唯一の単語は「洗練」です。

 レインボーシアターでクライマックスを迎える全英ツアーを終えると、クイーンはその「洗練信奉」ロックを2か月間のアメリカツアーに持ち込みます。コロラド州デンバーが初日で、モット・ザ・フープルと同じ舞台に出演します。みなさんのことは分かりませんが、私はいつだってずっと王族(注:クイーンというバンド名から)が大好きだったのです。


(レコードミラー紙  1974年3月30日号掲載)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?