【小説】夕暮れ推理倶楽部4後日談

※先に以下をプレイすることをお勧めします※


「…月、来るの早くない?」
「そんなことないですよ、祐樹くん」
午前9時。多くの人が行き交うロンドンの街中で、大好きな探偵様と待ち合わせする。
些細なことだけど、私にとっては至福の時間だ。

私の名前は流石月。
今しがた向こうの通りから歩いてきた新藤祐樹くんの探偵助手である。
とは言っても、まだ軌道に乗ってないため、お互いアルバイトしながら探偵業に励んでいるという感じだ。

「俺も30分前にはいたけど、月は何分前に着いたの?」
「大体1時間半前ですかね、ぼーっと立ってました」
「流石に早過ぎでしょ…」

呆れ返る祐樹くんを見ながら、あははと笑う。
だって仕方ないじゃないか、中学の時から慕う祐樹くんとこうして出かけることができるとは思いもしなかったんだもの。昨日からずっと楽しみで仕方なかったんだもの。

「まぁいっか、近くのカフェでも入ろうよ」
そんな私に慣れっこのようで、いつもの笑顔に戻った祐樹くんは、近くにあったカフェを指差した。
「賛成です!美味しいケーキでも食べたいですね!」
「相変わらずの食い気だね」
と苦笑いの祐樹くんも満更ではないようだ。
とりあえずそのカフェの店内に入ってみることにした。


「そう言えばさぁ」
ストローを軽く吸い、アイスコーヒーを一口味わうと、祐樹くんはこちらを見る。
「月が前に言ってた不思議な夢の中での俺、どんな感じだったの?」
…--ああ、と、久々にあの夢のことを思い出した。

謎の天使から渡されたゲームのこと、問題のこと。いろいろあったなぁ。

「なんか、祐樹くんは一個上の先輩で」
「ふんふん、それで?」
「祐樹くんは相談屋として、色んな犯人の手助けしてて」
「何それ、厨二病なの?」
「一方の私は、探偵を崇拝する探偵助手でしたね」
「そこは史実に忠実なんだね」
「あんまりではありませんか?」

私が口を膨らますと、軽く笑って誤魔化される。
…--全くもう。絶対私を馬鹿にしてる。

「冗談だって、それにしても聞けば聞くほど不思議な夢なんだね」
「そうなんです。色々時系列とか関係性とかおかしい部分はありましたけど、推理小説研究会を立ち上げたり、水平思考クイズで遊んだりしてるところは合ってたり。全くもって不思議な夢ですよね」

そう言い終わると、机に置かれたカフェラテに口を付ける。優しい甘さが口いっぱいに広がった。

「まぁ何にせよ、その夢のおかげで、こうして仲直りできたんだし、良かったんじゃない?」
「おかげと言いますか、なんというか」
…--まぁいっか。反論しようにも言葉をうまく紡げないし。

「それよりも今日はどこに行きたいんだっけ?」
「あ、理子ちゃんに郵送するチョコを見に行きたいんでした!」
「じゃあ、ここから一本外れた通りに行こっか」

そして何より、夢の後押しによって仲直りできた祐樹くんとの時間の方が大切だから…--

そそくさと席を立つ祐樹くんの背後に小さく微笑み、私も席を立って祐樹くんの後を追うのだった。


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