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麻雀AI「Mortal」の実力評価

麻雀AI「Mortal」とは

麻雀AI「Mortal」を紹介したいと思います。
特徴としては無料で添削してもらえることと、雀魂の牌譜も見てもらえることの2つが大きいと思います。
「NAGA」に関しては現状、天鳳にしか対応していないし、有料ツールなので、NAGAにはない機能を備えているMortalの需要は高いです。
今回は実際に牌譜を添削してもらい、Mortalの実力のほどを測ってみようと思います。

https://game.mahjongsoul.com/?paipu=221009-aa2e83f0-dc23-4483-9a38-e8ab4030fec5_a465825560

今回読み込んでみた牌譜はこちらです。
前回の記事で動画投稿したときの対局は先行逃げ切りのパターンで、ゲーム全体を通して守備的に立ち回ることが多かったと思います。
今回は東発からいきなり5200点放銃で始まり、劣勢の状況から下克上を目指してガンガン攻めながら這い上がっていきます。
自分の攻撃的な打ち筋はどう評価されるのか、見ていきましょう。

牌譜添削結果がこちらになります。

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ページの上の方にあるmetadetaという項目をクリックすると、ratingという数値が表示されます。
ただし牌譜を読み込む前に「ratingを表示する」という項目をクリックしないと表示されません。
これはmotalの打牌と、プレイヤーの打牌が一致した度合いを表しているようです。
数値は92.294でした。
これはけっこう高い数値ですが、私の麻雀スタイルが面前派だからというのもあるでしょう。
期待値微妙な無駄な鳴きをあまりしないから高くなりやすいというのはあると思います。

作者のツイートによると、Mortalの副露率は25%で、副露をAIに学習させるのは難しいと書かれています。
Mortalは面前派AIなので、おそらく4割鳴くような副露型はratingが低くなりやすいんじゃないでしょうか。
そのことを考えると、ratingの値は過剰に気にする必要はないですが、80点以下とか、極端に低い場合は問題があります。
基礎雀力が足りてない可能性が高いでしょう。

東1局0巡目

今回の対戦ではいきなり染め手が見える好配牌をもらいました。
私は面前派で、こんな序盤からいきなり仕掛けることはめったにないですが、上家から出た9mはチー。
これは鳴かないというか、鳴くのに抵抗ある人も多いかもしれませんが、ホンイツではなくチンイツが見えるので、満貫以上見える手はガンガン積極的に仕掛けた方が良いでしょう。
鳴くと見た目3枚残りのカン8mの愚形ターツが残ってしまうんですが、これがもし上家がペンチャン落とししてるかもしれないと考えたらどうでしょう?
その頃に8mが鳴けても1手遅れてしまいます。
もしペンチャンターツ落としでないとしても、自分で9m切ってあるところに8mを引いたらツモ切るのは確実なので、9mを鳴いた後に8mはかなり鳴きやすいと思います。
この鳴き判断はAIの目にはどう映るでしょうか。

Mortalの判定はスルーでした。
この鳴きはちょっとAIには難しかったようですね。
高度に人間的でセンシティブな鳴きなので。
そもそもこの後上家が8m切りそうだしとか、AIが予想できるのでしょうか。

東2局4巡目

この場面は私は凡庸に南を切っていきましたが、Mortalの選択は驚きのものでした。

9m切りです。
おそらく自分の手がドラもなく、形も悪くていまいちなことから、局収支の下振れを抑えるために手牌の守備力を優先したのでしょう。
このへんの話は前回の記事でも詳しく解説しました。
AIもこういった戦術を学習しつつあるということでしょう。

この選択は私好みで気に入ってますが、現状ラス目なので実際はほんの少し押し気味の判断をしました。
もう少し点棒持っていれば私も9mを切ったと思います。

東2局13巡目

ここは9mを切ってケイテンを取りにいきますが、Mortalの選択は

1mを切って中抜きでした。
9mはチートイに刺さるかもですがラス目だし、このくらいは押してケイテンを取りに行ってもいいだろうという感覚です。
両脇が今のところベタベタにオリてるかんじなので、追っかけが入る可能性も低いかんじです。
中スジの4sはけっこう安全なかんじで形も維持できるので、4s切りはありかなと思いますが中抜きの1m切りはいまいちです。
Mortalはケイテン取り意識が低いです。
それと、点棒状況判断も鈍いのかなと思います。
自分がラス目だと押し気味に、トップだと引き気味にっていうのは人間的な感覚でAIは苦手なのかもしれませんね。

東2局1本場第二打

ここは個人的にはかなり7mを切りたいところですが、Mortalの判断は

中切りでした。
先ほどの局まではかなり守備意識を発揮していたMortalですが、ここにきて守備意識が低いですね。
現状ドラもなく大した手ではないですし、安牌ゼロなのでいきなりリーチが飛んで来たらかなり厳しいです。
3トイツなので7mを切っても大したロスではないですし、677mから2面子構想もちょっと厳しいかんじなので7mはまず要らないかなと思います。
ちょっと守備意識が安定してないかんじですね。

東3局3巡目

ここは5sを切って6ブロックに構えるのがまず正解です。
5sをタテに引いてもドラが出て行っちゃうので打点が下がりますし、4s引きのダブルターツもかなり重たくて扱いづらいです。
4455sの形は愚形ターツと同じくらいに思っていますので、萬子の両面ターツを嫌ってまで残すことはないし、5sはほぼ使い道がないですね。

これはMortalと判断が一致しました。
この5sが切れるということはけっこう雀力が高いと思いますし、単純な5ブロック進行ばかりではなくて対応の幅が広いですね。

東4局14巡目

ここは終盤に入り自分の手は和了りは苦しいものの、なんとかケイテンだけは取りたいところです。
私は4sを切っていきましたが、Mortalの判断は

打2sです。
これは明確にあかんですね。
2sを切るということは頭が8mしか残らなくなるので、一手進むと危険牌の6mを必ず切らなければなりません。
6mはもちろん西家のリーチには通っていません。
2sを切るなら7m受けが残る8mの方がまだましだと思います。

そもそもちゃんと相手の手を読めていれば、4sがほぼ通ることは分かります。
4sが当たるとすればリーチ者が33334sもしくは333344sの形で持っていたことになりますが、どちらも2-5sの両面に受けることができるので、両面を嫌って愚形待ちにすることはほぼありえないでしょう。
Mortalは相手の手を読めてないんじゃないかと思います。
相手の手を読むという思考自体がないというか、これはやはり人間様にしか出来ない特権になりますかね。
パターンを学習すれば理論上は「読む」ことも可能かもしれませんが、こういうマニアックなパターンまで拾うのはなかなか難しいのかもしれません。
現状はノーチャンスの壁くらいしか認識していないようですしね。

東4局18巡目

最終盤に差し掛かり、安全な牌を切りつつもクイタンドラ1愚形のテンパイを入れました。
残り1巡というところですが、上家から2sが切られます。
これは鳴いて8mを切りますが、Mortalの判断は

パスでした。
しかしよく考えてみましょう。
ポンすることによってハイテイが自分に回るので、リーチ者のツモは増えない、自分のツモ回数は減らない、カン7mよりは待ちが少し悪いですが、フリテンではないので6mが出れば普通に和了れる、しかし6mは安全に切れるのでハイテイ番で危険牌をツモっても放銃することなく安全にテンパイを取って流局できるんです。
頭をポンして単騎待ちに変えることで放銃回避するという、割と高度なケイテン取りのテクニックの1つなのですが、Mortalには難しかったようですね。
しかし放銃率をほぼゼロに出来る割に、デメリットがほとんどないので、知っているならこれをやらない手はないです。
Mortalはケイテン取りがすごく下手です。
私も流局聴牌率は4割前後でケイテン取りは苦手な方ですが、Mortalはそれ以上に下手で、上級者が当たり前のように使うテクニックも使えないし、ケイテン取りの意欲がほとんどなく、和了れない手は早々に諦めて手仕舞いしてしまう傾向にあります。
下手に動いて放銃するよりはましかもしれませんが。

まとめ

一例を挙げてみましたが、ここまで見てきた中でMortalの実力のほどを評価したいと思います。

1.Mortalは鳴きが下手

Mortalは川村さんを激怒させるほどに鳴きが下手です。
副露率は25%程度で腰が重いし、場況や他家の動向を感じ取るようなセンシティブな鳴きも苦手としています。
特にケイテン取りの鳴きはものすごく下手で、上級者が当たり前に使うテクニックも使えません。

2.Mortalは守備意識が高い

Mortalは守備意識が高いです。
打点、スピードだけではなく、守備も含めた高度な手の進行が可能です。
目先の受け入れだけを考えるのではなく、局全体を見通した大局的な判断が出来るようです。
ただしガチ面前派の守備型雀士から言わせてもらうと、まだまだ守備意識が甘いところもあります。
それでも一般的な基準で言うと守備意識はかなり高い方ですね。

3.Mortalは読みが苦手

Mortalは読みが苦手です。
場況読み、手牌読み、鳴き読み、他家の動向読みなど、人間が得意とする読みの分野はことごとく苦手としています。

4.Mortalは点棒状況判断が苦手

Mortalは点棒状況判断が苦手です。
自分がラス目のときは押し気味に、トップ目のときは引き気味にというように、人間が打つ場合は状況によって打ち方を変えるものですが、Mortalはいつも同じように淡々と打っているようにしか見えないんですよね。
状況によって打ち方を変えすぎるのも問題ですが、そのへんの微調整意識は参考にならないかもしれませんね。

5.Mortalは面前守備型

Mortalは面前守備型です。
面前リーチも割と多めだと思うんで、私とけっこう似たタイプなのかなと思います。
副露攻撃型とは相性悪いかもしれないのでそこは気をつける必要あります。
Mortalの判断に寄りすぎると極端に鳴けなくなったり、オリすぎてしまったりしそうです。

6.Mortalの実力は魂天クラス以上

Mortalの実力は雀魂で言えば魂天クラスかそれ以上なのは間違いありません。
天鳳で言えば八~九段くらいでしょう。
基礎牌理をほとんど間違わないっていうのは大きいし、そこだけ見ればトップクラスの人間を超えるくらいだと思います。
しかし、鳴きや読みや点棒状況判断など分野を苦手としているので、例えば天鳳位やMリーガーといったトップ中のトップクラスには到底及ばず、超えられない壁が存在しています。

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