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鹿屋初の家守会社。リノベまちづくり最南端のメッカに。 | まちづくり会社/大隅家守舎 鹿児島県鹿屋市(2017年掲載事例記事)

※本記事は、弊社旧ウェブサイト(rerererenovation!)からの移行記事です。2017.7.24に制作/更新されたもので、登場する人や場所の情報は、インタビュー当時のものです。


大隅家守舎ってどんなところ?

鹿児島県鹿屋市。大隅半島のほぼ中心に位置し、人口約10万人を擁する半島の中心地です。鹿屋市の中心、北田商店街。バスのターミナルもあり、かつて市内のみならず大隅全体から買い物客の集まる「都会」でした。

ところが人口減少などの影響で80年代後半に国鉄大隅線が廃止、バスの路線も激減。現在、空港と鹿屋を結ぶ唯一の公共交通機関であるバスも1時間に1本しかない上、所要時間は約2時間かかります。高齢化や郊外への大型店舗の出店、モータリゼーションの浸透などの影響もあり、中心市街地は空洞化。普段は「歩いている人をほとんど見かけない」ほど、寂しい商店街になっていました。

2015年の『リノベーションスクール@鹿屋』は、スクール史上最南端かつ最僻地(※当時)であると同時に、元祖の『リノベーションスクール@北九州』に続き九州2番目の開催地となりました。鹿屋が全国に広がり始めたスクールの波をいち早くキャッチできたのは、「このままじゃヤバイ」と感じている人が多かったからなのかもしれません。まさにピンチはチャンス、最僻地は最先端!なのです。


大隅家守舎ができるまでのストーリー

STEP 01 ここからすべてが始まった―BARAIROフェスティバル

デザインマーケットの成功

地元の有志による手づくりのイベントとしてスタートし、県内外から2万人弱の人を集めるまでに成長した『BARAIROフェスティバルかのや』。



リノベーションまちづくりの種は、すでに8年前に蒔かれていました。すべての始まりは2008年、鹿屋で初めて開催されたデザインマーケット。潤沢な予算があったわけでも、行政の後押しがあったわけでもありません。東京からUターンして建築事務所を開いた川畠さんを中心に、「鹿屋にデザイン文化を」と願う地元の人たちの手づくりで始まったこのイベント。ふたを開けてみると、主催者自身が驚くほどの大盛況となりました。

「自分たちの価値観に共鳴してくれる人たちが、こんなに鹿屋にいたなんて!」やがてこのイベントは空き家・空き店舗を会場として活用し、商店街全体を使った形へと発展していきます。そしてデザインマーケットに加え、フード、音楽、トークセッションなど、さまざまなイベント盛りだくさんのまちのお祭り『BARAIROフェスティバルかのや』へと発展していきました。

リノベーションスクール開催直後の2015年、第5回を最後にBARAIROフェスティバルは幕を閉じました。それは、鹿屋が「次へ進む」ため。空港からバスで2時間、電車の通っていないまちに1万8千人を集客するフェスティバルの成功。それが、まちの人たちの意識を変え、まちを変えていったのです。


STEP 02 リノベーションスクールの開催

リアリティある3つの提案。
見えてきた、鹿屋の未来

リノベーションスクール@鹿屋でまちをリサーチする様子。『京町ベーカリー』は京町のスナックを改装してベーカリーとして生まれ変わらせ、通り全体を賑わせようとする意欲的な提案。


リノベーションスクール@鹿屋では3ユニット計39人が3日間にわたり、北田・大手町商店街の空き家・空き店舗を対象案件として事業プランの提案に取り組みました。まちのランドマークでもある老舗百貨店の空きフロア。かなり古びてはいるけれど、商店街に面した庭を持つ民家。かつて「京町」と呼ばれた昭和の薫り漂うスナック街。いずれもエリアへの波及力が期待できる物件です。

そして、最終プレゼンテーション。そこでは150人もの観衆の熱気の中、『水神ラーメン』『京町ベーカリー』『エックスゲート』といった、実現性の高いプランが提案されました。

『京町ベーカリー』は受講生たちがリサーチ中、「これから独立してパン屋さんを始めたい」というUターンのご夫婦と出会ったことから、一気に現実的に。一見すると偶然のようにも思えますが、こうした「奇跡」を引き寄せられるのは自らまちにダイブし、変化のきざしを見つけるセンスが研ぎ澄まされてこそ。現在3つのプランすべてが事業化を目指し、動き始めています。


STEP 03 事業化を目指す

物語のあるコンセプトに拍手喝采!
マルシェでも400杯が完売

最終プレゼンテーションでも大好評を博した水神ラーメン。人々の生活にとって無くてはならない湧き水と地域の食材を活かしたラーメンは、イベントで400杯を完売。


また『水神ラーメン』は、実際に試作品のラーメンをふるまう演出で、観客の心をガッツリ掴みました。実は、大隅半島は名水に恵まれた土地で、豊かな地下水が北田商店街のあちこちにわき水として溢れ出しているのです。生活空間の中にあるわき水は、地元の人たちに日々利用されるとともに「水神様」として大切にされてきました。

さらに鹿屋を含む大隅半島は、温暖な気候に育まれた農産物・畜産物の宝庫。これら地元の食材と「水」を一杯のどんぶりの中で結びつけ、この土地に脈々と受け継がれてきた物語とともに味わう『水神ラーメン』。これは鹿屋出身の受講生で、現在は東京・豊島区で飲食業を営む馬場祐介さんなくしては生まれなかったコンセプトでした。

水神ラーメンは、最終回となった第8回BARAIROフェスティバルにおいて生産者と生活者をつなぐイベント『GOOD MORNING MARKET』でトライアル販売され、なんと400杯を完売!「体に優しい素材で、子どもからお年寄りまで毎日食べられるラーメン」と新たなコミュニティ拠点の誕生を目指して、事業化を目指している真っ最中です。


STEP 04 家守会社の発足

豊かな自然と地域文化を味方につける。
「大隅家守舎」が誕生

大隅家守舎の4人。設立以前からまちを変えていく原動力となる場として人々をつなぐトークイベント&交流パーティ『KATAGGA』などを開催してきた。大隅の豊かな自然が味方!


スクールと前後して、川畠さんたちはトークイベント&交流パーティ『KATAGGA(カタッガ=鹿児島弁で“語ろうぜ!”の意味)』をスタート。スクール終了後も受講生やまちの人たち同士がつながり、まちの変化を育てていく仕掛けを続けています。この継続力こそが、これからの鹿屋をつくるのでしょう。

そして、ついに鹿屋初の家守会社が誕生します。その名も『大隅家守舎』。鹿屋のある大隅半島から名前をとった社名は、これまでの家守会社にはないスケール感を持っています。「スモールエリア」を大事にするリノベーションまちづくりと、大隅半島の雄大な自然と環境資源、豊かな地域文化を結びつける。個性的な家守会社の誕生でした。

メンバーは4人。建築家である川畠さん、福祉施設を経営する大山真司さん、飲食業の馬場さん、地元でホテルや建設業、不動産等さまざまな事業を手がける小林省三さん。川畠さん、大山さん、小林さんはBARAIROフェスティバルを立ち上げ、まちの変化を推進してきた中心人物でもあります。


STEP 05 地域の魅力を再発掘するマーケットの開催

リノベーションまちづくり最南端のメッカへ

2015年9月から始動する『食と暮らしのマルクト@おおすみ』では新たな地域リソースやプレーヤーの発掘も期待できる。以前からイベントを仕掛けてきた飲食街「京町」に新たなお店を集中的につくる計画など、鹿屋の日常が楽しくなるアイディアを構想中。


大隅家守舎が第一弾事業として手がけるのは、『食と暮らしのマルクト@おおすみ』。「マルクト」はドイツ語で“市場“。2015年9月27日(日)から北田商店街で、月1回開催される定期市です。BARAIROフェスティバル、デザインマーケット、GOOD MORNING MARKETの経験とネットワークを活かし、大隅こだわりの食材や飲食、手仕事のお店やつくり手を集め、大隅の新たな魅力を発掘していく予定です。ゆくゆくは出店者がまちの空き家でお店を始めていく足がかりに、という狙いもあります。

さらに今年12月、リノベスクールから生まれた『京町ベーカリー』がオープン予定。京町は川畠さんが『ぶらり京町横丁』というはしご酒イベントを仕掛けてきた通りでもありますが、普段からにぎわう場所ではありません。そこでベーカリーを応援し「勝手に通りを使い倒す」べく、大隅家守舎がこの通りで新たな飲食店やゲストハウスを始める構想も。

「鹿屋、大隅のファンを増やすことが僕らの役割。これまではイベントのたびに盛り上がりはしても、“日常”がなかなか変わっていかないという課題がありました。これからは日常的に人がまちを訪れたり、クリエイターなど面白い人が移住してきたり、埋もれている人材が発掘できたりするような流れをつくりたい。ちゃんと稼げる面白い場所をつくれば、狭い街だけに目立つので、波及効果は高いと思います」

おおらかな自然と人の魅力に出会えるまち・鹿屋。そこには、これまで見過ごされてきた「豊かさ」を再発見・再編集しながら、ダイナミックに生まれ変わりつつあるまちの姿がありました。鹿屋を見ずしてリノベーションまちづくりを語るなかれ!「最先端の地」で新たなムーブメントを起こし続ける鹿屋から、これからも目が離せません。

(Writer いしがみなつき)

まちづくり会社 大隅家守舎
住所 鹿児島県鹿屋市寿3-6-6(エンジニアリング開発内)
URL https://www.facebook.com/marktohsumi
運営 株式会社大隅家守舎