北九州を味わう宿づくり、旦過市場からはじまります | ホステル&ダイニング/Tanga Table 福岡県北九州市(2016年掲載事例記事)
Tanga Tableってどんなところ?
「旅先では、その土地の食をあじわいたい」。そんな人におすすめの宿が、今年9月にオープンします。その名も Hostel and Dining“Tanga Table”(タンガテーブル)。名前の由来は、神嶽(かんたけ)川向かいにある「旦過(たんが)市場」。鮮魚・地野菜・精肉から、郷土料理の“ぬかだき”など200店以上がひしめきあう北九州の台所です。
7時から24時まで営業するダイニング(食堂)では、旦過市場で仕入れた食材を気軽にあじわえます。そしてホステルにはキッチンを設置。ゲストは、旦過市場でお店の人とワイワイ話しながら食材を選び、Tanga Tableで調理できます。ご飯をシェアしたり、旅仲間がうまれるかもしれません。料理の腕に関係なく楽しめるようにまちあるきマップ&レシピも準備中です。
人口約100万人の福岡県北九州市にある宿は、宿泊客も順調に増えつつあるにも関わらず、ビジネスホテルが大半です。訪れた人から「北九州らしい宿に泊まりたい!」と言われることもしばしば。無いならば、いっそつくってしまおう!こうして、旦過テーブルは始まりました。
Tanga Tableができるまでのストーリー
STEP 01 こんな場所からはじまった
広すぎて借り手のつかない雑居ビルの4階
新幹線の小倉駅から徒歩15分。旦過市場の川向かいにホラヤビルはあります。この4階、180坪という広さゆえになかなか借り手が見つからずにいた部分が、2014年2月のリノベーションスクールの対象物件になります。
住 宅、オフィス、物販店舗、サービス業… 思いつく限りの視点で検討しました。住宅にするには、投資費用がかかりすぎました。オフィスにしても北九州はすで に飽和状態。入居は見込めませんでした。また、4階という立地はふらっと訪れる人が少なく、物販にも不向きと思われました。
STEP 02 Tanga Tableのプラン
市場の川向いで4階という立地をいかす“宿泊施設”
実は、北九州市の宿泊需要は高まりつつあります。その一つが、今なお残る明治・大正の建築や近代化を支えた工場群という都市景観です。この、ありと あらゆるロケーションを活かして、多くの映画やTVドラマの撮影が行われています。最近では「海猿」や「おっぱいバレー」などのロケ地にもなりました。な んと、一年のうち204日、2日に1日は北九州のどこかで撮影されている計算です。一本の撮影に70人近くの撮影クルーが訪れるので、単純計算しても約 14,000泊の宿泊需要が生まれていました。
けれど、一つ足りないことが。順調に増える宿泊数ですが、受けいえれる宿の大半がビジネスホ テルです。北九州市には泊まれる宿はあるけれど、泊まりたくなる宿がありませんでした。訪れた人から「北九州らしい宿に泊まりたい!」と言われることもし ばしば。北九州らしさってなんだろう?と考えたときに目に入ったのが、川向いにある旦過市場でした。
東京、鳥取など全国から集まったユニッ トメンバーがはじめて歩くと、北九州ならではの食材、そして人なつこい雰囲気に感動。北九州にあふれる「おいしい」を体験できる宿があったらいいな、と思 いました。そうして、地域をあじわう『Tanga Table』を、ビルのオーナーさんに提案しました。
フロアを丸ごとリノベーションする提案に、オーナーのホラヤさんの反応も上々でした。
STEP 03 ビジネスプラン
約1年半の時間をかけて、
事業化を進める
リノベーション・スクールでのプレゼン後、ユニットマスターだった吉里裕也さん・青木純さんを中心に、事業化に向けたプレワークが進められました。 なかでも時間を要したのは、物件の契約確認でした。建設時の昔は適法だった建物が、その後の改正によって今の法を満たさない「既存不適格」になってしまっ ていることが判明。どうすれば適法にできるのか、市役所との打ち合わせを重ねていきました。
また、地域との関係をしっかり築くことも心がけました。早い段階から繰り返し魚町や旦過市場を訪ね歩きました。こうして築いた関係は、後々の資金調達にもつながりました。
プロジェクトに要する費用は、約6,000万円。リノベーションスクールの課題物件の中でも、大きなものでした。
銀 行融資を打診するものの、難航。そこで北九州家守舎のメンバーが100万円ずつ出資します。さらに北九州の名士たちから600万円の出資をいただくこと に。さらにプロジェクトメンバーが100万円ずつ出資。ここまでで2,100万円という資本金が集まりました。最後に1,500万円を出資したのが MINTO機構です。メンバーたちの強い思いと必ず成功させるという思いを受けて、民間の金融機関から残りの2,500万円近くの借り入れが決定。資金調 達が実現したのです。
STEP 04 オープン準備
ユニットメンバーも交えた
9月グランドオープン
事業化にあたっては、リノベーションスクールのユニットメンバーが関わっています。ロゴデザインからWEBページ構成までクリエイティブディレクターを務めたのは、萩原菫(すみれ)さん。
男性向けというイメージの強いホステルですが、女性の方にこそ訪れてほしいと思った菫さん。北九州の食を「あまい」「すっぱい」「しょっぱい」「にがい」「しぶい」「辛い」という6つの味にちなんで紹介を行うことにしました。
8月20~23日には「リノベスクール番外編 つくる!Tanga Table!」と題して、グランドオープンに向けた最終仕上げのタイル貼りを、ワークショップ形式で開催します。リノベーションスクールのユニットメンバーたちも参加予定です。
STEP 05 大切にしたいこと
訪れる人にとっても、
働く人にとっても、ここがはじまり
“番頭”として宿の顔を務めるのは、北九州出身の25歳、西方俊宏さんです。熊本県の黒川温泉で3年間働いた後、もっとお客さんとダイレクトに関わりたいと思い転職。実はゲストハウス泊が苦手だそう。そんな西方さんだからこそ、できるもてなしがあるかもしれません。
地元が大好きというわけでもなかったけれど、Tanga Tableで働きはじめて見方が変わりつつあるそう。
「旦過市場を訪れる度に、おせっかいなおばちゃんにたじたじ。あらためて北九州の人と出会い、まちのあたたかみを感じています」
ゲストはもちろんのこと、働く人、長年このまちに住んできた人、いまは離れている人も、北九州の魅力を再発見する場になりそう。一緒に働く仲間も募集しています。気になった人はサイトをどうぞ。
(Writer 大越元)