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入居者の抱える事情ー刑余者編

こんにちは、Rennovater株式会社の中田と申します。当社は、「すべての人に、こころ休まる住まいを」をミッションに、住宅を確保することが難しい人々に住まいを提供することで、家を起点としてより前向きで豊かな人生を送ってもらえるようになることを目指しています。Noteも3回目となりました。今回は入居者さんの話が出来ればと思います。


「住まいを確保することが難しい人々」とは?

当社は、住宅を確保することが難しい人々に住まいを提供しており、創業以降、200名を超える方々に住まい提供をサポートしてきました。「住まいを確保することが難しい人々」といえば、単身高齢者や生活保護世帯、外国人などが思い浮かびやすいのではないでしょうか。

生活保護世帯

例えば、生活保護世帯。そもそも、生活保護制度とは、憲法25条1項「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」を保障するための制度で、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行うものです。

自治体ごとに定める「生活最低費」に満たないなど、保護の要件を満たす世帯に対して、国および地方自治体から保護費が支給されます。この生活最低費は自治体により異なりますが、およそ10-13万円。今年の5月時点で、生活保護世帯は165万世帯(厚生労働省「被保護者調査」より)。日本の総世帯数は約5,583万(総務省統計局「令和2年国勢調査」より)のため、2.96%が生活保護を受給していることになります。

入居者はより複雑かつ様々な事情を抱えている

当社では、生活保護を理由に住まいの提供を断ることはありません。そして実は、入居者のうち、生活保護世帯が占める割合はそこまで多くなく、もっと生活が不安定な人々や様々な事情を抱える人々にも住まいを提供しています。生活保護制度の基準は超えているものの、月々の収入が極端に不安定な日雇い労働を続けている方。離婚して無収入だが、生活立て直しのため新たな住まいを探されている方など。一般的な仲介手数料や火災保険などの初期費用は不要、日割り家賃のみでご入居いただいています。事業を通じて、「すべての人に、こころ休まる住まいを」得られる社会を実現することを目指しています。

刑余者とその住まいの問題

住まいの確保が難しい人々は、本当に多様な事情を抱えていますが、「刑余者」もその一例です。「刑余者」とは、刑務所や拘置所の出所者のことです。当社は、万引きをして窃盗罪で捕まった方などの「刑余者」にも住まいを提供しています。また、「刑余者」ではないものの、警察から急に情報提供の依頼が来るような方もいらっしゃいます。そういった経験もあり、先日、刑余者の居住支援の勉強会に参加して、詳細な刑事司法制度の仕組みや出所後の支援体制などを学んできました。

刑務所や少年院を釈放後、行き場がないなどすぐに自立できない人は「更生保護施設」で宿泊場所や食事などの生活基盤の援助や生活指導を受け、自立までの保護を受けます。出所者はここで自立に向けた準備をしながら、就労して一人暮らしができるまでの資金を貯めます。このような更生保護施設は全国で100箇所程度あり、当社本社のある京都には3つの施設があります。出所者は、一人暮らしができるだけの資金を貯めた後、新たな住まいを探すことになります。

ただ、2022年の矯正統計年報によれば、受刑者のうち、約14%が高齢者であったり、約17%が精神障害等を抱える、また、逮捕時に約17%が住所不定であるなど、「生きづらさ」を抱えており、福祉の支援を必要とする出所者もいます。こうした出所者を支援するのが、厚生労働省管轄の「地域定着支援センター」で、福祉の支援を必要とする高齢又は障害のある出所者が地域に暮らせるように支援しています。具体的には、他の福祉関係者と調整しながら、刑務所に服役中のときから社会に出た後の就労や住まいを調整されています。

しかし、刑余者の住まい探しは、かなり難しい現状にあります。というのも、(実際に刑余者を受け入れてきた当社も経験したのですが)、大家にとっては、刑余者が再度犯罪を起こして逮捕されると、電話等の連絡が突然止まり、無断退去の状態になってしまうからです。警察からの連絡もないことが多いです。大家としては、残された荷物をどうするかなどの対処が必要になります。そのため、形余者は敬遠されてしまう傾向にあります。
また、最近では、逮捕のニュースで実名報道されてしまうと、デジタルタトゥーとして残るため、最初から断られてしまうことも多いです。

その一方で、受刑者は減っているものの再犯者率は48.6%と約半数を占め、上昇傾向にあります(法務省「令和4年版犯罪白書」より)。上述の生きづらさを抱える出所者の存在を考えると、再犯防止の観点でも刑余者の住まいの確保は重要な問題です。勉強会では、飲酒をして窃盗するなどで何十回も刑務所に服役してしまう方のケースを伺ったのですが、その背景には、金がない、家がない、人との繋がりがない(=寂しい)ので、それらを紛らわせるために飲酒して犯罪に至ってしまうということがありました。

今後に向けて

私自身、勉強会に参加してみて、問題の所在はどこだろう、必要な支援はなんだろう、そもそもこの人は「支援」を求めているのだろうか、など考え込んでしまいました。当社は事業として生活の基盤となる住まいを提供しているものの、その後の地域への定着等の支援は更なる学びが必要だと考えています。今はモヤっとした気持ちも含め共有するだけになってしまいましたが、このような事業を通じて得た、あまり知られていない(と思われる)ことや学びをシェアすることで、社会の断片として少しでも光を当てることが出来ればと願います。

今後も、引き続き様々な事情を抱える入居者さんと出会うことで知った住まいの問題も掲載していきたいと思います。その他、入居者さんへのインタビュー等も企画していますので、今後も、ぜひ、フォロー・応援のほど、宜しくお願いいたします!

https://rennovater.co.jp/