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本当に面白い「ユニコーンオーバーロード」と難易度



要約

「ユニコーンオーバーロード」は傑作。
インターネットは悪。難易度NORMALは罠。


戦術

本作の戦闘シーンは本格的なウォーシミュレーションゲームには程遠く、一般的なSRPGと比べてもかなり大胆な内容。接敵してからけっこう遠くの味方と位置を入れ替えられるとか割と気軽にMAP兵器を放てるとか、スタミナで戦闘回数が制限されているかと思えばアイテムでどうにでもなったりとか、かなりずうずうしいシステムが多い。
しかし敵の配置や時間制限はなかなかシビアであり、それらのシステムを効率よく駆使しながら進めなければならない。テキパキと敵を処理し、その度にバシバシと心地よいエフェクトと効果音が発生するのが爽快で、シミュレーションゲーム的な思考より段取りの楽しさが強い。

リアルタイム性&マス目廃止ゆえに操作量が少ないのも良いところ。古今のSRPGはユニットを順番に敵の攻撃範囲外に移動させる作業が面倒すぎて次のステージを開始するにも億劫さがあったが、本作は大きなマップでもクリアに30分かからず、かつそのマップの「段取り」を把握できればやり直しも抵抗はない。ゲームのサイクルのテンポが良く、とにかく気持ちよさに最適化されている。


戦略

実は本作で最も面白い部分は部隊編成とキャラビルドである。前列と後列それぞれ最大3人、計5人までの部隊をいくつか編制して戦いに挑むのだが、クラスの種類だけで60近く(上級職も含むので実際には40といったところ)あり、それぞれが何かしらの効果を持ったスキルを複数持ち、把握できないほどの装備があり、行動の優先順位と条件を個別に設定できる。既にブースターパックが出ているTCGのような物量だ。

その過程での「気づき」と試行錯誤が最近ゲームで味わえていなかった楽しさだ。ソードマスターは紙装甲なので回復するより死んでから復活させた方が効率よいとか、エルフフェンサーのデバフ解除は自分でかけたデバフでも有効だとか、それらを戦術に組み込んでみても思ったより役に立たないとか、成功も失敗もどうでもいいことも、試してみるのが楽しい。ゲームをしていない時も編成についてずっと考えてしまうほどに。

改めて本作がシングルプレイの買い切り作品で良かったと思う。もし対人戦がメインであれば攻略wikiで最強キャラランクとおすすめ編成を見なければ負け続けるだけだし、ソーシャルゲームであれば試行錯誤に時間とリアルマネーがかかる。インターネットを遮断することに損のないゲームだからこそ、自分での発見に心を躍らせることができる。

もちろん、本作を攻略wikiやYoutubeの「序盤おすすめ最強編成」みたいな動画を見てなぞるように遊んでもいい。しかしそれは世界のどこかの自然遺産でチンパンジーが糞尿を垂れ流していても人類に咎める権利はない、みたいな話だ。


難易度

本作を遊ぶ上で懸念なのが難易度選択だ。体験版の時点では「CASUAL」「TACTICAL」「EXPERT」の三つの難易度があり、自分はどのゲームでもとりあえず真ん中を選ぶので体験版ではTACTICALを選択し、製品版では2度目なのでEXPERTを選択した。自分にとってはEXPERTが丁度いい難易度で、上手い人にとってはこれでもやや物足りない程度だろう。

しかし、発売日当日のいわゆるday1パッチで「CASUAL」は「NORMAL」に名前が変更され、新たな「CASUAL」はさらなる低難易度となった。すなわちプレイヤーをより低い難易度に誘導するように変更されたのだ。

ちょっと納得しづらいアップデートだ。例えば高級レストランが突然「今までウェルダンと呼んでいた肉の焼き加減を『普通』に変更します」と言い出したら、普通とは一体何なんだという話になる。

が、わからなくもない。というか、わからざるを得ない。TACTICALでも「初見クリア」か「準備せず突撃」のどちらかを諦めなければ勝てない難易度だった。ゲームを売る立場としてそれは難易度が高すぎるということだろう。いずれにせよこの辺りのマーケティングはプロが判断しているのだから我々素人が口を挟む話ではない。

しかし難易度NORMAL、すなわち旧CASUALはあまりに難易度が低すぎて、本作の肝である部隊編成と作戦設定の沼に到達できない可能性がある。苦戦しなければ考える必要も無いのだから。体験版を遊んでいなければ自分もNORMALを選んでいたはずで、他人事ではない。

そもそも自分は難易度設定が嫌いだ。開発者が思う最適な難易度を遊ばせて欲しいし、勝てない時に下げるという選択肢があるだけで不快になる。「自分に合った難易度で遊んでほしい」などというセールストークはやめて、はっきりとどの難易度で遊んで欲しいのか明言すべきだと思う。


そういうわけでゲームを遊ぶだけの立場である自分は「ユニコーンオーバーロードをEXPERTで遊ばない奴はチンパンジー」、そう提唱していきたいと思います。

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