断線

百均で十分だと思っていた。どうせすぐ断線するんだから。いい音質なんてあたしには似合わないし。ただの一本も大切にできないならどうせと、ポケットにぐちゃぐちゃにしまった。そう思ってから2年経つ。気付いたら鞄の底で4つ絡まっているのが見つかる時もある。もう慣れた。人には見せられないと言いながら、見られても平気なこと。その図太さこそ、あたしの小さくて美しかったはずの煌めきが2年でくすんだあかし。尚更100均が断線してもなんとも思わなくなっていく。だけど残念なことに、値段と品質には相関があるみたい。レンタルビデオ屋の閉店セールでつい、他のやつに手を出してしまった。妙に
艶かしくてチャチな千円ぐらいのやつは、10倍の音質とはいかなくともなかなかキレイな音を放つ。でも大丈夫、と、重低音は負けてないよ、と百均を慰めてみる。あなたにはもう戻れないという心の声には知らんぷりする。そして高かったやつの方を捨てる。そんな風にしてやってきたから、頑固だって言われるんだ。でもそれが、かろうじてピュアなあたしの瞳をこれ以上濁らせない技なの。安いものでも満足できる。そんな安い女でいたいのです。楽な道を行くために。

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