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アークホーン+避雷器による落雷対策について解説します。

 以前、紹介した「大規模停電の記録」の中から、本日は送電線の雷対策であるアークホーンについて記載します。電験の中でも頻繁に登場するアークホーン。これを読んで電験の復習としても活用頂ければと思います。

 アークホーンは送電線の碍子の両端に設置されている角(ホーン)状の電極です。電極の間にギャップを設けてあります。落雷等の送電線の異常電圧から碍子を保護する目的で、ギャップ間でアーク放電をあえて起こすことで碍子の破損を防止します。

 送電線路に落雷があり、送電線から鉄塔へ放電することをフラッシオーバーと呼びますが、架空地線への落雷により鉄塔の電位が上昇して、鉄塔から送電線へ放電することを逆フラッシオーバーと呼びます。

 落雷の電圧は1億ボルト以上と言われており、これを絶縁することは不可能です。アークホーンがないと碍子に直接この電圧がかかり、碍子の沿面で放電します。この放電エネルギーは凄まじいので簡単に碍子を破損してしまいます。

 碍子を保護するアークホーンですが、放電をするということは、電線路にとっては地絡状態となります。この時アークホーン間ではアーク放電が発生し、電圧がある限り放電が継続してしまいますので、電路の遮断器が一度解放し、アークを消すために電圧をゼロとし、一定時間後に遮断器が投入し送電が継続されます。これを再閉路と言います。

 しかし、再閉路の時間でアークが除去できれば、問題なく送電を継続しますが、落雷のエネルギーによっては、再閉路ではアークを除去しきれず、再閉路失敗し、送電線トリップすることもあります。これが2回線で同時に発生すると大規模停電となってしまいます。

 本書で述べられている2016年の中部エリアでの大停電は275kV送電線が落雷により同時トリップしたことに起因する事象です。

 再閉路失敗による停電防止として、アークホーンに酸化亜鉛素子の避雷器を設置します。酸化亜鉛素子は、ある制限電圧異常になると抵抗値が低くなり電流を流します。逆に制限電圧以下では高抵抗体となり絶縁を維持します。

 避雷器があると、落雷時に制限電圧を超えて放電があっても、放電により制限電圧以下に下がると高抵抗により、自動的に放電が遮断されます。送電線の再閉路を行わずに送電を継続できるのです。

 アークホーンに筒状の避雷器がついている送電線は、落雷時に大規模停電の可能性がある重要線路を意味することになります。

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