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ネカマした1年を振り返る

実は私、男でした。

まず自己紹介を載せておきます。

すみません。薄々感づいていられた方もいると思います。まず、今になって男であることを明かしたのは、

・ もともと 1 年を目安にアカウントを作成した
・ 当初の目的を達成した

この 2 つの理由からです。また新しく発信したい内容があり、それを発信するためには少し素性を明かす必要が出てきたからというのも少しあります。これについては最後の方に書こうと思います。

この note ではネカマした約 1 年間を振り返って、炎上して感じたことや、「女性だから」と特別扱いされ続けて思ったことを書きたいと思います。

基本的に時系列順に書いていこうと思うので、このツイートをしたときはこんな風に思っていたんだ程度に楽しんでもらえたら嬉しいです。

本文に入る前に、レナ@理物のツイートを純粋に楽しんでくれていた方を騙すような形になってしまい、本当にすみません。これからも投稿頻度は落ちますが Twitter は続けていくので、男性であることを押さえたうえで楽しんでもらえたらなと思います。


アカウント作成の経緯

これもずっと黙っていたことなんですが、実は昨年度まで高専に在籍していました。

高専って何?

高専を知らない方のために少し説明しておくと、中学校を卒業した段階で入学して 5 年間、体系的に機械工学や建築学、電気工学など工学系の分野を学ぶことができる学校のことです。詳しくは高専で検索してみてください。

それで昨年の夏季に編入試験があり、今年度から地方の物理学科に編入しました。高専 5 年生は大学だと 2 年生にあたるので編入試験にパスすると 3 年生になるという感じです。

編入試験に無事合格して「来年度からは物理学科で物理学を楽しむぞ~!」と意気込みました。意気込んだところまではよかったのですが、何から手を付ければよいか分からず、周りに物理学に精通している人もいなかったので Twitter でアカウントを作成することにしました。

作成するにあたって、フォロワーのいない男性が「物理の勉強したいんだけど、何から始めたらいい?」と言ったところでレスポンスがないのは明らかだったので、女性っぽいアカウントなら誰かしら反応をくれるだろう、ということで作成したアカウントがレナ@理物です。

ということで

・ 編入先の大学生活が始まるまでの間、物理の界隈を覗いてみる

これがアカウントを作成した理由です。

前々からネカマをしていた友人からノウハウを教わって、アイコンを作成して、質問箱も並行して始めました。


始めるにあたって

女性としてアカウントを運用する上で

特定の人物と親しくなること

これは避けました。

仲良くなった女性が実は男性だった。
もし、私に女性として好意を抱いてくれたとして、それが男性だったならトラウマものです。想像もしたくありません。そのような理由で親しい人は作りませんでした。

ただ、TL を毎日見ていると「この人はこの分野が好きで勉強しているんだな」と徐々にわかってきて価値観も似たような人が大勢いたのでいつか仲良くなれたらなとは思っていました。

まず、プロフィールに物理系のことが書かれていて、いいね欄に最近のツイートがある人を 1 日に何人かフォローしていきました。それで、当時「物理学といえば量子力学」と漠然と思っていたので以下のようにツイートしました。

これまで 100 いいね なんてもらったことがなかったのでかなり驚きました。

そこからは日常的なツイートをぽつぽつとしていましたが、本来の目的とは違うな~と感じ「伸びて、かつ物理系の方々が興味を持ってくれるようなツイートをしよう!」と思うようになりました。
それで実際にツイートした内容はこんな感じです。

物理学を学んでいる方が親戚から理解を得られないことはやっぱりあるあるなようで、沢山のコメントが寄せられました。

あと、皆さん砂川理論電磁気学が大好きですね。

ツイッターを開始して 1 か月程度で質問箱に沢山の質問や DM でインターンや共同研究のお誘いがくるようになりました。

なかでも印象的だったのが、質問箱で届いた「相対論を教えてあげたいのでいつでも聞いてください」という旨のメッセージです。

それに対して「ぜひ!」とツイートで回答したところ、DM で質問された方からメッセージが届きました。それでオススメの教材を聞くと凄く丁寧に教えてもらえて「こんなに親切な方がいるんだ!」と嬉しくなったことを覚えています。

ただ「いつでも質問してくださいね」と言われたものの、相対論を学ぶ前に電磁気学や古典力学をしっかり勉強しないといけないなと感じ相対論は結局本腰をいれて勉強することはできませんでした。

始めて 1 か月ほどでツイートが伸び始めて

レナ@理物の中の人ってどんな方なんだろう?
このアカウント、胡散臭すぎる
レナさん、定期的にバズっててすごい

と TL で見かけるようになって、反応を見るのが少し楽しくなっていきました。

この note では「バズるツイートの方法」「フォロワーを獲得する方法」など再現性のない内容は書きません。そもそもフォロワー 2000 人ちょいのアカウントがたまたま伸びたツイートを少し投稿できただけであって、その内容を発信して意義があるかと言われれば、たぶんないですからね。


初めての炎上、質問箱はところにより大荒れ

バズを狙ったツイートをしているうちに、何度か賛否両論あるツイートをして炎上しました。そのツイートを紹介しておきます。

普段からよく思っていたことで、私自身から見ても偏った考え方だとは感じていたのでやはり共感と反感、両方の反応がありました。

引用 RT で物申されたり、直接リプライで偏屈な奴だと言われたりしました。また、質問箱ではツイートと直接関係のない私への攻撃のようなメッセージがたくさん届きました。

炎上してみて感じたことは引用 RT って機能は要りませんね。私に対して何か意見を出すのであれば、リプライで事足りていて、引用 RT をしてくる人というのは総じて「このツイートに正論をかましてやった」と自分のフォロワーに対して発信しているような気がしました。これは私自身、引用 RT をして物申す系の発言をしたことがあったので、気を付けないとなと思いました。

また自分語りも多く、このツイートを見て、よくこんな返答が思い浮かぶなといった見当違いの引用 RT も非常に多かったです。毒を吐くのはこのへんにして...

質問箱に誹謗中傷が届いたときはかなり恐怖を感じました。不特定多数の人の攻撃の矛先が自分に向いている、経験したことがなかったのでしばらくは精神的に疲れましたね。

最終的に何度も炎上するうちに質問箱も荒れて精神的によくないなと思ったので、質問箱は始めて 2 カ月ほどで辞めました。

質問箱が荒れていて困っている人がいたら伝えたいことがあって、以下のツイート内容にあるように、不特定多数から誹謗中傷されていると思っていたら、実は 1 人から大量にメッセージが送られていた、ということもあるので「ご苦労なことで」くらいに思っておくといいかもしれません。


余談1 勉強の進度に対する劣等感

このアカウントを運用するようになってから、大学学部レベル、あるいはそれ以上のことを中学、高校の段階で学んでいる方や、明らかに私よりも進んだ内容を勉強している同年代の存在を何度も観測しました。やはり感じたくなくても劣等感は感じてしまうものですね。

他人の勉強の進度とは関係なく、自らが継続して学び続けること

このことが大切だというのは嫌というほど聞いていて文面では理解しています。ただ、劣等感を感じず、ひたすら自分の学びたいことを続けるというのは難しいことだなと思います。

最近は、ようやくこのことを文面だけではなく経験を持って理解してきたように感じます。理解したといっても、そのような存在がいることを妬ましく思っていても何も変わらないし、劣等感を感じたところで精神衛生上よろしくない。だから考えても仕方ないし、自分が楽しければそれでいいやと、半ば開き直りのような形です。心から学問に対して向き合って、他人の進度とは関係なく楽しめるようになりたいものです。


大学名を伏せると叩かれる

フォロワーが徐々に増えていくにつれ

そんなにえらそうにツイートしてて、大学名非公開って相当頭悪い大学なんだ?
なんで大学名隠してるの?
旧帝大?
早く答えないと学歴コンプ扱いするよ

と質問箱で届くようになります。プロフィールに地方国立の物理学科と書いていたので「旧帝大?」とかなりの頻度で質問箱にメッセージが届きました。その返答として私は以下のツイートを投稿しました。

「物理学科は女子の比率が極端に少ないので、匿名だとしても性別という情報だけで特定し得るからに決まってるよね?」

というのは少し間違っていて、正確に言えば

「物理学科は女子の比率が極端に少ないので、大学名と学部学科だけでネカマだということがバレる。あるいはその大学の女性の学生に迷惑をかけることになる」というのが真意です。

正直このツイートをすればもう何も返せなくなるだろうと思っていました。ですが、質問箱にはさらなるメッセージが届きます。

なんで旧帝とか入らなかったんです?
匿名だとしても性別という情報だけで特定し得るから旧帝大行かなかったの?
大学名隠してる理由はわかったけど、なんで旧帝大行かなかった理由は結局なんなの?

びっくりしました。この方たちにとっては、よっぽど旧帝大か否かが大事だったようです。ちなみに私は旧帝大に通っています

正直な話、高専生はセンター試験を受けないし、模試も受けないし、さらに言えば大学の一般入試を経験しません。

そうした理由から、偏差値という概念に触れる機会がまずなく、どこの大学が偏差値的に優れているだとか、世間一般では〇〇大学に行けば高学歴扱いされるだとかいう認識は一切持ち合わせていません。

高専生が編入したい大学を選ぶ際も、

・ 自分のしたい学問は何なのか

・ その大学には興味のある研究室が存在するのか

基本的にこの 2 点で編入先を選んでいます。高専生と言うと、主語が大きすぎるので周りで一緒に編入を目指していた友人 10 名程度はこの 2 点を軸に編入先を考えていた、と訂正しておきます。

私から言えることは、

いつまでも大学名というブランドで人の良し悪しを判断するのではなく、その個人が何を学んできたか、または何を作り上げたかにフォーカスしてほしい

ということです。学校歴ではなく、学習歴で話したいものです。


DMでセクハラ等

ツイートが伸びる度に、どこからともなくセクハラ DM が湧いてきました。エロを全面に押し出したアカウントでもないのにこういった DM が来るのはかなりこわいなと思いました。例えば以下のようなメッセージが送られてきました。

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初めのうちは興味のある分野の話をしていたものの、突然セクハラにあたるメッセージが送られてきたことが何度もありました。

こういったメッセージを赤の他人に送るような人がいることに驚きました。今まではどこか遠い世界のように感じていたけれど、どこにでもいるんだということを認識しました。


余談2 私の本棚

ここまで読んでくれた方は人の本棚を見るのが大好きな方だと思うので、私の本棚を載せておきます。あと、文字がずっと続くと目が疲れますからね。物理系の書籍とアクチュアリーの教材がメインです。「あ!自分もこの本持ってる、いいよね」程度に楽しんでもらえたら幸いです。

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欲しいものリストは公開してもいいのか?

物理系のフォロワーを徐々に獲得していき、DM で質問に対応してくれる方も何人かできてツイッターライフはかなり充実してきました。詰まった個所をツイートすると、多くの方からアドバイスや途中計算をいただき、当初の目的は達成できていたように思えます。

当時の心境を私は以下のように投稿しています。

このツイートをしたところ、空リプで

ネカマして囲われたら手取り足取り勉強教われるじゃん、天才か??

と投稿されている方が何人かいて少しドキッとしました。

そんなこんなで私は毎日ちまちまと物理学を勉強していきました。

それで、物理の勉強を進めていくとある 1 つのことに気づきます。

お金がなく、理学書が買えない

この問題は深刻です。高専の図書館は工学系の書籍が多く蔵書されているものの、理学書はあまり存在しません。ネットに転がっている PDF で初めは勉強していたものの、やはり物理学科に行くからには名著と言われる書籍を読んでみたいものです。

以下のように欲しい理学書リストをツイートしました。

このツイートに加えて、金欠で理学書が買えない旨の愚痴のようなツイートを何件かしたところ、古本にはなるが今は使っていないのでよかったら譲りますよ、と名乗りを上げてくれた方や、欲しいものリストを公開したらどう? 公開してくれたらプレゼントするよ、と DM をくれた方が何人もいました。正直、そんな申し出が来るとは思っていなかったので驚いたとともに嬉しかったです。
しかし、よく考えてみると・・・

女性と性別を偽って、人の善意に付け込んで、贈り物をもらう

これって立派な詐欺では?

ということで気持ちだけ受け取ってバイトを始めることにしました。

真面目に勤労して買う理学書は愛着が湧きますからね。

(ここで男性であることを告白して、その上で支援してくれる方がいたら理学書を買ってもらおうとも考えていてかなり悩みました。実際には行動に移しませんでしたが)

結局その後、編入先の大学付近に引っ越すまでの間、半年間ほど塾でバイトに励みました。社会経験として楽しかったです。学生時代のアルバイトの是非についても何度かツイートを投稿したところ、炎上して自分なりに深く考えたので別の note の記事で投稿できたらなと思っています。

バイト代で購入した当時欲しかった理学書の写真を上げておきます。


このまま院進すべきか?
~社会人博士課程、退職D進という選択肢~

楽しく物理学を勉強していくうちに、これまでは漠然と院進して研究者になると思っていたけれど、本当にそれで良いのだろうか、と思い始めました。

博士課程について調べてみると、

自殺率が高い、30 歳手前まで学生、奨学金という名の借金等々、不安要素が盛り沢山です。けれど、幼い頃から知的好奇心が強く、研究者に対して憧れを抱いていたので不安要素が沢山あるからという理由でその選択を諦めるのも納得いきません。

ある日、学部卒ですぐに院進するという固定概念に囚われているからいけないのでは?と思い、以下のようなツイートを投稿しました。

このツイートに対する反響は大きく、リプライ、引用 RT、DM で 40 名ほどからメッセージをもらいました。

社会人として働きながら博士課程に在籍、海外の大学院に進学、子育てをしながら博士課程に在籍、会社を退職して大学院に進学など様々な選択肢があることを知りました。また大学院生の 1 日の過ごし方を具体的に教えてもらって具体的なイメージを持つことができました。アドバイスをくれた方々、本当にありがとうございました。

私は学部卒でアクチュアリーとして就職して 10 年か、20 年、それ以上かは今はわかりませんが、その時に興味がまだあったらアカデミアに戻ってきたいと思っています。

ここでは深く書きませんが、大学院生の 1 日の過ごし方や、社会人になってから大学院へ進学するという選択肢のような情報は貴重だと思うので、また別の機会にアドバイスをくれた方の許可を取ってから発信出来たらなと思っています。


「女性だから」

このアカウントを約 1 年ほど運用して、主に「女性」として特別扱いされて感じたことをまとめておきます。

2 週間ほど前に以下のツイートを投稿しました。

単に、物理学科に編入して仲良くなった内部生とお茶をして、物理学について楽しそうに語ってくれて、こんなにも物理学を好きな人が同年代にもいるんだ!と現実で感じられて嬉しかったという旨のツイートです。
これに対して以下のような引用 RT がされました。

博士課程まで出て、奨学金や年金が払えるか不安な女性がいた。その人が今では私の妻になったけど「今はホッとした」と言われて「なんで俺が払う前提なの?」と思った。そういう人がいることを知っていてほしい。男とは何とでもなるので。

どう感じましたか?

このような引用 RT が 1 度だけではなく、何度か別のツイートでもされました。にわかには信じがたいですが

女性が勉強をしてどうなるんだ

と本気で考えていて、それを実際に女性(今回の場合、私は男性ですが)に対して発言する人が存在します。これはとても悲しいことだと思います。また、私は「こんなヤバい人もいるんだな~」程度に捉えていただけなのに、半年前に言われたことも鮮明に覚えています。なので、実際に女性の方がある分野に対して熱心に勉強していた時、このようなことを何度も言われるのであれば酷なように感じました。

また、これとは別に善意からくる発言に対しても違和感を覚えました。

例えば

女性で研究者を志望する人は珍しいから応援しています。
女性で物理学を学ばれている方はあまりいないので、これからも頑張ってほしいです。

これは先ほど述べた「女性が勉強してどうなるんだ」という旨のメッセージよりも数をもらいました。比率で言えば、3 : 7 くらいで応援メッセージの方が多い印象です。

初めのうちは嬉しく受け取っていましたが、何度も言われると「女性だから」と前置きされること、特別扱いされることに違和感を覚えました。

確かに理工系に所属する女性が少ないのは事実で、研究者を志望する女性はさらに少ないのが現状だと思います。応援メッセージをくれた方に他意はなく、心からそう思って送ってくれたのでしょう。

それ故、違和感を覚えます。

何度も女性だから、と言われるとかなり疎外感を覚えました。この分野で女性がいるというのは珍しい、と思うことなく、同じ分野を学ぶ者として対等に接することが必要なように感じました。私は実際は男性性なので、ネカマした男性が女性目線で考えると、こう思う、という内容なので、実際は違うかもしれませんが 1 年間を通じて感じたことだったのでこんな意見もあるんだなくらいに受け取ってもらえると嬉しいです。


余談3 最後に、今後について

編入してから、コロナの影響でずっとオンライン授業だったので、内部生と知り合う機会というのはなかなかありませんでした。

最近になって、別のアカウントの方で内部生から「勉強熱心な方だと思ったので、よかったら一緒にゼミしませんか?」と誘われました。それから 3 人の友人ができて今では定期的にオンラインゼミを行っています。

最初の顔合わせで、「〇〇君のアカウントってネカマっぽいよね」と言われ「別のアカウントでネカマしてるよ」と伝えると 1 人から
「もしかしてレナ@理物か~?」と図星を突かれました。
「そうだよ」と伝えると 3 人ともレナ@理物の存在を知っていて、とても面白がってくれました。

レナ@理物の当初の目的は編入するまでの間、物理の界隈を覗いてみる、だったので、もういいかなと思ってこの note を書いています。

これからは高専と理学部とのギャップや、物理学科に転科してよかったことなどを発信していきたいなと思っています。ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。 少しでも面白いなと思えてもらえたなら嬉しいです。



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