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4.Stage1 (25.5km)


朝6時頃起床。
昨晩は雨がざあざあ降っていたのだが、大会支給のテントは雨漏り知らず。これがモロッコだったらえらいことでしたわ。昨日もビバーク移動中に小雨が降っていたので、レース中に天候が崩れるかもしれないけど、雨具は全部預け荷物の中に入れちゃったんだよなぁ。

朝ごはんはお湯を沸かすのが面倒臭かったのでお茶漬けを混入したアルファ米を水で戻し、鯖の塩焼きの缶詰にビーフジャーキーなどをつまむ。密かに昨晩のディナーでもらって来たコーラも飲むが、さすがに早朝のコーラはキッツイな。支度を済ませて8時半にはビバークを出発する。

途中で日本からやって来たSさんを発見したので一緒に歩く。バスが止まることができる道路まで約2.7kmの道のりをフル装備で歩かされる。フィニッシュはビバークだからテントに自分の荷物を置いて行っていい、というわけではない。置いて行った場合はスタッフに捨てられてしまう。

道路脇に着いたところで本日のロードマップ(A4サイズ1枚)が配られる。そして、ゼッケン、クロノタグ、GPSがきちんと着いているかチェックされる。

ロードマップは英仏西対応で、高低差までついてる。つか、その情報はいらんかった、、。いきなり350m一気に登らされるのね。

島内の動物園みたいなバスが3台やって来た。うち1つは2階建バスだった。

バスで30-40分かけてスタート地点に向かう。
どこかの海岸の駐車場に着いたなと思ったら、そこから500mくらい歩かされる。これ、レースそのものよりレース前の移動で地味にダメージくらいそうな気がする。このレースは3ステージで良かったわ。



スタートは11時。

ちょっと早めに着いたので日陰で少し休憩する。地味に暑くて、スタート前から結構水を消費してしまうんだよね。750mlのボトルを2つ持って来ていて、重たいからとそれぞれ500mlしか注いでいなかったので、ちょっとやばいかも。CP1は10km先だけど山登りがある。うーん。


スタート15分くらい前になるとスタート地点に集められる。
いよいよスタートか、と感慨深く、自分の世界に入っていると、横から
「その指どうしたの?それやばいやつやん?」
なんて私の左薬指を見て叫ぶイギリス人選手がいた。
昨日転んじゃってという説明したら、「こういうの前に見たことある、マジでやばいやつだから、メディカルとスタッフ呼んだ方がいい。」とスタッフ呼びに走り出してしまった。マジかー?こんなスタート直前で??

大会スタッフとメディカルがやって来て、私の左薬指を覗き込む。メディカルが「これは病院で診てもらった方がいいかも、骨折しているかもしれない。」とか言い出すではないか。

いやいやいや、スタートまで15分切ってますよ?!今ここで病院に行ったらDNSじゃね?あーだこーだと揉めた挙句に、せめて結婚指輪を外せ、となったのだが、自分で外せるなら昨日の時点でとっくに外していたわ。スタッフが何か持って来て指に塗って指輪を取ろうとするが、もちろん外れない。

更にペンチまで持って来て、指輪を切ろうとするのだが、既に食い込んでいるところにペンチを入れるもんだからマジで痛い。しかも1回では切れないから、3−4回やってようやく切れた。そのタイミングでメディカルがとりあえず指固定だと、中指と一緒に包帯ぐるぐる巻きにした。

スタート3秒前で後方からなんとかスタートすることができた。
砂浜をまずは500mほど走り、そしてがれ場のぼりなんだが、ここが渋滞していて、待ちに待って結局ほぼ最後の方で登ることができた。それからは小石がゴロゴロした道をずっと歩き、徐々にあああの山を越えるのねーって感じで緩やかに登っていく。しかし、暑い、とにかく暑い。こんなに暑かったっけ?

予想以上の暑さでメンタルがやられてきた。
なんでこんなところに来たんだろ?さっきやっぱり病院に行くって言えば良かったとか、考えるのはネガティブなことばかりである。

サハラマラソンの経験上、こういう風に考え出す時は、体感温度が相当行っている時である。事前に調べたら平均気温は25度くらいだったので、舐めていた部分はある。なので、半袖シャツ、短パンでサハラマラソンの時よりも素肌を思いっきり露出していた。(後に大会スタッフが言うにはこの日は40度越えしてたとのこと)

上りの傾斜はさほど厳しくないのだけれども、とにかく暑くて、焦らずゆっくり足を進める。頂上に着いて、ああーここまでやって来たんだなーとやって来た道を振り返る。

頂上からはビーチが見えた。ビーチには白いテントが見えたので、あれがCP1に違いないと思った。よし、あとは下りだけだし、楽勝だ、水もまだ大丈夫。

ところが下って行くとCP1らしきものがだんだん遠ざかっていた。
あれ?もしかして、あれはビーチの監視員のテントかなんかだったの?
肩透かしを食らう。

どこにCP1があるんだよー?ガーミンで計測しているのだが、もうそろそろCP1が見えていい頃なんだよなーとビーチに出て、そこで気がついた。やっぱ頂上から見えていたやつがCP1だったんだ。そこからまっすぐ下らせずに大きく迂回するようなコースどりをしていたのだ(怒)

CP1到着。
なんとパトリックが「お元気ですかー?」と日本語でお出迎え。
全然元気なんかじゃないよー、もうダメかもーと半泣き状態になっていたら、パトリックが大丈夫だよと笑いながらハグしてくれた。

と、スタート前に処置してくれたメディカルの人がいて、時間はあるか?レースを続けるためにきちんと処置しないとね、と捕まってしまう。

なんで怪我してすぐにこなかった?と聞かれたので、大会からのアナウンスでちょっとした怪我は自分で対応しろって、メールにもロードブックにも書いてあったし、大会前のブリーフィングでも言われた。で、これは大したことないと思っていた、と言うと、なんか微妙な顔をされてましたわ。


気を取り直してCP2に向けて出発。

CP1からは10kmほどひらすらビーチを歩く。砂場なので歩きづらいので歩きやすい、なるべく固まった地面を探すと波打ち際が一番良いことがわかったので、波打ち際を歩く。バカンス客とたまにすれ違うのだが、その度に目のやり場に困る。まあ、サングラスかけているから相手からは見えないんだけど。ここはヌーディストビーチなんですか?!って聞きたくなるほど、若い男女が大体真っ裸でくつろいだり、歩いていたりするんだよね。

ビーチの砂地獄が終わり、次はガレ場上り。
このガレ場はサハラマラソンのあのがれ場上りを彷彿させる、つか距離は本家よりも短いけれどもあいつそのものである。さすが、アフリカ大陸のすぐそばにある島だしなー。サハラに似ているみたいなことを言っていたパトリックはあながち間違ってはいないかも、と気を紛らわすように色々考えながら登っていたら、チラッチラッと上の方に白いテントが見えて来た。これはこのガレ場を上り切ったらCP2か!

って、そんな甘くはなかった。
ハーフ砂漠マラソンといえども、パトリック流のドS振りが脈々と引き継がれていると感じた瞬間だった。

CP2がなんか急斜面の大砂丘の頂上にあるんですが??!!

マジでぽきっと心が折れた瞬間だった。
一気に登り切るのはしんどいと見えて、途中でストックに頭をうなだれて動きが止まっている人たちが見える。つか、私もさすがに一気に登る気がしていない。途中、足を止めて数秒ずつ休んで、なんとか攻略。登っている最中は、コースディレクターのフェルナンドへの恨みつらみ悪態を心の中で突きながら、精神バランスを保っていた。


CP2では同じテントサークル内にいるルーマニア人選手が休んでいた。水を補給して、彼女らに挨拶して、そのまま本日のゴールを目指す。ラスト4.5kmなんだがこれが尋常じゃないほど長く感じた。まず、CP2出てからもアップダウンはさほどないものの、足元がずっと砂場なのである。歩きづらいことこの上ない。少しでも地面が固いところがないか探すのだが、なかなか見つからない。

気がついたら背後には同じテントサークルのルーマニア人選手がぴったりとくっついて来てた。1人はちょっと遅れ気味な様子で、先行っていいよ?と促すと、あなたのペースがちょうどいい感じだから引っ張って行ってもらう、とかわけわからんことを言い出した。勘弁してくれよー、と思ってたら、途中でカナダ人選手が休憩していたので、彼のそばに行って一緒に休憩していた。ホッ。

そしてついに見慣れた光景が目の前に。
最後の500mは駆け足でゴールゲートに流れ込む。そこにはパトリックがいてハグ&ビズで出迎えてくれた。「この子、もうダメだってCP1で言っていたのにねー!」なんていじられる。

いやー、ハーフ砂漠マラソンをマジで舐めてかかっていた私に天誅が下る形となりました。明日のロングステージはちゃんと対策練らねば。



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