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サハラマラソン2021 ステージ4(82.5km) 前編

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間違いなく、私の体調不良はネクストレベルへ昇華したようだ.....涙

深夜過ぎから体調が悪くなり、こっそりテントを離れて、嘔吐&下痢である。今までであれば、昼過ぎまでは吐き気はなかったのに、しかも下痢までついてきた....。

どうなってんのよ、私の体は?

朝から倦怠感が半端なく、とにかくスタートギリギリまで横になっていたい...。
よりによって、オーバーナイトステージの日にこんな目にあうとは、、。


って、そうだ。
今日はモロッコ国営テレビ(2M)がびとーさんにインタビューするんだわ。

毎回、いいネタはないかな?(=変わった日本人選手はいないか?)と友人でもあるスポーツジャーナリストのジャマルがテントに遊びに来るんだが、今回はわざわざ私からネタを提供するまでもなかった。


昨日の朝「びとーさんにインタビューしたいからよろしく」って言われてたわ。
で、そのインタビューだが、ジャマルが質問を英語で行い、私がびとーさんに通訳する。びとーさんが言っていることを英訳するのだが、如何せん、びとーさんが話したそばから何言ったか忘れてしまう始末で脳(記憶領域)がマジでやばい.....。

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まあ、そんなこんなで簡単なインタビューの後、オマーのテントメイトの南アフリカ人選手(注1)と一緒に撮影して終了。

いや、これ、マジで大丈夫か、ワイ?



本日のオーバーナイトステージは、総合順位上位50名と女子総合順位上位5名は、3時間後のレイトスタートとなる。トップ選手が後方から自分たちを追いかけ、追い抜いていく、そしてその目の前でトップ選手の先頭争いを観戦できる。

ということで、びとーさんは3時間後にスタートってことで、先発隊がスタートする様子を見学しにスタート地点にやってきた。


スタート地点への移動ギリギリまで横になっていたので、体調は幾分かマシになって、これなら何とか行けそうな気がする。スタートはできそう。

昨日のゴール後、水の配給時に一緒に配られたミステリーステージ(ステージ4)のロードブックの記載では、先発隊のスタートは8時15分なのだが、校長先生の話が続き、スタートする気配がまだない。

そんな中、現時点での総合順位上位3名、女子総合順位上位3名の名前が読み上げられ、ちょうどそばにいたびとーさんと「ウェーイ!」と盛り上がる。胸熱だわ。

と、背後で「おえーーーーっ」とイギリス人選手がマーライオン状態に.....。大丈夫か?と他の選手達が取り囲み、なかなか終わらないブリーフィングに苛立ち始めている。日に日にスタート前からマーライオンな選手が増えていく。

コロナなんぞ、もはや選手達の脳裏には全くなく、目下の話題は嘔吐と下痢なんですよ。




予定より30分くらい遅れてオーバーナイトステージが始まった。

作戦はいつもと同じで、日中の陽が上がっている間はゆっくりとやり過ごし、陽が落ちて暑さが和らいだら、一気にノンストップで行けるところまで行く、あわよくば翌朝、暑くなる前にゴールしたい。

が、そうは問屋が下さなかった、、。

昨日までであれば、CP1までは問題なく歩みを進めていた。CP1を過ぎてからマーライオン状態になっていたのだが、今日は違う。
なんてったって、ネクストステージに昇華しちゃったんだから、、、。

下痢である。
今日の私は上から下からと水分が抜けていく。

今朝、タケシさんから正露丸を6錠もらっていて、スタート前に3錠服用したのだが、まだ効かない。嘔吐したことにより、なんか正露丸臭.....。

全然、前に進んでる気がしない!
ペースが落ちてる!

タケシさんは前を走っているからいいとして、この数時間後にびとーさんがやってくる、その時にラクダ草の陰で下痢ピーしてたなんてことになったらマジ嫌だわ。


と、あともう少しでCP1かってところで
えっ!?もう!?トップ選手グループ数人がタタタターって抜き去っていった。
いや、これマジでショックだわ(注2)


CP1に11時半過ぎに到着する。
結構ギリギリじゃない?
これもうダメだわ。ペナルティ1時間食らってもいいから、点滴打ってもらわないと、このステージもたないわ。

メディカルテントに向かうと、外科と内科みたいな感じでテントが分かれているらしく、具合が悪いのなら隣のテントに行って、と言われた。

メディカルスタッフに、初日から熱中症の症状で毎日吐いていたけど、今日は朝から下痢の症状が出ているので、点滴を打って欲しいと伝えるが、「点滴」のところはスルーされて、何種類かの錠剤を渡され、スタッフの目の前で飲まされる。

更に、粉末を渡され、
「これを水500mlと一緒に混ぜて、少しずつ飲んで。これで水分がすぐ体に吸収されるはずだから。」と、そうは簡単に点滴を打たせるものかっていう意思を感じる応対である。


とはいえ、ここでゆっくりはしていられない。
時間的にそろそろCP2に向かわないとまずい。とりあえず、この処置で様子見して、CP2に辿り着くまでに症状が改善されなかったら、今度こそそこで点滴を打ってもらわなければ、、。


CP1を抜け少し経った時、トップ選手が続々と抜いていく中、ゼッケン番号7番の姿が左手に見え、その瞬間に女子のトップ選手が来たと悟った。
その時、右手から「レナさーん!」と声と同時にびとーさんの姿が目に入り、7番(アジザ)、74番(アイシャ)と競るように走り去っていった。

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ヤバい、これ、胸熱だわ.....。
前回大会のモリモリの時以来の感動である。びとーさんの姿がだんだん小さくなり、視界から消えるまで、じっと見つめていた....。

と、よし、
びとーさんも前に行ったのでもう私の後ろには誰も(日本人が)いないな。

少しコースを外れて、いい感じで自分がすっぽり隠れるラクダ草を探す。
マジで嘔吐と下痢が止まらんのですわ。とにかく上から下から出てくるものは水なんですよ、水。
飲んだ水がそのまま上から出るか下から出るかの違いなんですわ。

CP2まで向かう道中は悪魔の時間だった。
日中一番陽が高く、その暑さは最高潮である。レース前にジャマルが言っていた
「今年10月のモロッコはまだ夏なんだよねえ、、」
まだ夏なんだよねえ、、
まだ夏、、
夏、夏、夏、、、
と、頭の中で無限リフレインしている。

いい塩梅に隠れるラクダ草や樹木を見つけると、そこでおトイレタイム。
いい塩梅の木陰を見つけると、そこで休憩タイム。
全然進まねー(涙)

そんな中、名前は失念したが、木陰バディーができ、今日は何回か木陰で同じイギリス人選手と鉢合わせになる。
「あなたの友達、凄いわよねー。颯爽と抜いていったわよ。」
って、誰のことかと思ったら、びとーさんのことだった。
スタート前にびとーさんと「ウェーイ!」ってやってた時に近くにいたらしい。
こういう風に言ってもらえるのは自分のことのように嬉しいね。


上から下から水分が抜けていくヘロヘロの私の方が今やポンコツだわ。



CP2に制限時間の16:30に到着。
制限時間ギリギリの綱渡り状態にまで追い込まれるとは予想だにしていなかった。
それでもメディカルテントに寄らなければ、これから先がもっと危なくなる。

フラフラになりながらメディカルテントに入った途端に倒れ込んでしまった。
それを見た他の選手がびっくりして、「メディック!」と叫んで呼んでくれて、メディカルスタッフ2人飛んできた。

これまでのことやCP1で錠剤とか処方されたけど効かない話をする。
オイラ、英語でちゃんと話したつもりだったんだけど、女性スタッフがなんかいきなり翻訳アプリ見せてきて、「ん?」となるが、気を取り直して、再度説明する。

一通り話を聞いたスタッフは私を仰向けに寝せ、耳に体温計をぶっ込んだ。
「ん?」
体温計の数値を見た後、体温計を拭き拭きし、また耳に体温計をぶっ込む。
「うーん、やっぱり熱が38.5度あるね。」


「えっ!?!?」
これは自分も流石に驚いた。
まさかコロナ感染した?と最悪なケースが頭をよぎる。


「これからあなたに水をかけて冷やすから、濡れては困るものは脇に置いて」
と女性スタッフ。水浴びする想定でポケットに入れるものは全部ジップロックに入れてるから大丈夫ではあるが、念の為、iPhoneだけ濡れないように脇に置く。

ペットボトルの水を勢いよく、これでもかと2本分くらい全身にぶっかけられる。
陽も落ち始めている時間だし、ブルブルブルブルブルっっ!!!!
めっちゃ寒い、寒い、凍えるんですけどー。

「うん、それはいい兆候ね。とにかく、熱が下がるまでここにいてね。また熱を測りに来るから、熱が下がっていない状態でレース復帰は禁止だからね。」としっかり念を押されてしまう。

ということは、熱が下がらないとドクターストップ=リタイアか、、、。
あああああーっ、あともうちょっとなのに、こんなところで終われないよー。


もはや神頼みだわ。
神様、仏様、松永さん、おかーさん助けてー(涙)


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注1)  後に、この人と私は、2022年5月のナミブレース(Racing The Planet主催)で再会することが判明。
注2) ロードブックには3時間後スタートとなっていたが、実際は1時間半後にスタートしたのを知らなかったし、気が付かなかった。



【お断り】レース中、実際に起きたことを書いていますが、メモ書きなどして記録をとっていないため、話がチェックポイント、またはレース日で前後している可能性があります。これはこの時ではないよ、とご指摘頂いたら、レポートを全部書き終えた後に再編集し直します。


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