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プロスポーツチームの「広報課題」はなにか

気がつけば、プロスポーツビジネスに関わりはじめて4年が経ちました。
私が代表を務める株式会社HAMONZは、創業以来、”スポーツを通して社会を良くするideaを広げていく”ことをミッションに、競技側面以外でスポーツが持つ価値にフォーカスし、メディア運営やプロスポーツチーム支援をしています。

プロスポーツ支援の業務として、マーケティングや広報活動、ときにはセールス、新規事業開発と幅広く関わりを持たせていただいているのですが、今回はその中で「広報」というカテゴリで、自分自身が業務に関わる中で見えてきたリアルな課題について持論を示したいなと思います。
実際にスポーツチームの中に入り、感じている課題(リアルな課題)ということもあり、スポーツチーム関係者の方に何かしら共感がいただけたら嬉しく思います。

スポーツチームがやっていることはほとんど伝わっていない

結論からいえば、「スポーツチームがやっていることはほとんど伝わっていない」ということです。
コアなファン・サポーターを対象にすれば、所属している選手や週末の試合の結果などは知っています。コアではなくても、地域に根ざしているチームであれば、その存在自体は認知されているかもしれません。
でもそれはあくまで一部の人であって、多くの人はチームや競技に関心を持っていません。
国内スポーツの多くはまだまだファンベースが大きくないため、新規でファンを拡大していくには、何かしらのタッチポイント(面白いと思ってもらうこと)が必要です。最終的にはスポーツ(=勝利)で魅了をすることが大前提はあるものの、入口のコミュニケーションは工夫しなくてはいけません。
そのタッチポイント(=人々の関心)をつくるのが広報の仕事であり、その視点でいえばスポーツチームがやっている広報はほとんど伝わっていないと思っています。

スポーツチームの広報は2つの役割に分けられる

スポーツチームは、主に選手・チームに関する情報発信を行う「チーム広報」とそれ以外を扱う「事業広報」に分かれます(名称はともかくそういう分け方が多い)。
主観にはなりますが、「チーム広報」は基本的には受け身のコミュニケーションが中心です。メディアの関心度は戦績や順位、選手の入れ替えにによって変動し、その都度問い合わせがあったものを対応していきます。中には企画広報という形でメディアに提案できる人材もいるかもしれませんが、あまりケースとして見たことはありません。チーム広報は、チームが強ければ露出が増え、弱ければ減るため、露出をコントロールすることは非常に難しい。当然、日常的にコミュニケーションをとることによって多少の違いはあると思いますし、努力幅がないわけではありません。
一方「事業広報」は、その逆です。自チームからのリリースを含め、主体的な働きかけによってメディアでの露出を増やしていく必要があります。一般企業のメディアリレーションに当たる部分ですね。
リリースに関しては、選手関連を除いても、年間400本(Jリーグチーム参考)に及びます。スポンサー、ホームタウン活動、チケット、その他諸々…一般企業と比較するびっくりするような量です。それを1名ないしは2名で回していると考えると、そもそもの作業量の多さが課題となってきます。
もちろん、本当にこのすべてが掲載する必要のあるものなのかは整理しなければなりませんが、やはり外向けに出す情報量は他業界と比較しても多いです。こうした中で、1つの取組みにしっかりと時間をかけてメディアバリューのある情報を発信していくのは非常に困難だと感じます。

スポーツチームの広報の役割分担

なぜ、「事業広報」が必要なのか

選手やチーム以外の情報を出していく必要性は何か?
代表戦や大谷翔平選手の試合のように、毎試合満員になるような興行ができるのであれば、運営やオペレーションの部分で必要最低限の情報を出しておけば良く、事業広報というのはそこまで優先度が高いものではないかもしれません。これはスポーツビジネスの究極の理想です。
しかし、まだまだ国内においては稀なケースです。むしろ、各競技のプロ化に伴い、観戦者の分散は進み、ファンもスポンサー獲得も競争が激化します。
そうした背景もあり、冒頭に触れた通り、チームに興味がない人とのタッチポイントが重要になってきます。Jリーグのシャレン!やBリーグのB.Hopeが立ち上がった背景もあるのかもしれませんが、ここ数年で競技以外での価値づくりに取り組むスポーツチームは増えており、集客やスポンサー獲得の観点でも有効な施策だと認識されています。(社会全体の時流とも親和性も高いため、メディア露出やパートナー獲得にも繋がりやすい)
しかし、こうした活動の多くは周知されていません。これは、リリースや能力の不足により、チーム側が情報を発信しきれていない、適切に目的や想いを伝えられていないからだと考えています。

メディア視点からみた事業広報の難しさ

事業広報の難しさを紐解くために、メディアの立場からも考えてみます。どんな形のメディアであれ、メディアにとって重要な指標は見られた数です。見られた数が直接的に収益につながるモデルが視聴やクリック課金で広告を表示させているWEBメディアであり、見られた数によって媒体の価値を高めCM出稿を増やそうとしているのがテレビの番組です。
メディアの立場からすれば、必然的にPV(視聴)がとれるネタを取り上げるのがセオリーになってきます。
一度メディアに掲載されると、芋づる式に他媒体でも取り上げられるケースがありますが、その場合は掲載実績をもとに情報が伝播して、社会的に関心があるテーマと認識されているからであって、0→1の取り組みを取り上げてもらうことは一般的には高いハードルがあります。
もう一つ、スポーツチームはもっとメディア側の目的、心情に寄り添う必要があります。特に地方は長年の付き合いから、そうした部分が御座なりになり、競技の延長で事業サイドの露出をお願いをする文化が根付いてます。もちろん、関係性で取り上げてくれるケースもありますが、まだ付き合いのないメディアでの掲載や再現的に露出をしていくとなればこれではいけません。

自前でコンテンツをつくることを提案したい

私たちは自前でコンテンツをつくることを提案しています。
メディアに取り上げてもらうにしても、何をやっているのかがわかりやすく伝わるものがあるだけで最初のコミュニケーションは変わってきます。まずは、自分たちでつくって、そこから波及してメディアでの展開を狙っていくのは効果的だと考えます。
特にやった時の跳ね返りが期待できるカテゴリは次の2つです。
◆スポンサー/パートナー営業
スポンサーの形も従来の枠に対する露出の考えだけではなく、コト(スポーツチームの知的財産を活用した形)を共創するパターンが増えてきました。スポンサーをしている企業は露出効果に期待をして広告を出しているだけではありません。そのチームが目指すビジョンやチームの存在と自社とを紐づけ、広告宣伝以外にも福利厚生や、企業のメッセージ発信、協同での社会課題解決などの効果を期待しています。しかし、裏側でどんな思いに共感していたり、実際にどんなことをしているのかは発信しなくては知ってもらえないのも事実です。表面的には、ユニフォームや看板に広告を出している企業も、実は色んな想いを持ち取り組みをしています。こういう部分を外部に発信することで、ファンと企業のエンゲージメントが高まったり、企業内でのスポンサーをしている理解度が深まったりもします。その結果として、パートナーの継続やそれをみた新たな企業が興味を持つきっかけにもなっていきます。

◆ホームタウン活動/社会貢献活動
これらの活動を外部に発信していく利点はいくつかあります。1つ目は、仲間集めの方法が変わることです。2つ目は、時流にリンクしているためメディアや世間の関心度が高いということ。そして、3つ目は、新たなファンの獲得です。
まず、1つ目の仲間集めの方法が変わるというのはどういうことか。社会課題への取り組みは、これまで「スポーツ競技そのもの」には興味がなかった人・組織も、取り組んでいる内容に関心を持ち、それがきっかけでコミュニケーションがスタートするという機会を広げることにつながります。実際に私が携わっているチームでも、社会活動を皮切りにパートナー(協賛含む)企業へとつながった事例もいくつかあります。地縁がないチームの協賛をいきなりすることはなかなか難しいことですが、捉えている社会課題に共感することは多々あることです。スポーツが軸ではなく、社会課題が軸の新たな仲間づくり、パートナーの形を創造することに繋がります(これは協賛に限った話ではなく)
2つ目のメディアや世間の関心度が高いという点。SDGsを皮切りに社会課題への意識は変わりつつある一方、ダイレクトな表現では伝えにくいこと、伝わりにくいことがあるのも事実です。スポーツにはこれらを解決する力があり、そのわかりやすさはメディアの視点でも扱いやすく、広がりやすいと考えています。極端な話ですが、同じ社会活動でも一般の団体がやるのと、スポーツチームがやるのではその波及効果は異なります。メディアでの露出もスポーツ枠をこえ社会枠など他ジャンルで露出する機会にもつながっていくのです。
3つ目は、新たなファンの獲得です。ホームタウン活動や社会貢献活動=ファン獲得というと少し結びつきが弱いかもしれませんが、特定のファネルに対しては非常に効果的なアプローチだと言えます。

セグメント例

上記のようにセグメンテーションをしたときに、非認知層・低関心層へのリーチについてはマスメディア、TVが圧倒的なプレゼンスがあります。
また、その中でもチームへの興味関心喚起には、試合内容・結果に加え、「地域や社会への貢献を知ってもらうこと」が上位回答としてあがり、「よく見かける状態にすること (=多面的な露出)」 が効果的ということも分かっています。もちろん、1つの活動が直接的な効果を生み出しているわけではありませんが、複数の活動をしっかりと発信継続することが、マスメディアの目に止まり情報として伝播していきます。

簡潔にまとめると

①スポーツチームの広報は伝えるべきことが伝えきれていない
②事業広報はリソース不足から、本当に出さないといけない情報を"丁寧"に出せていない
③自社コンテンツは新たなスポンサー獲得やメディア露出に寄与する重要なアクション

スポーツチームの広報は伸びしろがありますし、やりがいのあるポジションです。スポーツや自チームの価値を競技以外でどのように伝えていくのか?広報が担う役割というのは非常に大きく、だからこそ課題に目を向けて取り組む必要があります。

弊社ではスポーツチームのコンテンツの企画・発信をご支援を本格的にスタートしました。ここ数ヶ月で多数のお問い合わせをいただいております。まずはカジュアルなご相談からでも大丈夫なので、関心があるスポーツチームの方はお問い合わせください。


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