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トキ×私オム「回路」

芝居を見て、こんなにも、"気持ち悪い"と思うことが今までもこの先も、もう多分ないだろうというくらい、気持ち悪かった。

初日、初見、何気なーく見ていて、あー、楽しかった!面白かった!で終わった作品、2日目、2回目、途中からあまりにも気持ち悪くて、直視したくなくて、手遊びし始めたくらい気持ち悪くて。

芝居見ててこんな風に思ったの多分初めてで、どう消化していいか分かんなくて、とりあえず食うしかねえと思って終演後焼肉を喰らいました。


どう消化したらいいのか本当に難しいんだけど、オムさんが描く世界って、いい意味でも悪い意味でも所謂"普通"の人があんまりいなくて。だから見てて心地いいというか、ああ、私でもこの世に存在してて良いんだなあって思わせてくれて、好きなんだけど、今回のは、ちょっとこう、範疇を超えるというか、端的に、気持ち悪かった。

流山という人は、死んだように生きている人。15年間ずっと。21の時に13だった弟、って、私も妹とそのくらい年の差があるから、ちょっと考えたら、おぞましかった。もし今、妹が誰かに殺されたら、確かに私も死んだように生きるし、絶対に犯人殺したい。そういう意味では共感出来なくはないんだけど、何せその経験は私にはないので、彼の執念を超えた怨念みたいなものがとてもとても気持ち悪かった。
演じてる根本さんは、ずっと前から知ってる俳優さんで映像ではお芝居を見た事があったけど、生でお芝居見るのは実は初めてだったらしく。生々しいお芝居だなあって。今回割とみんな生々しくは作ってるんだけど、その中でも際立ってて。さすがキャリアの長い俳優は違うなと。

源という人は、誰かのために、と言いながら、常に自分のために、自分本位に生きている人で。この人って一見意味わかんないっていうか、なんなんこいつ。って思うんだけど、いざあの世界にいたらきっと誰もがこの人と同じ行動をとると思う。もちろんね、違和感もあるんだけど、確かに誰かのために何かしたいって気持ちはあるとして、それが犯罪だとしたら、躊躇するのは当たり前の感情だと思ってて。だって、誰だって犯罪者、になんてなりたくないんだもん。問題を先送りにして、なあなあにのうのうと生きてる、それが現代社会に生きる殆どの人、だと私は思う。私も含め。
演じてるのはばばりょ。私はこの人の芝居が大好きなんだとあらためて感じる。彼が随分昔にトーク番組に出ていた時に、芸能界に入ったきっかけはスカウトで、女の子にモテるかなと思ってそのスカウトを受けた。程なくして芝居の仕事をしてその映像を見た時に、自分がド下手で、このままこの仕事を辞めたらこれしか残らないって、悔しいな、恥ずかしいなと思って、芝居と向き合うことを決意した。と話していたのをずっと忘れられなくて。貴方は随分昔から私に素敵な芝居を届けてくれてるよ、という思いは伝えないから届かないのだけれど。本当に素敵な芝居を持ってきてくれるばばりょの存在は、推しとはまた違う、尊敬する俳優、という言葉に収まりきらないくらい幸せな出会いをさせて貰えたなと思う。人間らしい人間をやらせたら右に出るものはいないと思う。

池本という人は、底知れない人。実行犯。見てて1番、"気持ち悪い"と思った人。この気持ち悪さを表現する言葉が見つからないのが不覚。児童福祉法云々はどうでもよくて、13歳の彼が、求められたからと言って、人を殺す、決意をして、実行する、その行為が"気持ち悪い"。ものすごく聡明な人なんだと思う。だから、リカのために、源のために、そういう行動を取れる。後先を考えてるのか考えてないのか。だから、で合ってるのか分からないけど。底知れなくて、腹の底でこの人は何を思って、何を考えて、何のために生きてるのか、分からない。こんな言い方はどうかと思うけど、きっと自責の念だってあるはずで、そうなったら私だったら、きっと、命を絶つんだと思うんだけど、そうじゃなくて、ずっと、死んだまま生きてる、この人は、何を思って生きてるんだろうって、そう思う。気持ち悪くて、恐い。恐怖。
演じてるは高崎くん。なんかいつもヘラヘラしててあんまり好きじゃないなあと数年思ってたんだけど、覆された。この恐怖感、気持ち悪さ、全部高崎くんが演じてるから、なんだなと。事務所の中ではかなり、所謂、2.5次元俳優という括りに入ってる人だと思う。人気作にもバンバン出て、顔もかっこよくて、スタイル抜群で、オタクもいっぱいいる、若俳界隈の人。そういうレッテルを私は勝手に貼っていたけど、ものすごーーーく役者さんだなあって。声の、音が怖い。声にも音があるんだけど、変な、半音下がったような、気持ちの悪い音を当てるのがものすごく上手。だから、すごく、"気持ち悪い"。

このトリプル主演が、バランスよく気持ち悪いからこそ、この作品が成り立ってるんだなあと感じる。この3人の他にも色々といるけど、看板役者なんだろうなあ、と思う。……気持ち悪いプロダクションですね。いいと思うけど。


在原桂馬くん、君は随分と恵まれた環境にいて、それをきっと実感してるのは知っているのだけれど、この環境でどう生きるか、それは君次第で。これから先の君の人生に響くと思うんだけれども。良い過ごし方をしていたら、それは私にとっても嬉しいことだな、と思う。
君と私は、どういう関係なのか私も分からなくて、私が君を好きなことまで嘘のように思えてくるけれど、好きでいることを誇れる、そんな人間であって欲しいと、ずっと願うよ。
君は、君のペースで芸能界というところに居ればいい。居たくなくなったなら、何も言わずに居なくなってくれてもいい。君が本当に、この世界でこの仕事で大成したいと思うなら、私は私に出来る精一杯で、"応援"し続けます。

そんなポエムで、舞台回路、私の中では完。

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