Once Upon A Time

変な話だが。

私はMusu Boreというバンドというか、不思議なものをやっているのだが。

そのMusu Boreが、ライブハウスでの扱いが急に変わった(つーても、それまでも、物凄くお互いに敬意を払いながら活動してたんだけど)ってのを思い返してみると。

別にそこが祝日とか土日でもないのに、札幌から来たとか京都から来たとか福岡から来ました、とかいう人が現れてから。

普通、自分だったら、どう考えたって絶対やらないでしょ、ってこと。

わざわざ、平日に休暇を取って、或いは、札幌だの京都だの福岡から、数万円レベルの交通費をかけて、たかが無名バンドのライブハウスのブッキングレベルのライブを見に来るとか、ありえないでしょ、って話。

しかも、テレビだのネットだので宣伝をしてる訳でもない。

例えば、特別なイベントを企画しました、とか宣伝して。
ひたすら、頑張って宣伝する。

その日を特別なものにしますとか、メンバーもスタッフも一丸となってやる、とかってのは、普通、誰でもやりそうで、誰でも考えつくような話。お客さんも、それを口実にして、遠出などしやすい、ってことだけど。

ぶっちゃけ言えば、そういう「陳腐なスペシャリティを乱発しなきゃ、客も呼べない」って言い方が出来るというか。

そういう事を分かってない人ほど、巷でよく言う、陳腐なマーチャンダイジングでバンドを売ろうとする。

私のXポストをずっと見てた人なら分かると思うのだが、バンドや音楽ってのは「本来、世間一般のマーチャンダイジング」とは真逆の話なのだ。

いわば、そういう世間の人が考えるモノの売れ方や考えとは真逆で、非常識な売れ方をするものなのだ。だからこそ、世代を超えてビッグヒットやビッグビジネスに結びつくのであって。

それを勘違いした一般人が、80年代や90年代に多く入り込むことで、それを壊してしまったのだけど。

そりゃ、どんどん少子高齢化が進んでいる現代、その世代だけのレイヤーを作って特化するような表現が、商売として売れるはずがないのは、どう考えたって分かろうはずなのだが。

けど、平日の。例えば、金土日祝以外の、本当のド平日の。

それも、たかがライブハウスがブッキングしたようなライブに、東京以外のどこかから、それもバンドの直接の知り合いでもないような人が、ライブハウスにわざわざコンタクト取って、予約を入れて、はるばる遠方からやってくるってのは、ぶっちゃけ「自分の損得を考える人間だらけのこの社会で」あり得ない事態なのよ。

誰が、そんな金と手間のかかる事を、そのバンドのためにやってくれるというのだ?

それ、音か個人に、壮絶な吸引力が無いと起こり得ない事なんだよね。そんな人は、絶対、そのバンドのもとを、それから先も離れる事は無いんだよ。

ノルマ掛けの時代の前に、ライブハウスが、何故、奇妙な時間や日程にオーディションライブをやっていたのか。

何故、土曜日の昼に「30人のお客を集めることができるか」って、バンドやお客さんにとっては、ほぼほぼ嫌がらせのような時間に行われていたのを思い返してみたらいい のだ。

例えば、かつての自分たちもそうだったけど。

周りの友達にひたすら拝み倒して、30人無理やりひっかき集めて、さも、自分たちが動員力ありますみたいに体裁を繕った所で、そういう「義理人情」で入った「知り合い」なんてのは、何か、自分の都合が悪くなれば、それ以降、平気で来なくなるんだよね。

大体、そんな「土曜日の昼」とか中途半端な時間、忙しい人間は、まだ、仕事やってるような人もいたり、休みなら、家族サービスだの、どこかに遊びに行ってるような時間に、わざわざ、そのバンドの音楽を敢えて聴きに来る、ってだけの吸引力って相当なものだという事なの。

若い時は、自分たちに実力があるものだとか、センスで勝負だ!みたいな事を、案外容易く錯覚するが、いわば「土曜日の昼みたいなのにライブやっても、平気で30人は動員できまっせ!」程度の事さえできないバンドに、広告宣伝費用かけて売ったところで、究極の意味でコスパが悪いのだ。

だって、それほど、演奏や曲に吸引力や魅力が無いって事なんだもの。宣伝やめて、ハッタリが無くなった途端に、しぼんでしまう風船でしかない。

自分たちは人気や動員力が足りないから、広告宣伝の力で売ってもらう、って事こそ、あんさんがた、何を勘違いしてますの?ってことなんだけど。未だにこんな事さえ分かってないのが、50代や60代どころか、70、80のジサマバサマどもも平気でいるからね。挙句、ドヤ顔で何も知らないガキどもに説教を垂れてるところを見るにつけ。

無様なものである、と。

それほどの事が軽々できてこそ、見知らぬお客さんが、演奏見て聞いて「何だ、こいつら!」みたいな壮絶なパワーに引きずられる、ってだけの話なのよ。

昔のライブハウスは、そんなことなんか百も承知で、あのオーディションを受けさせてたって、多分分かってなかったんだよな、皆。

多分、イカ天を企画した人間たちも、それに乗ったレコード会社も、バンドたちも分かってなかったんだよ。何も知らない夢多き若者たちを唆して、それを金にしようとしただけで。

本当に実力あるバンドを生き残らせていくためのシステムを破壊したのだよね。

イカ天を見て勘違いした奴らが、いきなり、自分もライブハウスに出られるもんだと勘違いして。

挙句、あのオーディションを、古臭いだの、若者を邪魔する!とか言って敬遠して。

新しく出てきたチケットノルマ式のライブハウスに殺到した訳ですけどさ。騙されたバカな新人が、それで出まくるから、もう、ウハウハですよ。当時のノルマ式のライブハウス。

オーディションの厳しいライブハウスと違って、ノルマさえ払えば出してくれる、ってんだから。

んで、ノルマ式をやってなかったライブハウスも、我も我もとこぞって、ノルマ式を採用して、バンドブームにあやかって、若手や新人を出す、との名目で、多大な集金をしていた訳ですけど。

あのバンドブームが去ってから、ライブハウスについていた、音楽好きの心あるお客さんも、実力あるバンドも、呆れ果てて前に出てこなくなってしまったのよねー。

いわば、そこが分水嶺だったわけだ。

ふってわいたようなバンドブームで一攫千金を狙ったのは、バンドだけじゃなくて、新しく出てきたライブハウスたちもそうだった。

元々、動員力のあるバンドが、新しいライブハウスに出たって、新規のお客がつかないの分かってるから、あまり新しいライブハウスには出たがらなかった。

つまり、その頃は、店が集客してた訳だから、動員力のない新規のライブハウスに出るって事は「自分たちの売り上げを当てにして、そこから上がりを横取りされるだけ」って事なんだよ。新しいお客さんが付かないのも分かっているってこと。

逆から見れば、ここの有名なライブハウスなら、毎日だろうと本気の凄いバンドが出るんだっていう「信用」がお客さんを集めてた頃があったってだけ。だから、ライブハウスの方が、バンドの出る出ないなんかコントロールできるほどの圧倒的な力があった。

ま、勘違いした連中は「何で(実力のある)俺らを出さない!」って文句たれてたけどさ。

そりゃ、経営の事情とか考えたら、動員力ない奴などお呼びじゃない、っていう・・・それ以前に、ライブハウスの格とか誇り、ってあったんだよな。

店に来てる、目の肥えた音楽好きのお客が「これは!」って思うようなものを見抜く、店の眼力って確かにあった。

ただし、あのオーディション式のライブハウスにも、一つだけ弊害はあったけど。つまり、ライブハウスの店長の趣味や傾向に左右されやすいから、新しい音楽スタイルのバンドが出られるハコが無い、ということだったんだけど。

そうね。今でいうなら、シューゲイザー箱、とか、ボカロ箱、みたいなのが無いと、出られる場所がないって話なの。そういう人たちの出演場所を「新興のノルマ式のライブハウスが担っていた」って、そういう話。

カンタンな話だけどさ。

ライブハウスの受付からしたら、予約状況見てたら、例えば、お客が全部学生で、体裁繕って仲間内で呼んだだけのサクラだな、とかバレバレなんだって。で、そういうのは、仲間内の義理で来ただけで、学校卒業した途端に来なくなるってこともわかってんの。

今は、確かにお客入ってるように見えても、数年後に、そのお客はほぼほぼ来なくなるとかいう、先の先も見通す眼力も含めて、本気のライブハウスの担当者たちの眼力ってのはなめらんないものがあるの。

だいたい、たった1日に、どれだけの演奏を見て、何曲の曲を聞くと思ってるのかって話。

過去、ライブハウスの矜持があった頃の店員のお話。

「あのさ、こちらもプロですから。

1日に5バンド。その音楽が好きだろうとキライだろうと、PAすることになる訳です。そのバンドの実力の程など、成長の度合いも含めて分かってます。

1日5バンド、延べ300日くらいで考えても、こちらは1500回のステージを見る訳です。その中で、演奏でPAやっているこちらをうならせて、このバンドはただならないと思わせてくれるほどのバンドは10も出ない。」

正直、バンドだろうと、ライブハウスにとっては「お客さん」でしかないんだよ。

それが変わって、ライブハウスからも敬意を持たれるレベルになるってのは、そういう「とんでもないレベルの一見さんが、会場にちらほら現れるようになってから」なのよね。

どんなマニアックな音楽やってようと、たかが無名のバンドのために、大阪や京都から来たとか、ライブハウスにとっては衝撃。

派手に告知宣伝を打てるメジャーのバンドとかならともかく、ライブハウスの小さい所に、そんなお客さんが平日に遠路はるばる、関係なしにその演奏のために来てくれるようになったら、それがそのバンドの真の魅力とか実力だって事。そこのメンバーたちの真の営業力、吸引力だって事。その力が無いようなモノは何やったって持たない。


「祝日じゃないと客入んないから~」 じゃなくて。

逆ですよ。

「それが平日だろうとお構いなし」だからこそ、興行は毎日打てるってだけね。 姑息にお客の心理を読むとか、関係ないの。

つまり、君らは ノルマ式以降の時代しか知らない訳だ、ってのもバレたんだよ。

ついでに言えばさ。

メンバーが頼んで、わざわざ交通費出して、東京にわざわざ来させるとか、姑息な事やっても無駄だよ。

そういうのって、逆に何回も続かないから。バレるの。
音楽だけの力で、人を集めた訳でないってのも含みで。

だから、ライブハウスが、バンドを煽って客呼ばせるとかってのは・・・

正直、アンタも、モグリなのよ。
俺からしたら。

そんなん、何度もやらせて、無理やりお客を呼ばせてたら、タダでさえ知り合い少なかったバンドは、更にウザがられて動員力無くすぜ?

音に実力が無いのを、経営都合で無理やりださせたって、動員になんか結びつかない。ミュージシャンの知名度や力に胡坐かいて、僕たち、仕事してますみたいな顔してんじゃないっての。

そこはハコだって苦しかろうが、自分の店の格を守る動きしないと。
その先、潰れるよ。

・・・ここから先は言う気も無いけど。

賢いライブハウスは、別に毎日のライブだけで金回してる訳じゃないからね・・・。 流石だなぁ、と思って見てたよ。

大学生のサークルバンドとかの追い出しコンパとかで、うまく使ってもらうような営業したりね。或いは、昼の時間に、PVの撮影で使ってもらうとか、ね。

栄枯盛衰。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。

『平家物語』第一巻「祇園精舎」


えっとね。

数カ月前、Xで、私の所のTLに、誰とも知らぬ人のポストが流れてきた。
おそらく、年のころ、30前後だろうか。もう少し上なのか。

「ライブハウスって、売上考えたら、ジャンルで括った方がいいんじゃないだろうか。」

ああ。

君は、昔々のお話をご存じない。無理もない。
我々を老害扱いして、その頃の話を知らないのだからね。

悪いが、その考え、失敗すると思うよ。

だって、その「ジャンル式で出演者を縛る」出演方法を否定して、今のライブハウスのメカニズムが出来上がってる現代なんだもの。

そういう事を平気で言う君は、今の自分が何でも知ってるつもりでいるだけの、愚か者に等しいのに、さも、自分が賢そうにアイデアを語る。

学びが足りないのだ。

歴史を知って、その上で、今と昔をリンクするなら分かるんだけど。
君は、今の現状でまずいからって、単なる思い付きのアイデアだけで、今の状況をひっくり返そうとしてる。

今しか見てない。


そうするとね?
何が起こるか教えてあげようか?

数十年後に、今の君と真逆の事を言って、またそれをひっくり返そうとする奴が出るだけで。

それを見てると。

今の日本が、何遍やっても、同じことの繰り返しで、ダメな理由ってのは見えてくると思うんだけどね。

歴史を学ばないから、過去の失敗例も知らないで。
新しいことやったつもりで、過去の失敗例にひっくり返そうとする。

周りの奴等も、歴史を知らないから、それを止めない。
結果、人類が何遍も繰り返した間違いを
日本人だけが、何遍も繰り返してるって究極の馬鹿な構図の出来上がり。


「新しい!それは新しい!」

そして、過去の失敗例に戻してりゃ、世話無いのよね。

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