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まぐろかつタルタル風味 南アの奥行きあるシュナン・ブラン

火の入ったまぐろのリッチでジューシーな脂はたまらない。刺身や寿司で食べるのとはまた異なる魅力を楽しめる。まぐろにタルタルソースをはさんでカツにした惣菜、”まぐろかつタルタツ風味”をスーパーで見つけた。まぐろの脂にタルタルのクリーミーとタマネギの酸味、間違いない組み合わせだ。

手前がまぐろカツ

開栓して残っていた4本のワインをセラーから取り出して合わせてみた。
①イタリア ピエモンテ州ヴェルメンティーノ品種
②南アフリカ コンスタンシア地区ソーヴィニョン・ブラン+セミヨン品種
③南アフリカ パール地区シュナン・ブラン
④ジョージア カヘティ地方キシ品種

①トゥア・リータ ペルラート・デル・ボスコ ヴェルメンティーノ 2,475円
Tuarita, Perlato del Bosco, Toscana Vermentino, IGT, Italy, 2020, 13.5%

トゥア・リータの設立にあたり創業者夫妻がトスカーナ州スヴェレートに畑を購入したのは1984年。1988年に植樹し、1992年に初リリース。メルロー100%で造られるレディガフィはイタリアワイン界でワイン・スペクテーター、ワイン・アドヴォケイトの二大ワイン評価誌でで100点を獲得した唯一のワインだ。レディガフィの小売価格は3万円ほどだ。
彼らがヴェルメンティーノ品種から造るワイン。軽快にグレープフルーツ、ライムの青いトーン、柑橘の果皮のほんのりビターな香り、微かにナッティなニュアンス、白い花のフラワリーなタッチ、香りのボリュームは軽めだが磯の香りをしっかりと感じる。
凝縮感は非常に軽めで果実味が薄い、酸味はややはっきり、ほろ苦さはっきり、シンプルで軽快で個性がやや薄い。ヴェルメンティーノの個性を感じづらいが磯の香りは健在。

まぐろかつの、まぐろとタルタルソースの風味のパワーにワインが圧されるが、控えめ柑橘香や磯の香は幅広いシーフードを包み込む。料理のリッチな脂やボリュームを、ワインが心地よく引き締める。
相性: ★★★☆☆

②コンスタンシア・グレン ツー, 3,564円
Constantia, Glen Two, Sauvignon Blanc, Semillon, Constantia, South Africa, 2019, 13.5%

ワイナリーのコンスタンシア・グレンは2000年設立。南アフリカで最初に葡萄栽培を始めたコンスタンシア地区にあり、ボルドー品種を使った生産者として知られる。
ワインの香りにはグリーンペッパー、青々としたカットグラスがビビッドに。青いトマトも。セミヨンを感じないほどソーヴィニョン・ブラン支配的な香り。
青々とした果実味、やや明瞭な酸味、トップからフィニッシュまで徹底的にビター、ゆったりとまつとほんのりとラノリンクリームのようなニュアンスが微かに鼻腔を抜けるところにセミヨンを感じるが、あまりにもセミヨンの存在感が薄い。一つ前の2018ヴィンテージのバランス感、ワインのリッチな口当たりはセミヨンの存在感なくして表出されないが、2019ヴィンテージはかなりバランスが変わっている(私個人の好みは2018のバランスだ)。

まぐろかつのまぐろとタルタルの脂とクリーミーなタッチを、鮮烈なハーブ香を持つワインが爽やかに引き締める。タルタルの玉ねぎの酸味ともワインが心地よい繋がりを見せる。が、ワインの強烈なグリーンでヴェジェタルな香りは料理にややアンバランス。
相性: ★★★☆☆

③ブラハム シュナン・ブラン, 2,178円
Brahm’s, Chenin Blanc, Paarl, South Africa, 2019, 14%

ワイナリーはケープタウン近郊のパール地区。醸造家ヒーシー女史の家庭は大変貧しく、子供の頃からアルバイトで家計を支え、大学まで全て奨学金で学びながら優秀な弁護士として活躍。「いつか自分でワインを造りたい」という想いをかなえるため、ケープタウンでの都会生活を捨て、郊外のパールに土地を買いブドウの苗木を植えたのが始まり。
ワインは花梨、マルメロ、黄色いメロン、黄色い花、やや明瞭に樽、酵母香、魅力的で心掴まれる香り。
ジューシーな果実味、中庸ながら的確な酸味、シュールリーのようにじんわりと旨味やコクが広がる充実のフィニッシュ。

フランス ロワール川沿いで広く栽培され、魚介と合わせられてきたシュナン・ブラン品種、白身魚から赤身魚まで幅広い相性。マグロの赤身は揚げられると魚体に白色を帯び、どこか生で食べるときの強いアクセントは和らぐ。その分、リッチに感じられる脂を、ワインのジューシーな果実味と、旨味、酵母感などの奥行きのある複雑な世界が包み込む素晴らしい相性。
相性: ★★★★☆

④マカシヴィリ・ワイン・セラー キシ 2,847円
Makashvili Wine Cellars, Kisi, Georgia, 2019, 13%

しっかりとした色調の琥珀色。
アプリコット、黄桃、シロップ漬けの桃、パパイヤ、パッションフルーツなどの果実香が豊かに、ややはっきりと麝香。
果実味自体の主張は穏やかで滋味豊かに広がる、陶器を舐めたようにしっとりと舌に渇きを感じるタンニン、穏やかな酸味、鼻腔を果実香、熟成香、様々な香りが抜け飲みごたえ豊か。

まぐろの脂に、ワインの麝香を思わせる癖の強い香りがピンポイントに調和。ジョージアの白ワインの主要品種ルカツィテリとも合わせてみたい。キシ品種に比べると個性はやや抑えめだが、アロマには一部の共通面もありこの料理にもよく合いそう。
相性: ★★★★☆

③南アフリカ パール地区シュナン・ブラン、④ジョージア カヘティ地方キシ品種が好相性だったが、万人受けという意味では③だ。④はどうしても品種の個性・癖が強いので評価が割れそうだ。同じジョージアのルカツィテリならば万人受けの相性になろうかと思う。

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