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トラピッチェの指輪のこと

わたしがいつも身に付けている目のデザインの指輪について。気が向いたのでたまには歌ってみようと思う。
それでは聞いてください。

『不惑の指輪』


2022年10月20日。インスタに流れてきた広告に心が奪われた。Kagann jewelryというブランドの、目のようにデザインされた指輪。画面の向こうで緑の瞳がこちらを見ている。中央から放射線状に線の伸びたその石の名前は「トラピッチェエメラルド」というらしい。わたしは一瞬でその瞳に取り憑かれた。

Kagann jewelryとGERMEDEURというブランドの合同イベントが週末から銀座で始まるというので、初日に店舗へ向かった。インスタには金額は記載されていなかったので他の商品から事前に指輪の金額を予想した。けれどトラピッチェは高価なので買える値段じゃないかもしれない。もう売れてしまってるかもしれないし、まだ置いてないかもしれない。デザイナーが在廊するのは翌週と伺っていたが、それでも行こうと思った。

その日はトラピッチェのルースは置いていなかった。店頭で連絡してもらい翌週にデザイナーさんとの相談予約をお願いした。他の商品を見せて頂きつつ店員さんに話を伺うと、メレダイヤなしのデザインもできるかもしれないが、このブランドはゴールドしか作っていないとのことだった。

わたしが見た画像は制作中の原型だったのでシルバーに似た色だった。ゴールドだと違うかもしれない。スクショした画像に色を付けてイメージしてみる。インスタの投稿を遡るとオーダーでホワイトゴールドやプラチナも扱っているようだったので、色についてはお願いしてみようと思った。


翌週。約束の時間に店舗へ伺うと店員さんとKagannのデザイナーさんとお客さん。そしてGERMEDEURのデザイナーさんがいた。

店員さんがKagannのデザイナーさんに説明してくれて、トラピッチェエメラルドを見せてもらうことになった。このあたりは記憶が曖昧だけど、ホワイトゴールドで制作できるか、メレダイヤなしにできるか、代わりに唐草模様(同時期に新作で出ていた)を彫ることはできるか、だいたいの金額などを確認したと思う。トラピッチェはインスタで見たのと同じ石が一番気に入った。

まだ空枠の目のリング(色はゴールド)と選んだトラピッチェを重ねて指に乗せてもらう。その後でKagannのデザイナーさんは先にいたお客さんの対応に行ってしまった。

指に石を乗せているので身動きできずにいると、GERMEDEURのデザイナーさんが話しかけてくれた。ホワイトゴールドにしたいけど迷っていること、わたしがゴールドとシルバーの指輪を重ね付けしたいことを話したら「爪だけゴールドにするのは?」と言われた。イメージしたらしっくりきたので全体はホワイトゴールド、爪はゴールドで話を進めることにした。なのでこの指輪にはGERMEDEURの血も少しだけ混ざっている。

メレダイヤの代わりのデザインについては唐草模様にするか他に考えたものにするか決められなかったので後日デザイン案を送って頂いた。指輪をオーダーしたこともないし、高い物なのでなかなか決められなくて3週間近く悩んだと思う。最終的にはそのブランドらしいものにするのがいいと思ったので唐草模様のデザインに決めた。

買うまでにも色々と理由をつけた。5月生まれなのでエメラルドは誕生石だ。30代最後の年だし、これは40歳の記念ということにすればいい。そうだ不惑だ。これは40代を惑わず生きるための「不惑の指輪」。


オーダーから3ヶ月後、ファーストコンタクトから4ヶ月後の2月に指輪がわたしのもとへやってきた。

指輪の入った箱を開けたとき違和感があった。もともとは大きさの違うメレダイヤがグラデーションに並ぶようにデザインされているので、右上の縁がやや太いデザインになっている。さらにトラピッチェエメラルドも同じ向きに傾いているので、指輪が右上に向かって歪んでいるように見えてしまう。オーダーした時点では気付かなかったけど、知っていたら石の向きを変えたかもしれない。指輪を真正面で見ることは少ないので、これについては気にしないことにしている。

指輪が届いてからは右手の人差し指にしてみたり、左手の人差し指にしてみたり、中指にしてみたり、はたまた親指にしてみたり。いろいろ試したけれど、最近は左手の中指に落ち着いている。もともと持っていたゴールドカラーのシルバーリングと重ねて付けている。

そしてあまり大事に扱わないと決めたので、普段から普通に付けている。ライブの日も気にせず付けるので、右手にしている宗教リング(と呼んでいる、いわゆる「推し」とお揃いの指輪)の攻撃力が高すぎて、気をつけていても手拍子でがんがんぶつかる。そのせいでリングが楕円に歪んでいるし、内側は槌目のように打ち付けられた模様になってしまった。とりあえず石を割らないようにだけ気をつけている。


わたしがこのnoteを公開することで、同じデザインの指輪を購入した人を嫌な気持ちさせないかという心配があった。ここまで読んでくれる人は大丈夫そうだけど。唐草模様はKagann jewelryのデザインで、ホワイトゴールドにゴールドを合わせることになったのはDERMEDEURとの合同イベントだったから。わたしはそれを選択しただけで、あなたの選択にわたしは存在しない。

ホワイトゴールド×ゴールド×唐草模様に変えたことで、デザイナーさんが最初に考えたデザインと違ってしまったことも申し訳なく思っていた。本来なら全体がゴールドでメレダイヤに囲まれているはずだった。だけどその後も爪だけがゴールドや唐草デザインの目の指輪を販売しているのを見かけて、このデザインを選んで大丈夫だったんだと思うようになった。だからnoteを書く気持ちになったのかもしれない。


1年くらい付けてわたしの指にもファッションにも馴染んできたけど、そのおかげで他の指輪の出番が減ってしまった。これからは順番にみんなを愛しつつ、この指輪との2周目の季節も楽しみたい。