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都政バガテル

12月13日の投稿で、現都政が評価されるべきなのか、という疑問を呈したものの、投稿の本筋から外れるためそれ以上の記述は避けた。ただ、放っておくのも居心地が悪いので、今回は、最近都知事が表明したある政策について論じてみる。

政策の概要は、こうである。

現在、世帯収入が910万円に満たない世帯に対しては、国の支援により公立高校の授業料118,800円は無償となっている。また、私立高校に通う場合は都の補助金も併せて475,000円の補助を受けることができる。これを、今後は所得制限を撤廃したうえで、都内すべての高校で授業料を無償とする。

一見すると、更に高校に通いやすくなる政策で良さそうに見える。しかし、これはあくまで外観上の問題だ。

まず目につくのは、所得制限の撤廃である。収入がどれほど多くても、私立高校の授業料を支払う必要がなくなる。十分な収入のある世帯を優遇する必然性はない。状況の異なる全ての人に平等に均分することが、かえって不平等を生むのは自明である。絶対的な補助ではなく、相対的な補助が、真に平等を実現できるのではないか。たとえば、子どもの人数に応じて段階を設けるのであれば、これまで見かけの世帯収入だけで補助を受けられなかった多子家庭へ手を差し伸べることになろう。しかし、上記の政策では子の人数による基準は設けられていない(現制度では3人以上の子のいる世帯には59,400円の補助があるが、新政策施行により原理的に廃止となろう)。

また、所得制限の撤廃は、むしろ世帯収入の差による学力格差を引き起こしかねないと危惧している。十分な収入を持つ世帯が授業料を支払う必要がなくなることにより、世帯の教育費はこれまで以上に予備校などの費用に充てることが容易になる。そうなれば、経済格差が教育格差を生む土壌を、推進こそすれ抑制はできまい。

学力という面でいえば、これまで授業料の観点で都立高校を選択していた層が私立高校を選ぶことにより、相対的に私立高校の競争率が上昇してレベル向上につながりうる。今回の政策によって、授業料が安価という都立高校の優位性が一つ失われ、実質的には私立高校優遇となるのである。

そもそも、その財源が税金であるという当然の事実を、改めて見つめなければなるまい。少なくとも私には、これをもって善政を施しているという評価は到底できない。

都知事選は来年7月、その時には都知事は72歳である。

(文字数:1000字)

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