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真夜中のエール

先日読んだとある記事によると、今年は「バスケットボール」というスポーツ名が正式に決まってから130年の節目だという。その時は特に気に止めなかったが、色々な考え事をしていると、そんな些細なことをふと思い出すものである。

職場に新入社員がやってきた。大学を卒業したての22歳。部署も違って私との接点はなかなかなさそうだが、彼の緊張感は言葉を交わさずとも伝わってくる。「初々しい」という言葉を擬人化したような新人だ。

そんな彼の姿に、5年前の自身を重ねてみる。社会のことなんて知ったかぶり、右も左も前も後ろも手探りだった当時の私も、日々一生懸命だった。

そんな私が大学卒業後に入った会社は、失敗続きの就職活動の末にどうにか拾われた職場だった。出勤初日、職場へと向かう道に満開の桜並木を見つけて、新たな環境への緊張と夢と期待を膨らませた。自分を雇ってくれる会社への感謝の念も、確かにあった。

しかし、その2年8か月後には退職するに至った。理由はここに細かく書きのべることはしない。ただ、悩みに悩んで、家族とも再三にわたる相談をして、心を決めて下した決断だった。入社から3年も経たずに転職することへの恥ずかしさや情けなさは当然あった。また、退職後・転職前の時期に訪れた宿で職業を聞かれたときの後ろめたさを、今も鮮明に覚えている。ただ、その転職に後悔の気持ちはない。前職の経験は確かに今に生きているし、前職でできなかったことを今経験できている。

4月は新卒就職の時期であるのみならず、転職のピークにもあたるという。学生から社会人になる就職が、人生における重要な一歩であるのと同じように、社会人生活の方向を変える転職も、確かに大きなターニングポイントになるはずだ。

敢えてこの時期だからこそ、一度経験した身だからこそ、私は言いたい。

新卒で始めた仕事や職場が、最善の選択とは限らない。一本に延びる道をひたすら懸命に歩くことだけが、目的地へのベストルートとは限らない。進む方向を変えてみることにだって意味はあるはずだ。

バスケットボールにせよ、ドリブルでがんばって進めばいいわけではないと聞いた。ピボットターンがとても大切なのだ、と。

ピボットターンは、軸足をつけて方向を変える技術だ。職場や職種がまるっきり変わったって、軸足さえぶれなければ、きっとうまくいく。

自分の軸も、自分の方向も、自分で決めればいい。サポーターは必ずいるから。

(文字数:1000字)

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