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「何があった?」と聞きたくなる英和辞典の例文 [ぷんぷん編]

暇を持て余して仕方ないとき、私はしばしば辞書を開く。おすすめは英和辞典。単語の意味だけではなく、例文も豊富に紹介されていて、飽きない。そしてその例文の中には、「何があった?」と思いたくなるような、唐突な内容のものもあるのだ。

そこで今回は、私が小学6年生の時に買ってもらった「ユースプログレッシブ英和辞典 First Edition」(小学館、2004)から厳選して、想像の膨らむ例文をいくつか紹介していくこととしよう。

I can’t allow that someone fire me with a moment’s notice.
誰かがいきなり私に首を言い渡すなぞ許せない

見出し語:allow (55ページ)

初めにお伝えしたいのだが、someoneは辞書中でもイタリックになっていないので、辞書でよくある「ここには人の名前が入ります」というsomeoneではない。文字通り「誰か」ということだ。

普通、こんな発言をするだろうか。よほど首を切られる心当たりがあるとしか思えない。「誰が言い渡してくるか分からないけれども、誰であっても許せない」というニュアンスだ。いったい、何があったのだろうか。特に、「言い渡すなんて」ではなく「言い渡すなぞ」である。かなりの力が入っている。

次の例文も怒りを感じる。

Even if he comes, I will not talk to him.
たとえ彼が来ても彼と話をするつもりはありません

見出し語:even (637ページ)

この人と「彼」との間に何があれば、ここまでこじれるのか。ほとんど絶交状態といえる。しかも、それを誰かにそれを伝えている点に、意志の強さを感じる。
しかし、考えようによっては、心のどこかでは彼と話したい気持ちが隠れている気もする。ただし、この例文の直後に書かれている補足で、その期待は打ち砕かれた。

(▶even if節は仮定法も可: I wouldn’t forgive him even if he apologized. たとえ彼が謝っても許しはしない)

同上

強い意思といえば、こんな例文もあった。

I’d very much prefer it done differently.
私は絶対別のやり方でやってもらいたい

見出し語:prefer (1371ページ)

これまた不満そうである。よほど気に食わないのだろうが、何があったというのか。話者の立場によっても、言葉の重みも変わってきそうだ。ただ、少なくとも誰も笑顔にならなさそうな爆弾発言ではある気がする。
さて、これらがすべて、辞書編纂者の心の声だとしたら……? なかなか怖いものである。

(文字数:1000字) (引用出典情報の文字数を除く)

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