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10年

2013年
世の中の全てを憎んでいたと言っても過言ではない中学3年生の私の唯一の楽しみは、テレビを観ることをあまり良しとされていない我が家でただひとつ許されていた「音楽番組」だった。特に、スペースシャワーTV。ただただ音楽がずっと流れているこのチャンネルを暇さえあれば観ていた。
色んなバンドが好きだった。オタクだったから主にタイアップをするようなバンドなんかは特に。

両親はビートルズとクイーンが好きで、実家は常にテレビではなく、いいスピーカーでなんかしらの音楽が流れている家だった。

中3の私は絵に描いたようにグレていた。
教室では突然ブチギレて壁を損壊したり、部活では後輩にキレ倒してモラハラ部長だったし、なんかもう毎日常にキレてた。何にキレてたのかはもう覚えてないけれど、常に脳の血の気が沸騰してるみたいな、とにかく世の中全部ムカつくぜ、誰もあたしのことなんか分かんねー、お前らなんかに分かってたまるかって思ってた。

いつものように何かにブチギレながら家に帰り、学校指定の馬鹿デカ・クソ重リュックを床に叩きつけてテレビをつけた。

「感情的になったっていいし 埼京線で吐いたっていいし」
早口で捲し立てられる歌詞の中ではっきり聞き取れたのはそこだけだった。

なんだ、この曲は…
なんて言ってるかほぼ分からねえが、何やらカッコいい曲だ。なんなんだ。これは誰なんだ!

すぐにテレビにかじりつき、曲が終わるまでテレビにへばりついていた。

なんなんだ!!

スマホなんか持ってなかったから、バンド名を覚えて、親のパソコンで色々調べた。

YouTubeにある音源とか聴きまくった。

あれは「衝撃的な出会い」だった。
一目惚れ、この人と結婚するんだ!みたいな、「私はこのバンドを好きになる」って思った。そんな経験は初めてだった。

1番多感だったあの頃の私に、電撃みたいな恋(あえて恋と呼ぶが)が降ってきた。

私がふざけて「畠山承平のリアコです」と言うのは、もちろん普通に彼のことが好きだからなのだが、そんなミーハーでチープなキャーキャーしただけの感情じゃない。私が自他共に認める1番ヤバかった時期に彼は私にあんな歌詞をぶつけてきたのだ。彼の歌詞は彼の魂だと思っているし、あれから私は10年以上彼の言葉を、魂を浴びてきたのだから、彼は創始者であり、私にとっての創造主なのだ。(なんの話?)
ファンの語源は狂信者って読んだことがある気がするけれど、私の場合はまさにそれだ。
歌詞を写経とかしてもいい。全然いい。楽しそう。

そんな私にとっての自我そのものみたいなThe Mirrazだけど、私がやっと出会えたのはクソ貧乏ど田舎を出て、大学に行った春の427だった。
今思えば4月って本当に大学1年生すぎるじゃん。やっとミイラズに会えたんだね。私。よかったね。
あの頃は東京に来てすぐ、原宿のピアススタジオでインダストリアルを開けたんだよね。軟骨から軟骨に棒が貫通するやつね。それをどうしてもやりたかったんだ。
地方からノコノコ出てきて、大学1年生の4月にやったことがいかついピアス貫通させることと、ミイラズのライブに行くことって、我ながらロックすぎるだろ。
耳がまだクソ痛かったので、壁際で耳を守りながらぴょんぴょん跳ねてたのを今めっちゃ思い出した。
原宿アストロホール。
あの時の感情とか、空気とか、今でも新鮮な気持ちで思い出せるなぁ。

初めてこの目で見たミイラズはすっごく近くにいて、涙が溢れたなあ。

今思えばあの頃はバンドも既に色々大変だったんだろうなぁって今だから分かるけど、とにかく念願のミイラズに会えて嬉しかった。

あれから気付いたら27歳にワープしてて最高にウケるのだが、今となって思うことは、「もっとミイラズのライブに行けばよかったなぁ」ってこと。
年4回、チケット代とワンドリンクと交通費を合わせたら奨学金で生活してる大学生には少し痛い出費だったし、それでも東京とか埼玉とかのやつは行こうって当時の自分的には頑張ってるつもりだった。でも、もやし生活したら大阪にも行けた。行けば良かった。コロナ禍になって、ミイラズに会えなくなって、その前からただでさえ一時はこのまま解散なんて脳裏に過ったこともあったし、今度こそって思った。いっぱい後悔した。
でもミイラズはまた戻ってきてくれた。
今度こそ絶対手を離したりしない。
あの頃行かなかった大阪のライブはもう戻ってこないし、もう年に何公演も行けるもんでもなくなったけど、それでもちゃんと戻ってきてくれて私たちに音楽を届けてくれる彼等に私の本気を捧げなくちゃいけない。
大学生の頃なんとなく応援してた他のバンドは、忙しいとか、お金がないとか、社会人になってお金ができたら〜とかそんなこと言ってるうちに解散してしまった。なんなら社会人の方が最初お金はなかったし。

ミイラズが諦めない限り、私も絶対に諦めない。
どんなに曲調が変わったって、まぁびっくりしたこともあるけど、私が惚れてついてきたのは彼等の魂なのだから、どんなになったって大丈夫。ミイラズから受け取るものは私が好きなように勝手に受け取って大事にするから、好きな歌作ったらいいんだ。そういうミイラズについていくから。

ライブも必ず行くからね、親が死んだ時以外行くから、絶対行くから、ずっと待ってるし諦めない。
この曲が世界を変えるって信じてるんだ。

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