マガジンのカバー画像

変態のマッチレビュー

26
私が見て印象に残った・気になった試合にフォーカスしたレビューを纏めております。
運営しているクリエイター

#noah_ghc

復帰戦の効能について考えたこと~2024.6.9『AMAKUSA&宮脇純太vsアレハンドロ&クリストバル』~

はじめに2024.6.9プロレスリング・ノア後楽園ホール大会で、約10ヶ月ぶりに戦列復帰を果たしたAMAKUSA。 その復帰戦を終えてリングを降りる直前、目元を拭い下を向く1人の選手がいた。 彼の名は、宮脇純太。 2016年8月にデビューした、NOAHのJr.ヘビー級レスラーだ。 復帰したAMAKUSAではなく、パートナーを務めた宮脇が泣いている。 何となくだけど、外野から見ていて、思い当たる節は一つだけあった。 2023.8.10、プロレスリング・ノア後楽園ホール

2年越しの理想形~2024.5.29『小峠篤司vs秋山準』~

はじめに 2022.6.12、『サイバーファイトフェスティバル2022』で組まれた『樋口和貞&遠藤哲哉&秋山準vs稲村愛輝&小峠篤司&中嶋勝彦』によるDDTvsNOAHの対抗戦。 戦前に注目を集めたカードにもかかわらず、開始から間もなくして遠藤が中嶋の張り手一発でレフェリーストップ負けという、あまりにも衝撃的な結末で試合は幕を閉じた。 今振り返ってみても相当の賛否を生んだ一戦だったと思う。 私はこの試合そのものの評価を付ける事は出来ないし、それは難しいと感じていたけ

DO YOU WANNA DANCE WITH ME?~2024.4.11『拳王vs清宮海斗』~

はじめに 2010年代後半から、プロレスリング・ノアの看板カードに定着したライバル関係がある。 それは、『拳王vs清宮海斗』だ。 2019年11月の両国国技館メイン、日本武道館でもタイトルマッチが複数回組まれるなど、近年はビッグマッチでの対戦が多い両者の一戦は、これまでに11回実現した。 戦績では7勝4敗で拳王が勝ち越しているものの、直近2試合はGHCヘビー級王座戦で清宮が連勝中。 過去にGHCヘビー級王座戦5回、GHCナショナル王座戦2回と度々タイトルと団体の舵を

squeeze~2024.2.28『拳王&大和田侑vs清宮海斗&大岩陵平』~

はじめに先日、私がプロレスを観戦しに行った時に、カメラで撮影した1枚がある。 SNSで観戦時の写真を投稿すべく選定していた時に、この写真を見つけた。 そして、写真を見た時に、ふと『スクイズ』という言葉が頭に浮かんできた。 スクイズという単語を調べてみると、このような意味が出てくる。 「スクイズ」という言葉が私の脳内に浮かんできたのは理由があった。 以前、タッグマッチなどでコーナーに控えている選手が、相手の首や関節を絞り上げているパートナーの選手に対して「スクイーズ!」

Still Changing~2024.1.21『Good Looking Guys vs 清宮軍』~

はじめに2024.1.2、東京・有明アリーナ メインイベントの『丸藤正道vs飯伏幸太』が終わり、どこか重苦しく淀んだ空気が場内に立ち込める中、リング上に現れたのはジェイク・リーと清宮海斗だった。 怒気を孕んだジェイクの声が場内に響き渡った瞬間、会場は大歓声に包まれる。 その歓声は「よくぞ指摘してくれた」という、観衆からのジェイクに対する敬意を感じ取れるものだった。 続く清宮もジェイクからバトンを受ける形でマイクを握ると、有明アリーナにはメイン前までのような歓声が戻っ

現実と残酷を受容する事について~2024.1.13『拳王vs潮崎豪』~

はじめに圧倒的な敗北感と、突き付けられた容赦ない現実。 2024.1.13に後楽園ホールで行われたプロレスリング・ノアのGHCヘビー級王座戦『拳王vs潮崎豪』を見た、私の率直な感想である。 私自身、この試合は潮崎の事を応援する立場で見ていたし、実際現地で喉が擦り切れるくらい潮崎に声援を送った。 私以外にも、潮崎の名前を叫ぶ観客の姿は少なくなかった。 しかし、会場の声援は、最後まで拳王支持のムードに傾いていた。 会場から自然発生したテンポの速い拳王コールは、私が叫んだ潮

責任~2024.1.2『丸藤正道vs飯伏幸太』~

はじめに2024.1.3、私は相原駅から徒歩十数分の場所で行われた『相原プロレス』を観戦した。 無料のイベントプロレスではあったものの、2試合はどちらも内容が素晴らしく、プロフェッショナルなレスラー・関係者の方々は日ごろの努力と鍛錬が凄い事を実感する機会になった。 プロレス観戦をし始めて2024年で9年目を迎える私だが、今更になって何故このような感想を抱いたのか? それは、前日に大会場で見たメインイベントの内容が、「プロフェッショナルとは何か?」という事を問うような、

一石を投じる 方舟 midnight sun~2023.12.10『潮崎豪&丸藤正道&拳王vs稲葉大樹&マサ北宮&征矢学』~

はじめに2023.12.10に行われたプロレスリング・ノア キラメッセぬまづ大会。 メインイベント終了後に拳王がぶつけた怒りは、有明アリーナに向けた強い決意表明となった…。 沼津大会の約1週間前に行われた、プロレスリング・ノア2023年最後のビッグマッチ・12.2横浜武道館大会。 この日のメインイベントは、既に2024.1.2の有明アリーナ大会で決定しているGHCヘビー級王座戦『拳王vs征矢学』の前哨戦。 拳王の師にあたる新崎人生と、征矢の師にあたる藤波辰爾が、かつての

ユー・メイ・ドリーム~2023.7.15『中嶋勝彦vs宮原健斗』~

はじめに試合が決した瞬間、私は思わず会場で快哉を叫んでしまった。 2023.7.15プロレスリング・ノア後楽園ホール大会で組まれた『中嶋勝彦vs宮原健斗』。 佐々木健介の愛弟子である2人は、健介オフィス退団後、宮原は全日本プロレス、中嶋はプロレスリング・ノアを主戦場に活躍。 その後、因縁がありながらも絡みの無かった両者が再び交わったのは、武藤敬司引退興行の行われた2023.2.21だった。 あれから約5ヶ月後に決まった、実に10年振りという両者のシングルマッチ。 しか

Spirit Inspiration~2022.10.30『清宮海斗vs藤田和之』~

はじめに清宮海斗という名の船は、未だ発展途上である。 鈴木軍が侵攻中だった2015年末、荒波の中で出港した一隻の船は、2017年の海外遠征、2018年のタッグリーグ制覇→タッグ王座戴冠→シングルリーグ優勝を経て、2018年12月に史上最年少でGHCヘビー級王座戴冠を果たした。 トップレスラーの座に向けて進路を取る清宮だったが、2020年1月の王座陥落以降、約2年以上にわたり荒波に揉まれ、苦難の時を過ごしてきた。 厳しい結果や苦難が襲う幾度もの嵐を乗り越えて、清宮に光が差

年齢は、ただの数字である~2022.8.11『杉浦貴vs小島聡』~

はじめに2022.8.11より開幕した、プロレスリング・ノアのシングルリーグ戦『N-1 VICTORY』。 約1ヶ月間にわたり、列島各地で激闘が展開されるリーグ戦の開幕戦で、個人的に興味深いカードが組まれた。 そのカードとは、セミファイナルで行われた『杉浦貴vs小島聡』。 2015年以来、7年振りに実現した一騎打ちであるが、1970年生まれの2人は今年で52歳。 シビアな言い方かもしれないが、この手のシングルリーグでは、ベテラン選手ほど出場機会が減っていく傾向にある。

武器はたゆまぬK.U.F.U.~2022.8.5『稲村愛輝vs岡田欣也』~

はじめにこれは、RHYMESTERの『K.U.F.U.』という曲の最後に登場する一節である。 私は、工夫する大切さを歌うこの曲の事が大好きなのだが、実は、上記の一節は歌詞カードに載っていない。 それでも、宇多丸が放つフレーズの説得力が、私の脳裏に焼き付いて離れないのである。 最近、この曲の一節を、ふと思い浮かぶようなシチュエーションに出くわした。 2022.8.5にプロレスリング・ノアで行われた、『稲村愛輝vs岡田欣也』である。 2018年デビューの同期同士によるシング