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変態のマッチレビュー

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私が見て印象に残った・気になった試合にフォーカスしたレビューを纏めております。
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#すごい選手がいるんです

本気で生きているのなら~2024.6.16『関札皓太vs佐藤孝亮』~

はじめに2022.5.5、大日本プロレス横浜武道館大会。 毎年、こどもの日に横浜文化体育館で開催されるのが恒例となっていた大日本プロレスのビッグマッチは、2020年の横浜文化体育館閉館により、一時的に歴史が絶えた。 そこから約2年後の2022年、横浜文化体育館の斜向かいにオープンした横浜武道館に、大日本プロレスのビッグマッチが帰還した。 その記念すべき第1回大会は、個人的に2022年の年間最優秀興行だと言い切れる素晴らしい内容だったのだけれども、私自身その中で今でも忘

心臓が止まるまでは~2024.2.7『坂口征夫vsHARASHIMA』~

はじめに他人の引退試合というものは、ファンが当事者に接している面積が広ければ広いほど、未練と後悔の割合も自然と多くなっていくものかもしれない。 私は一介のファンでしかないけれど、いつしかそのような感覚で(些か勝手ながら)他人の引退試合を捉えるようになっていた。 怪我が原因で現役を続けられなくなった。 新たな道に進む。 大体そのような理由で引退していく選手を客席から見送る度に、「もっと試合を見ておけば良かった」、「将来楽しみだった」という感情ばかり溢れ出てくる。 私自

既成着てる?個性着てる?~2023.12.31『中嶋勝彦vs宮原健斗』~

はじめに 2023.12.31全日本プロレス国立代々木競技場第2体育館大会 新型コロナウイルス禍以降も安定して後楽園ホールの動員が1,000人を超える数少ない団体・スターダムですら苦戦を強いられている印象の強い代々木第2体育館。 しかも大晦日という日程にもかかわらず、プロレス団体鬼門の地で観衆2,687人をマークした事実は全日人気の高さを窺わせるものがあった。 ただ、私はこの興行に対して一点、悲しく感じる箇所があった。 それは、この日のメインを締めた中嶋勝彦が、20

ユー・メイ・ドリーム~2023.7.15『中嶋勝彦vs宮原健斗』~

はじめに試合が決した瞬間、私は思わず会場で快哉を叫んでしまった。 2023.7.15プロレスリング・ノア後楽園ホール大会で組まれた『中嶋勝彦vs宮原健斗』。 佐々木健介の愛弟子である2人は、健介オフィス退団後、宮原は全日本プロレス、中嶋はプロレスリング・ノアを主戦場に活躍。 その後、因縁がありながらも絡みの無かった両者が再び交わったのは、武藤敬司引退興行の行われた2023.2.21だった。 あれから約5ヶ月後に決まった、実に10年振りという両者のシングルマッチ。 しか

Spirit Inspiration~2022.10.30『清宮海斗vs藤田和之』~

はじめに清宮海斗という名の船は、未だ発展途上である。 鈴木軍が侵攻中だった2015年末、荒波の中で出港した一隻の船は、2017年の海外遠征、2018年のタッグリーグ制覇→タッグ王座戴冠→シングルリーグ優勝を経て、2018年12月に史上最年少でGHCヘビー級王座戴冠を果たした。 トップレスラーの座に向けて進路を取る清宮だったが、2020年1月の王座陥落以降、約2年以上にわたり荒波に揉まれ、苦難の時を過ごしてきた。 厳しい結果や苦難が襲う幾度もの嵐を乗り越えて、清宮に光が差

"企画モノ"を超越した新人デビュー~2022.10.23『上谷沙弥&妃南vsフワちゃん&葉月』~

はじめに2022.9.11、プロレス界で話題となったニュースがある。 フワちゃんのプロレスデビュー。 後に、これはテレビ番組(『行列のできる相談所』)の企画であると明かされ、それに向けて4ヶ月半もの練習期間を積んだという。 前置きすると、私は、フワちゃんの事をあまり知らない。 普段テレビを見ない私でも、かろうじて名前は聞いたことがある人だけど、彼女がYoutuberだという事は今回のプロレスデビューで初めて知ったレベルだ。 今回のプロレスデビューに対し、「4ヶ月半の

若人の 活気と熱気に 満ちた磁場~2022.10.15『星野良&佐藤嗣崇&北村彰基vs馬場拓海&松永準也&太嘉文』~

はじめに「プロレスリングZERO1所属の若手選手は、過小評価されている」 何度か試合を生で見ている中で、私自身感じたことだ。 ZERO1の団体規模は決して大きくないし、過去には主力選手の退団でピンチを迎えた事もある。 田中将斗や、現在欠場中の大谷晋二郎の存在感に加え、2021年は外敵に管轄しているベルトが流出したこともあって、「若手が不甲斐ない」と言う意見も見かけたりした。 でも、果たしてそうなのだろうか…? 冒頭の私見に至った理由は、極めてシンプルだ。 今のZER