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煉瓦と目地が主役"熊谷文化創造館"

私の地元、埼玉県熊谷市の有名建築物、熊谷文化創造館。何度か舞台に立ったこともあるが、何かしらの市のイベント、知り合いのコンサートを聴きに行ったり、手伝いに行ったりすることが多く、じっくり建物として堪能することがなかった。
大河ドラマで渋沢栄一がフォーカスされたことでこの煉瓦を思い出した。

この建物は市の文化会館として1998年に池原義朗氏の設計で建てられた。太陽のホール、月のホールに加え屋外劇場の風の劇場によって構成される。煉瓦造りの建物にガラスのボックスが取り付けられたガレリアが特徴的である。


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1.煉瓦建築を支えた日本煉瓦製造のお膝元

渋沢栄一の故郷として注目を集めた熊谷のお隣の深谷。
日本でも近代建築が増え、煉瓦の需要が高まった1887年、渋沢栄一の立唱により日本煉瓦製造が設立された。元々瓦の製造が盛んだった彼の地元である深谷にホフマン輸窯などの製造拠点が置かれた。
この深谷で製造された煉瓦が東京駅、東京裁判所、山手線の高架などに使われている。

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100年の時間を経て、今また煉瓦製造の技術がお隣の熊谷で駆使されたことは、感慨深い。

2.レトロでもモダンでもない煉瓦と目地の主張

煉瓦建築と聞くと、赤煉瓦倉庫のようなレトロな印象を抱く。しかしこちらの建物は仕上げ材に煉瓦を使用しているだけで、建物のデザインとしてはいたってシンプル。外部からブリッジを渡ってくるとガラスのガレリア空間に繋がり、ホールのエントランス部分に到着する。内外を繋ぐ曖昧な空間に煉瓦の壁が存在感を放つ。ホールへ入ってもロビーの壁や至る場所に、出血大サービス的な感じで煉瓦が使われている。しかも煉瓦の目地はかなり幅広のモルタルがやや粗っぽく詰められていて、東京駅の煉瓦と印象が全く異なる。目地ひとつで煉瓦の表情も穏やかだったり力強かったりする。目地に思いを馳せるのも楽しい。全部の目地詰めるのにどれだけ時間がかかったのだろう、と想像するのも楽しい。

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3.畑の真ん中にあるから全方位建物が見渡せる

この建物は熊谷駅最寄りではなく、お隣の籠原駅最寄り、夏に歩くとバテる距離。周囲は田畑が広がり、美味しいネギが採れる。建物が全方位、1キロ以上手前から確認できる。これが田舎のよいところ。都心でせっかくファサードにこだわっても隣接建物に被ってたら、日の目を見ることはない。

近代建築を支えたその片鱗を、私の地元で体験できるのは嬉しい。そして渋沢栄一氏が深谷出身でなければこうやって隣の熊谷に立派な煉瓦建物ができることもなかった。偉大な渋沢氏を誕生させた深谷に感謝!

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