東野圭吾作品④「魔力の胎動」
東野圭吾作品「魔力の胎動」を紹介します。
⚠️以降ネタバレ含みます。
あらすじ
「魔力の胎動」は、ラプラスシリーズの「ラプラスの魔女」に次ぐ作品です。
全5話のショートストーリーになってます。
主人公は、前作「ラプラスの魔女」でも登場した不思議な力を持つ羽原円華と
鍼灸師として師匠から跡を継いだ工藤ナユタ。
前作についてはこちら↓
感想
第一章から第四章は前作「ラプラスの魔女」より少し後の物語で、第五章はそれよりも前の物語。
「魔力の胎動」自体はショートストーリーになってるのでこれだけでも読めますが、第一章~第四章は前作の登場人物も出てくるため、「魔力の胎動」から読むと話しの内容が少し分かりにくいです。
従って、「ラプラスの魔女」から読んだ方が良いと思います。
前作にも書かれてますが、羽原円華は子供の頃に竜巻事故によって母親を亡くし、
「私が竜巻を予測出来たら助かった」と言っており、その時に自身の父親である天才脳外科医の羽原全太郎の手によって、植物状態であった甘粕謙人が目を覚ました。
謙人は全太郎の手によって脳にパルスを埋め込まれており、ちょっと先の事を予測する不思議な力を持つようになった。
円華は謙人の話を聞いて、自分もこの力を身に付けたいと父親に頼んで、「ラプラスの魔女」となった。
その円華が、本作品「魔力の胎動」で迷える人を救っていった。
全ては、子供の時に起きた竜巻事故によって亡くした母親のためである。
だから、「困っている人を助けたい」と円華は言っている。
危険な事でさえも困っている人を助けたいと思ってるからこの点は見習いたいものですね。
無論、この場合、円華にはタケオというボディーガードが付いてるので、安心できるのだが。
第三章では、ナユタの恩師であった石部の息子・ミナトが植物状態になっていると聞いて、過去にも謙人が事故で同じ状態であったが復帰したので(実際は事故では無い)、どうしても助けてあげたいと思ったのだろう。
第四章では、映画監督・甘粕才生の事を知ろうとしたら、ナユタもこの甘粕才生によって苦しめられたからナユタを助けてあげたいと思ったのだろう。
「『どの道で迷っていようとも』きちんと正しい場所に戻れる手助けをしたい」と……
弱冠20代にして円華は正義感が強いですね。
ここで、とても感銘を受けた部分を抜粋します。
第四章の所で、盲目ピアニスト・朝比奈が自身がゲイであると告白した時に言った朝比奈の言葉。
円華がこれを聞いて、謙人の言葉を思い返した。
↓
円華自身、この言葉は素敵な考え方だと思ったが、盲目ピアニスト・朝比奈の言葉を聞いて、
「いつも良い方向にだけ流されていくわけじゃない。無自覚な偏見や差別意識の集積が誤った流れを生み出す事もある」と少し考えが変わったと言っている。
人間色んな人が居て、健常者や障害者、健常者であったとしても性について悩みを抱えた性的マイノリティの人たちもいる。
どんな人にしても「人間は原子」という事である。
昔なら、こういう差別や偏見は当たり前に行われてあまり言われてこなかったけど、今はこういう事があってはならない。
あったとしてもすぐ炎上するだろう。SNSが普及してるから。
SDGsもこういう取り組みを行っている。
見た目普通と違っても平等に接しなければいけないですね。
「人間は原子」だから……
朝比奈は、この1人1人の小さな違和感や違いを「津波」と表現している。
津波は自然現象の1つで、あっという間に呑み込んでいく。
それと同じように、人間の間違った認識や違和感も津波のように呑み込まれる、即ち、すぐ広まってしまう。
難しい事だけど、1人1人が考え方を改めないとこの「津波」は消せないだろう。
この朝比奈はカミングアウトした方が良かったか良くなかったかは定かではないが、どちらにしても事実を受け入れて1人の人間として平等に接しないといけない。
受け入れる事自体は気持ちの問題ではあるが…
「どの道で迷っていても」その人が生きやすい道を選んで周りの人はそれをサポートしないといけないですね。
1人1人唯一無二だから。
改めて考えさせられます。
ラプラスシリーズは物語が劇的に変化していくから、東野圭吾さんはやっぱり凄い。
ラプラスシリーズ第三作品は「魔女と過ごした七日間」。
こちらもまた期待作品です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。