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「明日に向かって走れ」エレファントカシマシ 13th single レビュー

「明日に向かって走れ」  1997年(平成9年)2月19日リリース

※現在は廃盤となっています。(ただしサブスク配信済み)

今日は、「明日に向かって走れ」のレビューです。今からなんと27年前に出たシングルなんですねこれ。(30年近く前というのが驚き)
今回はシングルの方のレビューで、同時期に出た同名のアルバム(こちらは月夜の歌というサブタイトルがついている)ではないので、お間違いのなきよう。こちらはまた7月にレビューする予定なのでお楽しみに!

収録されているのは、「明日に向かって走れ」と「ふたりの冬」ですが、どちらもポニーキャニオン時代のエレカシの雰囲気満載な歌で、スローテンポに抒情的な詩は、まさに96年~98年のエレカシの楽曲そのものです。エレカシのポニーキャニオン時代はたったの約3年間で、その間にリリースされた作品も決して多くはありませんが、それさえも忘れさせるくらいにこの時代の歌は1曲1曲が濃く、リスナーを全く飽きさせません。もちろんエピック時代に比べればロック色は大分薄まり、大衆向けのポップスを意識した音作りになっていますが、ポニーキャニオンに移籍した頃を境に、エレカシはエピック時代の面影も残しつつ、新たな音楽性を切り開いたのです。

「明日に向かって走れ」、「ふたりの冬」2曲共にアルバム「明日に向かって走れ -月夜の歌-」に収録されていますが、いずれもアルバムバージョンでありミックスが異なっています。「明日に~」は後にベストアルバムにオリジナル版が収録されましたが、「ふたり~」のオリジナル版はこのシングルでしか聴くことができません。しかも廃盤のため、このシングルはそれだけでも価値のある一枚でしょう。

1.明日に向かって走れ
「突っ走るぜ明日も」というサビのフレーズでいきなり曲が始まる。「突っ走るぜ」は「ラファ#ミド#シラ」という降下型のメロディで、何ともキャッチーなメロディである。エレカシのポニーキャニオン時代はエピック時代に比べ、キャッチーなメロディが増えたような印象である。
この「明日に向かって走れ」というタイトル、同時期にリリースされるアルバム名にもなっている。この歌はその「明日に向かって走れ -月夜の歌-」の1曲目であり、同時にアルバムの表題曲としての役割も果たしているのだ。明日に向かって走るというのはこの時期のコンセプトなのかもしれない。実際、アルバムの全曲を1つの歌に凝縮したかのような歌である。
冒頭のフレーズの後に続くのは、「多分明後日も」という歌詞である。明後日は確信がない、のではなく、明日になれば「明後日」は「明日」となるから、明後日以降は今は知らない、つまりは「今日を終えて明日を突っ走る」という「明日」のみに焦点を当てているという意味になるのだ。
「この世はいつだって 突っ走るだけさ」というフレーズは、この時期の歌の象徴のように聞こえる。「突っ走る」または「走る」という単語はポニーキャニオン時代のエレカシの歌詞に頻繁に登場する。

2.ふたりの冬
「枯れ葉」や「輝く季節」といった言葉やメロディから冬の情景が連想される、8分の12拍子のナンバー。歌詞は一見ラブソングだが、深読みすればするほど別の意味になる。人生を歌っているようにも聞こえる。「枯れ葉踏んでゆこう そうさ冬の町へ」というフレーズからは、次のような意味が読み取れる。「冬」とは秋ごろから見れば次の季節である、つまり次のステップである。よって「冬の町」とは人生における次の段階の比喩表現にもとれる。そして「枯れ葉」とは、木が新たな葉をつけるために場所を開けてくれた後の葉っぱであり、これはこれまでの記憶や想い出の象徴である。枯れ葉を踏むというのは、過去のことは失敗も含め全て水に流すことの比喩表現である。
最後のサビにある「そうさどこへも行けやしないさ」というフレーズが意味するものは、人生は前にも後ろにも進めない「今」という瞬間の連続、つまり後戻りできるわけがないということだろう。

3.明日に向かって走れ(オリジナル・カラオケ)
表題曲のボーカルなしバージョン。余談だが「明日に向かって走れ」は歌唱難度が高いと思う。

いかかがでしたか。早いもので2月もあと少しとなってしまいました。今月のレビューは来週公開予定の「普通の日々」が最後になりますが、3月はレビュー盛沢山です。エレファントカシマシおよび宮本浩次ソロの作品は3月リリースのものがかなり多いのが分かりました。忙しくなりそうです(だけどレビュー書くの楽しいからいいや)。

「明日に向かって走れ」(4分35秒)
収録アルバム 「明日に向かって走れー月夜の歌ー」(アルバムミックスとして収録)、「エレファントカシマシ SINGLES 1988-2001」
タイアップ NHK「ポップジャム」エンディングテーマ
調 イ長調

「ふたりの冬」(3分44秒)
収録アルバム 「明日に向かって走れー月夜の歌ー」(アルバムミックスとして収録) ※オリジナルバージョンはアルバム未収録
タイアップなし
調 イ長調

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