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【還暦のメロス】⑭

幼稚園は、山下幼稚園という市立の小さなところに1年だけ通った。
しかしながら、ほとんど何の想い出も残っていない。

ただ一つ忘れないのは、園庭の目の前が茶色の切り立った崖になっていて
その向こうは羽黒山という小高い丘。園の庭はそのために狭くて、走り回ったり、みんなで追いかけっこをしたりするスペースもないほど狭かった。

その目の前の崖の斜面に登って、化石探しのふりをして、小さなシャベルで土をいじくっていたのが、ただ一つの私の楽しみだった。そもそも化石など出る地帯ではない。赤土だけで、積もった小高い丘。近くに海や川があったわけではないから、化石とか出るわけないでしょって場所。

ただ私は小さいころから土をいじるのが好きな「土フェチ」だった。その斜面の土をシャベルでこねくり回しているだけで、楽しいのだった。

だから幼稚園時代といえば、「化石探しのふりをした土いじり」の想い出しか浮かばない1年間だった。
人生の中で一番退屈だった年が、幼稚園時代なのであった。

その後の小学校一年の頃から、私は野原を駆け回る少年時代をずっと過ごすことになる。そして僕はその小学校時代に、人生の基礎?または土台を作っていったのであった。

              ~~⑭へつづく~~~

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