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ひぐらしが、鳴いていた。 夏の終わりのあの声が、どうしようもなく切なく、俺の耳に届いて、何故だか泣きそうになった。 ああ、そろそろ夏休みも終わるな。 夏休みに入ったばかりの頃、俺は瑠璃にデートに誘われた。もちろん断る理由もないのでその誘いを受けた。 デート、と言ってもそれは形だけで実際は夏の暑さに抵抗しながら街をフラフラしただけだった。 ……いや、もしかしたら瑠璃はもっと別のことをしたかったのかもしれない。 記憶を絞り出すように数週間前のあの日を思い出す。 瑠璃が言