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リーンスタートアップ▶️オープンイノベーション?(後編)

前回に続き、論文の紹介をしていきたいと思います。

今回もこちらの論文をベースにご紹介いたします。

前回は、リーンスタートアップについての解説と、大企業の導入する上での課題について述べてきました。(前回の記事をご覧になられていない方はこちら。)

大企業にとって、リーン・スタートアップを導入するときの課題として3つありました。それは、
1、ビジネスモデル
2、企業方針における厳格な制約
3、現在の企業の役割
です。
一つずつ見ていきましょう。

1:ビジネスモデルに縛られる

スタートアップの場合は新しいビジネスモデルを生成して、起業しスケールしていくが、大企業の場合は、既存ビジネスモデルへの置き換えや追加が発生します。ゆえにビジネスモデルの「対立」が起きます。
人間の心情として考えて欲しいのですが、既存のビジネスモデルを担当しているマネージャーから見れば新しいビジネスモデルで事業運営が始まったら、どのように考えられるしょうか。
あまり良く思えないのではないでしょうか。

ゆえに、ビジネスモデルの再構築(置き換えや追加)が難しい理由は、合理的な経営者が、新しいビジネスモデルを積極的に弱体化させてしまうということが起こり得るといいます。

それは、管理プロセス(ビジネスプロセスルーティン)や、組織学習(現在の情報網と組織内での理解様式)などの組織内の課題によるところが大きいようです。

また、過去20年間のビジネスモデルを調査した研究者によれば、ビジネスモデルの構成要素の種類は180種類にものぼり、その組み合わせは計り知れないものとなります。
ゆえに、経営者にとっても従業員にとってもビジネスモデルの理解が追いつかないことは当然のことのようです。

自社の再構成されうる経営資源は、すでに確立されたものであり、それを別の形で運用するということは硬直性と柔軟性を失うことに他ならず、「リーン・スタートアップ」は実現されにくいのです。

2:企業方針と厳格な制約

ここでは、リーン・スタートアップを採用したと仮定して、どのような問題が発生するのかについて、見てみたいと思います。

MVP

MVPとはリーン・スタートアップの重要の概念の一つですが、大企業の製造・品質担当者にとってじゃ「手っ取り早く汚い」アプローチと捉えられることもあるでしょう。また、営業などの現場からすれば「(今までの品質と比較して)こんなガラクタを顧客に売りつけなければならないのか!」となるからです。

顧客発見

これは、開発者が購入の意思決定をすることができる顧客と直接話をしてフィードバックを得て最も重要な最初の販売を行うために必要な学習をするものでした。
しかし、あらゆる大企業には営業部門が存在しており、会社の売り上げを担っております。
もし上記のようなことを開発者にやられたあかつきには、購入を遅らせるまたは購入しない理由づくりの手助けをしてしまうかもしれません。
そのようなことを容認するのは難しいでしょう。

調達組織

大企業では、調達機能はコスト削減、納期の改善、主要なサプライヤーの管理能力で評価されます。
一方で、リーンプロセスでは、一箇所のサプライヤーから小ロットの供給をします。それは迅速な学習をするのを助けます。
つまり、大企業が調達組織を利用するとなると、「迅速な学習」の機能を阻害する要因になりうるということです。

上記の機能を見てわかる通り、大企業の方針に従えば、リーン・スタートアップは制限を受けるどころか、そもそも機能しにくいことがわかります。

3:現在の企業の役割

スタートアップであれば、効果的なビジネスモデルを模索する責任も新モデルに「ピボット」する責任もCEOに依存しますが、大企業であればCEOの役割は異なり、現在の事業から期待される効果を上げることが求められます。また、創業者は現場から離れていることがほとんどで、CEOも別のものが担当していることが多いようです。
また、セールス、マーケティング、オペレーション、エンジニアリング、ファイナンスの役割を担うマネージャーは他部所にまたがったコラボは得意ではないと思われます。
つまり、スタートアップのCEOのような振る舞いができる者がいないということです。

大企業でリーン・スタートアップを導入するためには、慎重にボトムアップする形と思慮深いトップダウンで交渉するような仕組みの両方が必要であるといえます。

リーン・スタートアップに活かされるオープンイノベーション

ようやくタイトル回収。
これまで上げてきた課題を解決する方法としてオープンイノベーションがあります。
新しいプロジェクトで外部の関係者と提携したり、協力したりする場合、1から始めるのではなく、イノベーションの真っ只中から始めることができます。
つまり、協力しているパートナーから開発の協力であったり、実証済みのものを利用することができるという事です。
それによって、市場に参入するための時間と費用の両方が節約され、リーンな結果が生み出されます。

これまで、オープンイノベーションの内部の部門では、社内アイデアが組織外に出ることを可能にする方法が数多く存在していましたが、それらを率先していく具体的なプロセスは示されてこなかったといいます。ゆえに、リーン・スタートアップはそのようなプロセスを提供します。
また、大企業にとっては外部からのオープンイノベーションは社内での緊張感を緩和することができます。
例えば、今までであれば、少量の調達が難しかったのが、ベンチャーの力を利用することで可能になるなど、従来はイノベーション部門が社内政治によって工数が割かれていた事柄に対して、圧倒的にショートカットができるということです。

また、大企業に眠っている技術をライセンスアウトという形で、ベンチャー企業に提供することもあります。ライセンス収入を自社の新製品や新サービスのためのコストに充てることも可能です。

例えば、自社と競合しないライセンスの使用で収入を得て、必要な知的財産は保護するというようなことも可能です。

また、このモデルは新しいビジネスモデルが価値があり、スケーラブルということが明らかになった段階で、資本業務提携や買収などでプロジェクトを社内で取り込むということも可能です。

最後に

起業は大企業の小さなバージョンではないので、事業計画プロセス新しい事業を立ち上げるのには貧弱な方法です。

リーン・スタートアップとオープン・イノベーションの間には豊富な相互作用があります。
 しかし、リーン・スタートアップ・プロセスは、大企業内で働く場合には、適応させなければいけません。
そのためにはイノベーション・プロセスからビジネス・モデルの再編成、大規模組織の文化、さらには組織が現在および将来のビジネス・モデルに向けて用いる考え方まで、さまざまなレベルで行う必要があります。
 適切なオープン・イノベーションに基づいたリーン・スタートアップ・アプローチによって、大企業のイノベーション促進部署は、社内の営業を含むビジネス系の部署を関与させるために必要な初期の顧客を見つけ、社内の死の渓谷を通してプロジェクトを遂行し、会社の新たな領域で新たな成長を達成することができるでしょう。

オープンイノベーションについて知りたい方はこちら。

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