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「月は傾けど」 (藤山一郎)。

すっかり開いてしまいましたが、久々にレコレポを。これは藤山一郎の歌う「月は傾けど」で、森岩雄作詞、井田一郎編曲とあります。原曲は1928年のドイツ・タンゴ“Oh donna Clara”でありまして、アービング・カエサル&イェール・ペテブルスキーのコンビで書かれました。ウォーリング・ペンシルバニアンズを始めとして多くのカバーが出ており、日本でもハイカラ層に好まれます。昭和6年には宝塚少女歌劇による大レビュー「ローズ・パリ」の挿入歌に用いられ、白井鐵造の歌詞で草笛美子が素敵なソプラノで歌ってより知名度を高めました。ちょうどその頃に、コロムビアからデビューしたのが藤山一郎。音楽学校在学中の身である為に素性を隠していましたので、吹き込み料しか貰えない“アルバイト歌手”だった訳ですが、意外やその人気は一曲毎上昇していたのです🎼。

「月は傾けど」は、藤山一郎が吹き込んだジャズソングの一つです。昭和初期にジャズアレンジャーとして活躍した井田一郎が編曲し、針を下ろすとトライアングルの音色から曲はスタート。前唄のパートを奏でた後で歌に入ります。藤山は特にジャズっぽくはなく、いつもの囁く様な透き通る声で歌っております。伴奏はバンジョー、鐘、トランペット、サックス等。そのサウンドは夜の帷の様な厚みがあり、恐らく月夜の男女の逢瀬を描いてるのでしょうか。中々ムードある編曲となりました。当時の藤山一郎は「キャンプ小唄」や「酒は涙か溜息か」等、一連の古賀メロディで売ったイメージがありますが、実際は此の様なジャズソングや各地の新民謡を歌うなど、二十歳の音楽学生は紛れもない人気歌手となっていたのです。裏は淡谷のり子の「此の唇が罪なのよ」が組まれていました😀。

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