「寂しい楽天家」 (阿部徳次)。
阿部徳次の歌う「寂しい楽天家」。佐谷戸真利作詞、文芸部編曲とあります。此の歌を発売しているのは太陽レコードという、ラベルの絵がとても微笑ましい会社ですが、勿論今は存在しないレーベルです。此の手の会社は規模にもよりますが、最低限の設備と文芸部を有する以外、歌手や演者などの人材は全てゲストによって成り立っておりました。従って印税契約もなく、その場限りのギャラ(概ね20〜25円程度)が支払われる程度であり、宣伝力の低さもあって殆どヒットは望めません。昭和7年春に登場した太陽レコードは、一枚一円という少し安めな価格なのですが、主な販路は普通のレコード店ではなく、専ら銀座等に出ていた夜店でした。それでも同社はエノケンや二村定一、実績のある声楽家の内田栄一が吹き込む等、マイナーにしては中々攻めたラインナップだったのです💿。
さて此の「寂しい楽天家」ですが実は外国曲でして、原曲はオーストリア民謡の「可愛いオーガスティン」と云います。シンプルで可愛らしい三拍子のワルツであり、覚え易さも相まってかテレビCMのBGMに多用されており、恐らくメロディだけならお聴きになられた事があるかと思います。歌うのはテノール歌手の阿部徳次であり、彼はポリドールやコロムビアでも録音したメジャー・シンガーでした。ややニヤけた歌唱をする人なので、此の様なコミックソングも似合ったのでしょう。歌詞は四番構成で、不景気には泣かされるし、女性には振られるわで、だけど気にせずに楽しく生きる様が呑気に歌われます。間奏には「洒落男」のメロディがバイオリンの演奏で現れる等、著作権に疎かった時代が偲ばれます。A面は其の「洒落男」を歌った二村定一の「のんびり暮らせ」でした😀。
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