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サンドイッチマン物語 (鶴田浩二)。

鶴田浩二の歌う「サンドイッチマン物語」。宮川哲夫作詞、吉田正作曲で、俳優として大活躍した鶴田が吹き込んだ内の一曲です。大正13年に兵庫県で生まれた彼は本名を小野榮一と云い、その後親の事情で母の実家がある静岡県浜松市に移ります。家庭環境はとても悪く陰惨な少年時代を過ごした彼ですが、救ったのは役者への道でした。高田浩吉に拾われて彼の劇団に属する傍ら、高等学校への進学も果たすのですが、時代は戦争只中。学徒出陣で海軍航空隊の基地要員になり、多くの特攻隊員を見送った辛い経験が後に鶴田浩二と云う役者の糧の一つになるのです。戦後松竹から新人スターとして売り出し、少女時代の美空ひばりと共演して瞬く間に人気を獲得。ルックスも良く、高田浩吉から歌は武器である旨鍛えられた彼は、昭和25年に「男の夜曲」で歌手デビューしました🎙️。

「サンドイッチマン物語」は、ビクター移籍後に吹き込んでヒットした「街のサンドイッチマン」の姉妹作です。作詞作曲も同じ顔触れであり、前曲の作風を活かしつつ間奏には小さな弟を気遣う台詞が出て来ます。胸と背中にキャバレーの看板を抱えて、手にはプラカード。通行人の目線を浴びながら繁華街を行く哀しさを、鶴田は侘び寂び込めて歌いました。台詞のバックではアルトサックスやトランペットで「街のサンドイッチマン」が奏でられ、映画のワンシーンを思わせます。それにしても歌詞にある“せめてなりなよ、人並みに…”には身がグサグサ来ますね。世間の底辺に生きながら、そして苦しむ人が一向に減らない今日ですが、その彼等を描いた歌は今は殆ど姿を消してしまいました。こう云う社会派的な歌謡曲は、その当人らにどう響いていたのでしょうか…気になる所です🤔。

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