見出し画像

すみだ川 (東海林太郎、台詞・田中絹代)。

東海林太郎の歌、田中絹代の台詞が入る「すみだ川」。佐藤惣之助作詞、山田栄一作曲で、これまた東海林太郎の名を輝かせる名曲です。昭和8年に35歳でデビューした彼は、当初はキングレコードで歌っておりましたが、たまたまポリドールで入れた「赤城の子守唄」がブレイクした事もあってか、主たるヒット曲は同社から出るようになります。キング独立後はポリ一筋となるのですが、同時にそれは同社の黄金時代の幕開けでもありました。「国境の町」「旅笠道中」「野崎小唄」「お夏清十郎」と、次々とホームランを打ち続ける東海林。ある時ラジオの流行歌トップテンに出演する為スタジオに行くと、なんとランキング曲全てが自分の持ち歌であり、事実上ワンマンショーになったと云う逸話もある程。早くもデビュー四年を迎えて企画されたのが、此の「すみだ川」でした😀。

ラベルに“東海林太郎専属三周年記念”と記される程の一押しの新譜である此の歌は、時の人気女優の田中絹代が台詞を入れているという絢爛な作りです。これより前に全く同じ顔触れで「雨の夜船」と云うタンゴ歌謡を入れたのですが、今度は正反対に和風な一曲となりました。田中が扮するのはうら若き芸者、歌う東海林は三歳上の身分の良い青年と言った感じであり違和感のない組み合わせ。江戸の昔より隅田川は絵になる場所であり、その河岸での逢瀬を情緒豊かに歌います。田中は台詞は実に清純なもので、一言一言がしおらしく古き世の日本女性の片鱗が垣間見えます。東海林もしっかりと前を見据えた様な歌い振りで、とても40歳前に思えない若々しさが溢れていました。此の裏面は彼のソロによる文学歌謡「高瀬舟」が組まれ、レコードは昭和12年初頭に発売されています😀。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?