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グッドバイ・マイ・ディアー (水の江瀧子)。

水の江瀧子と松竹少女歌劇団声楽家生徒連による「グッドバイ・マイ・ディアー」。田賀甫(はじめ)作詞、仁木他喜雄編曲で、同劇団公演「巴里・モンテカルロ」の主題歌の一つです。昭和8年に松竹少女歌劇団のスター達が待遇改善を求めたストライキ、所謂「桃色争議」が起こったのですが、その中心人物こそ“ターキー”こと水の江瀧子でした。結果的に彼女らの活動は勝利を収め、その後暫しの謹慎期間が解けるや否や、名作「タンゴローザ」を始めとして、松竹歌劇は勢いも新たに西の宝塚歌劇団と張り合う人気を獲得。無論、華は云うまでもなくターキーにあり。本格的な男装の麗人たる彼女は、熱狂的な人気の只中にあっても中々歌う事を良しとせず、ブレイクして数年後に漸く「カマラードの歌」でその肉声をレコードに刻みました。「グッドバイ…」はその2枚目の新譜です🎼。

此の「グッドバイ・マイ・ディアー」は作曲者不明ですが、一説では此の頃に吉本興業の招きで来日公演をしていた、アメリカのエンターテイナーグループ“マーカスショウ”が、舞台で披露した曲を頂いたものと言われています。三番構成の緩やかなワルツであり、一番を水の江、二番を生徒連、三番で共唱という流れ。仁木の編曲はやや無難な出来で、バイオリンやクラリネット等が朝靄の様なソフトなサウンドを奏でており、友との別れの時を惜しむかの様に優しさと切なさを湛えた一曲となりました。曲名にある『マイ・ディアー』とは劇場に来てくれた観客達を指しており、また次回の公演もよろしくお願いします…と云うスター達の願いが込められているのです。此の曲が用いられた「巴里・モンテカルロ」は昭和9年11月に新宿第一劇場で上演が開始され、演目共々好評を得ました😀。

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