歴史研究719号を刊行いたします
2024年4月末に『歴史研究』719号を刊行いたします。
本号の特集は、「下剋上――後世につくられた虚像を剝ぐ」です。
長尾景春VS上杉顕定、細川政元VS足利義稙、宇喜多直家VS浦上宗景、鍋島直茂・勝茂VS龍造寺高房、徳川家康VS羽柴秀頼の5つの事例を取り上げ、第一線の研究者たちが最新研究をもとに、下剋上の実態についてとらえなおしていただきました。
戦国時代には、下位身分の人物が上位身分の人物を倒して実権を握る「下剋上」が頻繁に起こったとされています。歴史好きのなかでもとくに戦国時代好きが多いのは、社会のしがらみに捕らわれず、能力次第で誰でも頂点に立つことができる、という「下剋上」のイメージにロマンを見出している人が多いからかもしれません。
しかし近年、研究の進展によってこうした「下剋上」イメージは覆されてきている傾向があり、戦国時代であっても身分秩序は大きな影響力を持ち、戦国武将たちも室町時代以来の体制を維持しようとする意識があったことが指摘されています。
今回の特集では、気鋭の研究者の方たちにご寄稿いただき、従来「下剋上」とされてきた五つの事例を取り上げました。
【目次】
カラーグラフ 下剋上
歴史ジオラマのせかい 上総国分尼寺
武士の美 豊臣秀吉子飼の家臣・加藤嘉明所用の甲冑
巻頭随想 いま、伝えたいこと
新設される皇族女子宮家の在り方 所 功
特集 下剋上――後世につくられた虚像を剥ぐ
戦国時代のはじまりを告げる長尾景春の乱――長尾景春 VS 上杉顕定 駒見敬祐
実は下剋上ではなかった明応の政変――足利義稙 VS 細川政元 小池辰典
梟雄ではない? 宇喜多直家の実像――浦上宗景 VS 宇喜多直家 石畑匡基
野心なき下剋上――龍造寺高房 VS 鍋島直茂・勝茂 中村知裕
天下の下剋上・大坂の陣――羽柴秀頼 VS 徳川家康 草刈貴裕
新発見! 文化財ニュース 編集部
研究ノート
(天正六年)霜月十四日付小早川隆景書状写の解釈について――姫路「黒田氏」の去就をめぐって 宮野宣康
縄張り図で読み解く近世城郭 最終回
大坂城――三期にわたる公儀普請で完成した名城 髙田 徹
戦国の国衆文書を読む 第21回
豊島貞継、福田民部少輔に三艘分の荷送の許可証を出す 久保田順一
大和王権と古代氏族 第23回
出雲氏の神話と実態 松尾 光
文化教養講座 歴史の質問帳(第29回)
江戸前寿司の〝江戸前〟の意味 渡邊洋一
学生招待席
歴史教科書にみる歴史学の時代像と歴史実践の在り方――歴史の主体(アクター)とは誰か 津島聖也
地域史新論
井上源三郎の来歴と新選組での活動 井上雅雄
地域史新論
井上松五郎と幕末 夢酔藤山
史談往来
【会員随想】崇徳上皇と随従し下向した公家――郷土の秘話 漆原孝則
いつから写楽は「謎」になったのか? 高井 忍
キリシタンを救った「鎌倉こうしょう寺」 きし亀子
【掃苔行脚】将軍家治の乳母や老中の実子が眠る五井松平家の墓――杉並区大圓寺 加藤健太郎