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「愚者のエンドロール」(2017年10月21日)

「明日の選挙、どうなるんだろうね」。
 
 第48回衆議院議員総選挙の前夜のことである。ロシア・東欧学会の懇親会の打ち上げが、中央線国立駅の近くの居酒屋の個室で行われていた。個室といっても、「大個室」をつなぎあわせて、二つのシマに事実上分かれていた。筆者のテーブルにいたのは、大野正美(朝日新聞)・常盤伸(東京新聞)・名越健郎(時事通信OB)・上野俊彦(上智大学)・兵頭慎治(防衛研究所)。【所属は当時。敬称略。以下、ほぼ同じ】
 
 当夜の宴席の記憶を思い起こすと、兵頭先生がこまめに二つのシマを行き交い、上野先生が途中からこちらのシマに入ったと記憶している。兵頭先生はロシア・東欧学会の事務局長を2015年までつとめていたので、顔が広い。大御所・大先生・若手・学生と気さくに話していた。
 
 上野俊彦先生はロシア・東欧学会の理事長といえばよいのだろうが、「上坂すみれの恩師」というのが世間では最もインパクトのある「肩書き」である。ロシア学徒である筆者が浅学非才を理由にするのはいかがかと思うが、上野俊彦先生は筆者が幹事をつとめた異業種交流会の勉強会の講師を何度も引き受けてくれた恩のある先生なので、「ご指導ご鞭撻」よりも、「お人柄」に接することが圧倒的に多い。
 
 かくいう筆者も、「大阪府警外事警察(ロシア担当)の民間協力者(2006-2018)だった」と言ってKindleも出版しているイタい中二病だと思われているので、上野俊彦先生を「上坂すみれの恩師」とご紹介するのが、本稿をお読みの方にとって理解しやすいと思う。
 

 
 上野俊彦先生は、学生・卒業生を大切にする先生である。上坂すみれさんが上智大学在学中に学内表彰を受けたことを「嬉しそうにブログに書いていました」と嬉しそうに話されるし、「上坂すみれさんは芸能界で活躍しようとしていましたが、大学生らしい『学生生活』を送らせてあげることができなかったのが残念です。ゼミ旅行やコンパも仕事と重なって行けなかったですから」と言うのと同じ流れで、「上坂すみれさんに『○○○○』と『××××』を貸したのですが、まだ返してもらっていません」と、上坂すみれさんが芸能活動に明け暮れて「学生生活」を送ることができずとも、勉学をおろそかにはしていなかったことを話される。上坂すみれさんが何かの間違いで本稿に目を通したら、上野俊彦先生に本を返してください。
 
「明日の選挙、どうなるんだろうね」。
 
 小池旋風が吹いていた。希望の党が躍進するかもしれない、そんな「風」があった。ふたをあけてみれば、小池百合子党首の側近の若狭勝候補が選挙区で敗れ、比例復活もならず、伊藤しゅんすけ候補が比例復活の初当選。後からふりかえってみれば、筆者が、「町田に『伊藤しゅんすけ』あり」と明確に意識した選挙となった。
 
 だが、この宴席には、「明日の選挙」がどうなるのかは、誰にもわからない。朝日新聞の大野さんが、あてていく。
 
「袴田さん(袴田茂樹)は、巨人ファンだから、自民。木村さん(木村汎)は、阪神ファンだから、希望の党」
 
 朝日新聞の大野さん。この日の宴席ではものすごくリラックスしていた。大野・名越・常盤。記者仲間の近況を仲間内で楽しそうに話していた。上野先生や兵頭先生が、いれかわりたちかわり外交や安全保障の別々の観点から私見を述べるけれども、これも「酒の席での話」。従業員なし個人事業主の筆者は、「ロシア・東欧学会の会員」ということで宴席に同席していたが、「ここだけの話」を色々と聞けて楽しかった。
 
 木村汎先生(2019年ご逝去)が阪神ファンだったことはおそらく確かなのだけれど、兵庫県内とはいえ大阪政界では維新の強さは当時からだったので、「自民(巨人)ではなくて、阪神」といっても、「阪神」とは、どの政党のことなのかは、筆者にはわからない。
 
 袴田茂樹先生が巨人ファンなのかどうかは、袴田先生のご自宅の固定電話で奥様に尋ねれば筆者にとっては「すぐにわかる情報」なのだが、ご自宅の地元は横浜球団だし、「東京音頭」の替え歌を表参道(神宮球場)で阪神ファンが7回ウラにレフトスタンドで盛り上がっていることがバレると、ひょっとしたら品位を問われる可能性があるので、あえて「すぐにわかる情報」を聞く理由はない。
 
 大野正美。ロシア業界では知らない人はいない、超有名人である。この酒席のシマでも、大野さんの不思議な引力があって、自然と「大野空間」が発生して、このシマの主(あるじ)は大野さんなのだと感じた。
 
 シマといえば、北方領土。
 
 アニメ『氷菓』に「愚者のエンドロール」と題された回がある。これにかこつけて北方領土についてのこの酒席のやり取りをここに書いてみようと思ったが、やめた。安倍晋三内閣の対ロシア外交をめぐって、国民の財産になるようなやり取りもある、だろうと思う。口も責任も立場も収入、そして、迷惑をかける恋人もいない筆者であっても、大阪府警外事警察(ロシア担当)のカウンターパートには伝えていた内容の数々だが、今は、「歴史の法廷」の材料として衆人環視のもとに置くことは、はばかられる。それだけの言葉の銃弾が、酒の席という了解のもとで、飛び交っていた。

「ラストオーダーですが、うどんになさいますか、雑炊にしますか」
 
 注文通りに、運ばれてきた。
 
 常盤さんが、叫んだ。
 
「うどん!」
 
 皿が、たりない。筆者は、うどんを注文していた。シマにいる人々の暗黙の了解で、筆者の注文したうどんは、常盤さんが食べた。機微な話をしているので「聞いていないフリ」を演じているのだろうと思っていたら、本当に眠っておられたのか、それとも、演技を見破られないように役を演じきったのかは、わからない。このうどんのお返しは(常盤さんは忘れておられたとは思うけれど)、木村汎先生のご出棺の際に返していただいたので、筆者は気にしていない。
 
「明日の選挙、どうなるんだろうね」。
 
 日本の国政選挙を血の色で汚したことを、筆者は許さない。
 
筆者がコピー&ペーストすれば安倍晋三内閣の対ロシア外交について、安倍晋三が「歴史の法廷」にたつ参考情報として提供できる日を夢見ていることをもって、本稿を終わりにしたい。
 
 謹んで、安倍晋三元首相のご冥福をお祈りします。
 
 
2022年7月9日17時0分
(誤字修正:2023年4月30日。ただし、現時点においては、「安倍晋三」についての「歴史の法廷」が始まっている。この「法廷」の議論において、今の筆者は、「法廷」での発言権を認められていないので、「誤字修正」にとどめている)




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