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不安煽り系アドバイザーに翻弄された話

母が契約している葬儀社から連絡があり、私も一緒に話を聞いた。

父の葬式に備えて、母は「互助会」という会員システムで積立をしていた。すでに全額支払済みだ。葬儀社からやってきたアドバイザーが言うには、グレードアップした新しいプランに加入した方がいいとのこと。

「今のままでは足りないのですか?」と母が訊ねると「ぜんっぜん、足りないです!」と、さらに保険への加入も勧められた。不安を煽るようなその言い方に、私はイラっとした。

現在の契約は解約せず、葬式の時にグレードアッププランの不足分に充当するとのこと。グレードアップしてもまだ足りない? ちょっと意味わかんない。

母がどんな内容の契約をしているか知らないが、はっきりさせておこう。「現在のプランで見積もりを取りたい」とアドバイザーに言うと、見積もりは別の担当者がいるとのことで、後日、葬儀社に母と二人で訪ねて行くことになった。

アドバイザーが帰った後、母に、どう思ったか聞いてみた。母もグレードアッププランを契約する気はなかった。母は「結構いいプランを契約していたのに、どうしてグレードアップが必要なのかわからない」と言っていた。

グレードアップはしない、保険の契約もしない、足りないと言われた分は葬式の時に払う、ということで、母と意見が一致した。


約束の日、葬儀社に行って見積書を見た。母が記憶していた通り、現在の契約は「結構いいプラン」だった。グレードアップは必要ない。

会員プランに含まれない「実費負担分」、アドバイザーの言う「ぜんぜん足りない」部分も保険に入って備えなければいけないほどの金額ではなかった。元々そんな立派な葬式をする予定もない。

実際に葬式を行う式場を見せてもらった。椅子がずらっと並んでいて、20〜30人くらいは入れそうだった。今の父には広すぎるように感じた。父の葬式に集まるのは身内だけの予定だ。5人もいない。

「小さい部屋でよくない? 」と母に聞いてみた。
少人数の場合、式場を使わず、控え室でのお葬式に変更することもできるのだ。

母が答える前にアドバイザーが答えた。
「せっかくのプランなので、式場を利用しないともったいないですよ。控え室に変更すると、かえって料金がかかるかもしれないです」

ほんとに? かもしれない? うそやん。
もったいないとか、そういう問題じゃないし。

アドバイザーが、母の葬式の話を始めた。母にもすでに支払済みの契約がある。積立額が少ないので、もう一口追加で積立した方がいいらしい。

アドバイザーが「どうして一口なのかな・・」と書類を見ながら、意味ありげにつぶやいた。
もういいって。

「母の分については、よく考えてから決めたいと思います」 と話を切り上げようとすると「今月中なら5万円割引になります!」と返ってきた。

最初から、言っていることがおかしいのは分かっていたのに、「ぜんっぜん、足りないです!」 にイラついて、ムキになって、つい見積もりを出せと言ってしまった。あーあ、失敗した。


翌週、実家に立ち寄ると、私の顔を見るなり母が言った。

「私のお葬式、積立額が少ない気がするから、もう少し積立しようと思う」

なんで? もしかして、アドバイザーが言った「どうして、一口なのかな?」が気になってる? それともお友達に相談したら、少ないって言われた?そもそも、お母さんの葬式の心配をお母さん自身がする必要ある? 私に任せとけば?

いろいろ思うことはあったが、不安になっている母に言っても無駄だと思ったので、とりあえず賛成した。

「そうね、それでお母さんが安心できるならいいんじゃない。今度、連絡が来たら、私も一緒に話を聞くから」

互助会の積立システムは、
・積立は葬式代の一部にのみ充当され、葬式の時には必ず、積立とは別に「実費負担分」が発生する
・積立を増やしても「実費負担分」には影響しない。

母は積立を増やせば、「実費負担分」が減ると勘違いしている。無理もない。アドバイザーに「足りない」(実費負担分が別途必要です)と言われて、追加の積立を勧められたら、「積立をしたら実費負担分に充当される」と考えるのが自然だ。


数日後、実家に行ってみると、母の気が変わっていた。
「やっぱり、追加の積立はやめる」
あ、そう、それはよかった。

今日は話が通じそうだ。積立システムについて、図に書いて説明したら、母も納得した。アドバイザーから積立追加の電話がかかってきたら、断ると言っている。

ひとまずは安心。でも油断できない。「お話だけでも」とか言ってまた来そう。もしも断りきれなかったら、私が必ず立ち合うから、と母に念を押しておいた。

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