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女中はどこへ消えた? 研究者が解き明かした女中の行方

【本との話】
〈女中〉イメージの家庭文化史 清水美知子著 世界思想社

戦前を舞台にした小説や政治史などで必ずと言っていいほど出てくる女中。
ある日、そういえば女中はいつからいなくなったんだろうと考えて、調べてみたら、
あった。
その疑問を解決する本が。

手にとって読んでみるとまずこの著者の清水さんが女中の研究に並々ならぬ情熱を注いでいることもわかった。

"〈女中〉の研究にとりかかって十余年。筆者はこれまでほとんど手がけられることのなかった「家庭文化」という新しい分野を、暗中模索で歩み続けてきた。本書は、そのささやかな軌跡であり、詩論でもある。"
序章より

あつい...!
なんと女中の研究に10年以上も費やしてきたのだ。これは期待が持てると思った。

家庭文化とはかなりざっくりいうと主婦が行う家事及び育児に関することで、これらは過去は女中が行なっていた。大家族や名家にあっては家事や子供の送り迎えなどの負担や来客も多くその対応、そして近代化されていない家事は多くの時間が必要だった。
本書は女中はそもそも何者だったかについても触れている。その中で結婚前の若い娘たちの「嫁入り修業」という位置付けだったこと、そして多数は農家の出身であることを挙げている。

しかし女中はほぼ常に払底していたと清水は言う。家庭の中に入り、自分の時間は持てない、休みも非常に少ない。それでいて工場に働く女工のように何か生産しているわけでなく、賃金が安い。もっとも賃金が安かったのは住み込みで、嫁入り修業として名家で学ばせてもらうという側面があったからだとも指摘されている。いずれにしても女中は待遇面やキャリアパスとして理想の就職先ではなかったのだ。

そうして人気就職先となる間もなく戦争前からは女中を使わずに生活をしようという機運が高まり、戦後三種の神器など家電の発達により家事が効率化。女中なしの専業主婦が当たり前になっていったのだ。

かなりざっくりだがこのような内容の同書。ではこの記事のタイトル、女中はどこに行ったかというと、家政婦と呼ばれるパートタイマーに移り変わる。
しかしもともと家族のように一緒に暮らし、安い値段で手伝っていた存在とは異なり家政婦は時給制。家事の効率化により、その存在は一般家庭では絶滅していると言っていいだろう。

結論。
女中が担っていた家事は核家族化による少人数世帯や家電の発展により一人の主婦が担うことになった。そして若い娘たちの働き方が変わり、女中となりうる存在は学生や他の仕事に従事する女性に変わっていったのではないか、と推測できる。

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