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研修医にはアビリーンのパラドックスと正常化バイアスが作用した?

皆さま、こんにちは。
ニュースで研修医の集団感染が報じられておりました。

これをベースに架空の状況を想定し、考察してみたいと思います。

(私は浮世の出来事を批判できる立場におりません。日本は法治国家ですので法に抵触するか否かで判断すべきだと考えています。法が時代に適合しないのであれば法を変えるべきだと思います。自粛事項ではありますが、今回のケースは大学側が禁止した様ですので、大学が禁止事項を破った研修医を禁止事項の罰則に基づいて対処することでしょう。大学側の監督責任はまた別問題としておきます。
ですので、ただの架空の出来事についての考察としてお読みください。

以下を前提とします。もうここから架空のお話です。
①どこかの大学病院の研修医総数99人(接触可能性が高いとのことですが、ここでは総人数とします)
②40人が3月26日に会食を行った。
③3月31日に初期研修を終えた研修生一人から感染性の高いウィルスに感染していることが判明した。
④4月6日までに18人感染が判明。

まず初期研修を終えるので同期全員をお誘いした打ち上げだと想像できます。
「お誘いした」ということは、企画した人がいるはずです。
数カ月前に予約ということは考えにくいので、1か月前に企画して予約したという仮定を追加しておきます。
とすると、2月末には話が決まっていたということになりますね。

2月末に現在の状況(=緊急事態宣言みたいなもの)を予見できたという方は少なかったという条件を付け加えると、
99人全員とは言わないまでも、研修終了の打ち上げなのですから、大多数が出席すると回答したことと思われます。

以上のことから、総数99人とすれば約60%にあたる59名は誘われた時点で断ったか、後からキャンセルしたと言えます。上述の通り予見できた方が少なかったとすれば後からキャンセルした方が多かったのではないかと考えられます。
それか、仮定とした1か月前に予約したというのがおかしいのかもしれません。1週間前のお誘いだったならば、誘われた時点で断った人数は増えるはずです。


さて、参加してしまったのは残りの40名です。

この40名は本当に心の底から打ち上げに参加したかったのでしょうか?
幹事さんはなぜ取り止めることを宣言しなかったのでしょう?

単純に考えれば、「出席した全員がお祭りが好きだから。そのため状況を楽観視した。」
そうであるならば、それで話はおしまいです。

そうでなかったならば?という考察となります。
そうでなかったならば、おそらくは同調圧力が働いたのではないでしょうか。
ここでいう同調圧力とは通常用いる同調圧力という言葉とは少々異なります。
自分で自分自身に圧力を掛けたのではないか?ということです。

アビリーンのパラドックスというものがあります。

アビリーンとはテキサス州にある町の名前です。
あるパラドックスを説明するために、経営学者のジェリー・ハーヴェイが用いた町の名前です。

パラドックスとは
正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から受け入れがたい結論が得られる問題を指します。

ある八月の暑い日、テキサス州の家族のうち誰かが、53マイルも離れたアビリーンへの旅行を提案しました。
実は誰もがその旅行を望んでいなかったのに、他の家族は行きたがっていると思い込み、誰も反対しなかったというものです。
道中は暑く、埃っぽくとても快適とは言えない状況でした。
家族みんなが誰もアビリーンへ行きたくなかったと分かったのは旅行が終った後のことでした。
というのが話の概要です。

人は流行から外れることを嫌う習性があります。集団的な決定に異を唱えられづらいというものです。
この話の要点は、集団の抱える問題は「不和」からだけではなく「同意」からも生まれるということです。

このパラドックスが今回のケースに当てはまるなら、幹事さんは参加者が楽しみにしているであろうという思いこみからキャンセルという決断を下せなかった。不和を起こせなかった。
要するに幹事さんは2月末時点の未来予測が3月末に近づくにつれて外れてきていることを薄々気付いていたのに、アビリーンのパラドックスと正常化バイアスの性で予測誤差を無視するよう脳が判断を下したということになります。正常化バイアスとは少々の異常事態では脳が「大丈夫、大丈夫」と思いこむ脳の判断傾向です。

参加者にも同様のことが言えるかと思います。

パラドックスはここまで。少し見方を変えてみましょう。
想像してみてください。ご自分を含めてお友達が4人が集まっています。
残りの3人はマスクをしていません。
マスクをしているあなたに向かって全員が「気にしすぎだって~」と言っている状況を。
あなたは3人に向かってそんなことはない!と言い切ることが出来るでしょうか?「そうかな?気にしすぎなのかな?」と少しは思いませんか?
宣言が出された今となっては、そんなこと思わないと言えるかもしれませんが、流行は以前から生じていたはずです。
今になって言うのは容易いですが、まだマスクをしている方が少人数の時はどうでしょう?
「気にしすぎだって!」と思う側だったという方もいるのではないでしょうか。
これが正常化バイアスですね。
そのような状況下で、マスクをするのは自衛のためではなく、自分が感染源である可能性があるからなのだと他の3人に諭すことが出来るでしょうか。
このように言い切れたのが60%であって、言い切れなかったのが40%と考えてみるとどうでしょう?
あり得る数値ではないでしょうか。如何に優秀な方でも認知バイアスには弱いということを物語っていると言えます。

決して擁護している訳ではありません。
大学側は禁止していたと言っているのですから、禁止を破ったということは事実です。
言い換えると「禁止なんてやりすぎだって~」と周囲の3人が言ったのかもしれませんね。
そうであるなら、「いやいや、禁止だからダメだって」と言いだしやすかったはず、とも言えます。

ただ、責めるだけでは、一向に人間世界の動向に変化は見えません。時代を繰り返しているようです。
そろそろ、なぜ、そうなったのか?そうならないためにはどうすべきなのか?を解明すべき時代、解明できる時代に入ったのではないでしょうか。
人間では見出せない深層の原因(因子)、その重み付け、さらには解決策をAIなら見つけ出してくれるかもしれません。
・・・と今回は言いたかったということです。

余談ですが、打ち上げ時に一人が感染していたと仮定します。
40人が参加ですから、対面一列とすると20人が向かい合いますね。
感染者が両隣2人、前方の3人に感染させたとします。打ち上げ終了時には感染者は6人になっていますね。
打ち上げ後に研修医たちがどのような行動を取ったのかは知りませんが、仲良し3人組で行動していたとすると、あら不思議、打ち上げ終了後の感染者6人が、仲良し3人組の他の2人に感染させたとすると合計の感染者数は18人となり一致します。
この感染者の中には、可哀想なことに、打ち上げに参加していなかった人もいることでしょう。
すみません。ただの数字合わせです。本当はもっと複雑なんだと思いますよ。だって、感染者同士が仲良し3人組を組んでいることだってあるはずですから。

それでは。また。

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